ozakialltime 2013年11月27日発売、1983年のデビューから30年目を迎えるのを記念して企画された、尾崎豊のベストアルバム。全14曲収録。初回生産限定盤には、CD本編にも収録されている「I LOVE YOU」「路上のルール」のライブ映像を収録したDVDが同梱の2枚組仕様。全曲リマスタリング。

 筆者にとっての尾崎豊とは、急逝の前年にシングルカットされた「I LOVE YOU」であり、逝去後にドラマの主題歌となった「OH MY LITTLE GIRL」であるように、あくまでもライトリスナーの域を出ません。本ベストの内容はそんな私のようなライト層、または生前の彼をリアルタイムで知らない若いリスナーへの手引きのような選曲。「15の夜」「僕が僕であるために」「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」そして「卒業」と、尾崎豊のスタンダードナンバーと認識されているような曲が時系列順に並んでいます。デビューアルバムからの選曲がやけに多い(5曲、他のアルバムからは2曲程度)のは知名度の高い曲を優先して選んだらこうなった、ということなのかも。
 そんな各楽曲ですが、彼の魂を燃やしているかのような熱のこもった歌声で、一般的なイメージである社会への抵抗、反抗を描いた曲の他にも、内省的な心の叫びや、真っ直ぐに愛を歌い上げた作品も収録され、熱い思いが聴き手にも伝わってくるようです。アレンジ面ではさすがに80年代的、と思わせるような時代がかった音が使われていたりするのですが、それもあの時代をリアルタイムで駆け抜けた証ですから、下手に今風にリミックスなどをされなくて良かったな、と思います。

 ただ、楽曲の内容とは関係ない話になってしまいますが、本作のような「入門編的ベスト」に「ALL TIME BEST」の名を冠したことについては少々疑問。というのも、ここ数年キャリアのあるベテランアーティスト達がオールタイムベストと銘打って、CD2〜3枚組の重量級ベストアルバムをリリースしているのに比べると、本作では1枚14曲、さらに他のレコード会社に在籍していた時代の作品は収録されず、ソニー時代のみでの選曲なので、この1枚で彼の全キャリアをさらえる、という意味でのオールタイムではないかな、と感じました。
 初ベストだった「愛すべきものすべてに」を筆頭にテーマ別などのベストが既に何枚もリリースされているわけですが、本作品のリリースを知って、2枚組ぐらいでの尾崎豊の決定盤ベストを期待していた身としては、今回の選曲を見て結構肩透かしな部分はありました。私のようなライト層でもこう感じてしまうぐらいですから、本作に対してのコアな尾崎ファンの心中を察すると何ともやるせないのですが、このベストアルバムによって、若いリスナーが彼の遺した音楽に興味を持つきっかけになってくれれば…と思います。