sakaiyurose 2014年1月15日発売、さかいゆうの3rdオリジナルアルバム。シングル「僕たちの不確かな前途」「薔薇とローズ」を含む全12曲収録。初回生産限定盤にはメジャーデビュー以降のMUSIC CLIPを収録したDVDが同梱の2枚組。

 完全単独制作の「ONLY YU」、固定バンドメンバーでの演奏作「How's it going?」と、ここ数作はアルバム単体で制作スタイルの異なる作品をリリースしてきたさかいゆうですが、本作では演奏は基本バンド形態を取りながらも、曲ごとにバンドメンバーが目まぐるしく変わる構成。プレイヤーのカラーによって曲ごとに個性がバラバラに…という印象を受けないのは、ミディアム、バラードが中心の、全体をモノトーンで統一した作風によるものかも。
 従来のアルバムに数曲あったアグレッシブな曲が今回はない分、構成上のテンションの浮き沈みの少ない1枚ではありますが、その代わり(?)ゲストボーカリストとしてEmi Meyer、KREVA、そして秦基博がそれぞれ1曲ずつ参加しており、ともすれば地味になりがちなアルバムに彩りを与えています。計3曲、さかいゆうとほぼ対等のバランスでボーカルやラップを繰り広げており、各アーティストのファンも満足いく内容なのではないでしょうか。中でも、さかいと秦基博が交互に平メロを歌いまわす「ピエロチック」は、各々の表現力の違いを楽しめる逸品です。

 一方、歌詞のほうでは森雪之丞をはじめ、複数人の提供を受けていますが、クレイジーケンバンドの横山剣の手による「EMERGENCY」はまったくもってCKB節で、剣さんがバンドでカバーすれば完全に彼らの曲になりそうなまんまな歌詞なのが強烈(笑)。次にKREVAとの「オトコFACE」が控えているので、1曲だけアルバムから浮きまくりということはないと思うのですが、異色作です^^;。なお、さかい本人の歌詞も前作に比べると増えましたが、手慣れた感のある提供作家の作品と比べると粗削りながら、デビュー当時に比べると段々と練れた歌詞を書くようになってきたなぁ、と思います。個人的に初期のキラキラした歌詞が正直ちょっと苦手だったのですが(苦笑)、本作では「きみなんだ」のような、メロディーとのハマり方もピッタリと合った曲が増え、作品を重ねる毎に、作詞家としての成長を感じられる1枚になっています。

 今までの煌びやかなアルバムと比べると地味な構成であることは否めませんが、今回の路線も彼が持つ多数の引き出しの中のひとつなのでしょう。インパクトには欠ける分、普遍性が増し、長く聴ける作品だと思います。前々作、前作に続いてまたまた名盤。お薦めです。