
筆者にとっての尾崎豊とは、急逝の前年にシングルカットされた「I LOVE YOU」であり、逝去後にドラマの主題歌となった「OH MY LITTLE GIRL」であるように、あくまでもライトリスナーの域を出ません。本ベストの内容はそんな私のようなライト層、または生前の彼をリアルタイムで知らない若いリスナーへの手引きのような選曲。「15の夜」「僕が僕であるために」「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」そして「卒業」と、尾崎豊のスタンダードナンバーと認識されているような曲が時系列順に並んでいます。デビューアルバムからの選曲がやけに多い(5曲、他のアルバムからは2曲程度)のは知名度の高い曲を優先して選んだらこうなった、ということなのかも。
そんな各楽曲ですが、彼の魂を燃やしているかのような熱のこもった歌声で、一般的なイメージである社会への抵抗、反抗を描いた曲の他にも、内省的な心の叫びや、真っ直ぐに愛を歌い上げた作品も収録され、熱い思いが聴き手にも伝わってくるようです。アレンジ面ではさすがに80年代的、と思わせるような時代がかった音が使われていたりするのですが、それもあの時代をリアルタイムで駆け抜けた証ですから、下手に今風にリミックスなどをされなくて良かったな、と思います。
ただ、楽曲の内容とは関係ない話になってしまいますが、本作のような「入門編的ベスト」に「ALL TIME BEST」の名を冠したことについては少々疑問。というのも、ここ数年キャリアのあるベテランアーティスト達がオールタイムベストと銘打って、CD2〜3枚組の重量級ベストアルバムをリリースしているのに比べると、本作では1枚14曲、さらに他のレコード会社に在籍していた時代の作品は収録されず、ソニー時代のみでの選曲なので、この1枚で彼の全キャリアをさらえる、という意味でのオールタイムではないかな、と感じました。
初ベストだった「愛すべきものすべてに」を筆頭にテーマ別などのベストが既に何枚もリリースされているわけですが、本作品のリリースを知って、2枚組ぐらいでの尾崎豊の決定盤ベストを期待していた身としては、今回の選曲を見て結構肩透かしな部分はありました。私のようなライト層でもこう感じてしまうぐらいですから、本作に対してのコアな尾崎ファンの心中を察すると何ともやるせないのですが、このベストアルバムによって、若いリスナーが彼の遺した音楽に興味を持つきっかけになってくれれば…と思います。
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個人的には、尾崎豊の曲は結構好きな方で、よく聴いています。
当時のサウンドや社会への抵抗、反抗的な過激な歌詞内容は、
確かに今現在の感覚で聴くと、ちょっと違和感も感じる部分も否めないとは思いますが、
その歌詞内容も、当時の彼が世の中を生きて行く上で、
自分の立ち位置が見つけられない苦しみを歌っているような感じがあり、
この点に関しては、今の時代でも十分に通じる部分があるのではないかと思い、
そこが個人的に、彼の楽曲の最大の魅力ではないかと感じます。
また、最近の若手アーティストでも家入レオとかが「15の夜」を聴いて
歌手を志したエピソードもありますし、何だかんだ言っても、
まだまだ尾崎も世代を超えて語り継がれる歌手だと思います。
それにしても、確かにCD1枚のみで「ALL TIME BEST」って違和感ありますね・・・(^^;;。
代表曲中心の選曲だけに、あくまで1枚のみのベストとしてはよく出来ている印象でしたが、
やはり、ALL TIME BESTって、これまでのキャリアを幅広く網羅した内容こそが的確だと思いますし、
2008年に出たベスト「WEDNESDAY」、「SATURDAY」の方が、代表曲だけでなく、
ファンの間で人気の高い隠れた名曲もきちんと網羅されており、
こちらの2枚こそがALL TIME BESTだったのでは?と言う気がします。
コメントありがとうございます。
尾崎豊に限らず、ソニーは活動を終えた、あるいは移籍したアーティストに対して機械作業的なベストを濫発する傾向がありますよね…(TMとかプリプリ、THE BOOMなど)
今回のベスト盤、有名どころの楽曲を1枚に集めた、という点では今までのベストとは異なる点だと思うのですが、本当に有名な曲しか入っていないというか、「ALL TIME BEST」を謳うならばコアなファンも納得してもらえるような選曲にするべきだったと思います。
あくまでも入門編、といったところですね。