WFACE 2013年10月30日発売、織田哲郎の通算15枚目(セルフカバーアルバム含む)となるニューアルバム。シングル「月ノ涙」、配信シングル「いつまでも変わらぬ愛を〔21st century ver.〕」そして「あなたのうた」(ソナーポケットへの提供楽曲)「R&R is my friend」(FENCE OF DEFENCEとのコラボ楽曲)のセルフカバー〔W FACE ver.〕を含む2枚組各8曲、全16曲収録。

 約6年半振りのオリジナルアルバムとなった本作は、帯の紹介によれば「ロックを堪能できるDISC-RED、美しいメロディを満喫できるDISC-BLUE」と、タイプの異なる楽曲をそれぞれのディスクに振り分けた内容となっています。
 まず「DISC-RED」では、アップテンポ中心のロックンロール楽曲がズラリ。2000年に声帯を痛めてからは発声も変わり、以降の「MELODIES」「One Night」では穏やかで極力声を張らないボーカルを終始見せていたのですが、このディスクではさすがに90年代までの色気(?)のある歌声とは異なるものの、ロックなアレンジを含めて久々に熱い織田哲郎を聴いた!という感想です。歌詞はメッセージソングから突き抜けたものまで色々ありますが、彼自身が経験した境遇を鑑みるに説得力のある「天啓 ver.3」や「FIRE OF LIFE」が出色。そして中島みゆきに作詞を依頼した「Winter Song」はヒット性の強いナンバーで、本ディスクの顔とも言っていいほどの存在感を放っていると思います。

 一方の「DISC-BLUE」は、「月ノ涙」やキャロル・キングのカバー「You've Got A Friend」に代表されるように、心地よく、リラックスして聴けるようなミディアム、バラード曲が並んでいます。なのでこちらは前作「One Night」からの系譜といってもいいでしょう。中でも主人公の一夜の心象風景をモノローグで淡々と綴る「チャイナタウン・ララバイ」は8分近くある大曲ながらなかなかの好作品。そしてラストに配置された「いつまでも変わらぬ愛を」のリメイクはキーは下げてありますが基本的なアレンジは原曲に忠実に、生演奏の要素を加えてこの時代に蘇らせており、オリジナルに負けず劣らずの魅力的なリメイクに仕上がっていました。

 ディスク2枚合わせてのトータルは約72分と、その気になれば1枚でも収まる演奏時間なのですが、テーマを設け、「RED」が街中の雑踏で聴きたいディスクならば、「BLUE」は夜に家でじっくりと聴いてみたいディスク、と明確に性格が分かれていることもあり、それぞれ非常に聴きやすいので、試みは成功していると思います(値段も3,000円+税と1枚モノとほぼ変わらず)。
 「One Night」リリース時(2007年)に織田哲郎ご本人が「来年もオリジナルアルバムを出す!」と宣言した時はまたまたぁ〜、と思いましたし、実際そうはならずかなりの年月がかかったわけですが(苦笑)、久々のオリジナル作品、満足の行く内容を堪能させてもらいました。