firebomber2 未来を舞台にしたSFロボットアニメ「マクロスシリーズ」。様々な媒体で作品が展開されるこのシリーズのひとつ、第2作目のTVシリーズとして1994年にスタートした「マクロス7」が今年で放送開始20周年を迎えました。
 「歌」を作品テーマの中心に据えたこのシリーズの20周年を本ブログでは勝手に(笑)祝い、今回の「Artist Archive」では、劇中に登場するロックバンド・Fire Bomberがこれまでにリリースしてきた全アルバム+αを一挙にレビューいたします。例によってかなりマニアックな内容です(笑)。





「マクロス7」放送開始20周年記念・Fire Bomber全アルバム+αレビュー

※Fire Bomberとは
 「マクロス7」に登場する架空のロックバンド。メンバーは熱気バサラ(Vo&G)、ミレーヌ・ジーナス(Vo&Ba)、レイ・ラブロック(Key)、ビヒーダ(Dr)の四人編成。劇中ではほぼ無名の時点から話が始まり、紆余曲折を経ながらも人気を徐々に集めて大ブレイク、というサクセスストーリーを辿る。続編OVA「マクロス ダイナマイト7」では辺境の惑星にまでその名が知られるほどの大人気バンドに。男女ツインヴォーカル制を採っているが、実際歌唱を担当しているのは声優ではなく、バサラ=福山芳樹、ミレーヌ=チエ・カジウラというプロのシンガー達である。


MUSIC SELECTION FROM GALAXY NETWORK CHART
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 1995年1月21日発売、「銀河ネットワークチャート」の人気アーティストのコンピレーション・アルバムという設定でリリースされた企画盤。全10曲中、Fire Bomberの楽曲は5曲収録。
 主題歌「SEVENTH MOON」「MY FRIENDS」、バンドのテーマソング的な「PLANET DANCE」など、物語序盤で登場した曲を収録(この時点で放送開始後3ヶ月半)。後のFire Bomber名義のアルバムに再録された曲ばかりであるが、「PLANET〜」「突撃ラブハート」のバサラ単独ヴォーカルバージョンは本作でしか聴けない。彼ら以外のアーティストの楽曲も作品内でBGMないしは演奏曲として使用されており、クレジットには笹路正徳や鷺巣詩郎といった有名コンポーザーの名も散見される。
 なお、歌詞ブックレットの中に2046年1月21日付けの銀河ネットワークチャートのシングルTOP10が掲載されているページがあるのだが、そのページのレイアウトが当時のオリコンチャートにそっくりなのに注目(笑)。ちなみにこの週の1位は本作にも収録されているAlice Holidayの「Galaxy」。


LET'S FIRE!!
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 1995年6月7日発売、Fire Bomber名義での初のオリジナルアルバム。ボーナストラックを含めた全13曲収録。
 「MUSIC SELECTION〜」で収録された主題歌の再録、「PLANET DANCE」「突撃ラブハート」はバサラとミレーヌのデュエットバージョン、「MY SOUL FOR YOU」はアコースティックバージョンで収録。「SWEET FANTASY」「REMEMBER 16」「SUBMARINE STREET」「HOLY LONELY LIGHT」といった中盤までに劇中に登場した楽曲をふんだんに収録している充実の内容で、当時かなりのセールスを挙げたので中古相場では最も安く並んでいるアルバムであり(苦笑)、気軽に手に入るという意味では初心者には最適の一作。
 ボーナストラックは「SEVENTH MOON」のTVサイズバージョン(オリジナルよりもテンポが若干早い)、そして劇中で録音中ノイズが混入したという設定の「PLANET DANCE(Galaxy Fight Version)」の2曲。


LIVE FIRE!!
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 1995年8月23日発売、唯一のライブアルバム。全6曲収録。アルバム扱いではあるが裏ジャケットが存在しないスリムタイプのマキシシングルケースでのリリース。
 1995年5月21日、日本青年館で開催された「マクロス7」のライブ形式のイベントからの収録とのこと。実際の演奏は生のバックバンドを従え、ライブ本編ではバサラ役の林延年、ミレーヌ役の桜井智が歌っているのでCD音源とはヴォーカリストが異なるのだが、この二人も十分な歌唱力の持ち主なので問題なし。CDでは打ち込みの多いサウンドが生演奏になったことでかなり迫力が増しているのが特徴で、いつかこの生演奏でリテイクしてもらいたいぐらいである(笑)。
 アンコールではCDで歌唱している福山芳樹、チエ・カジウラも交えて「LIGHT THE LIGHT」を熱唱。余談だがこのライブの映像のダイジェストがDVD-BOX等に収録されている。


SECOND FIRE!!
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 1995年10月21日発売、「マクロス7」放送終了直後に発売されたセカンドアルバム。後期エンディング「…だけど ベイビー!!」を含む全10曲収録。
 作品完結後のリリースということで、中盤から最終話までに使用された楽曲が中心。前作「LET'S FIRE!!」に収録されていた「HOLY LONELY LIGHT」は新たにデュエットバージョンで収録されている。
 劇中で重要な役割を果たした「POWER TO THE DREAM」「LIGHT THE LIGHT」「TRY AGAIN」の3曲が抜きんでて印象が強い一方、ラジオドラマで使用され、本編では未使用の曲が前半に集中しており、前作のようにすべての曲がアニメ本編で流れたわけではないので、ややコア寄りな選曲か。「LET'S FIRE!!」や「ULTRA FIRE!!」を聴いてもっと聴きたくなった人向け。


MUSIC SELECTION FROM GALAXY NETWORK CHART Vol.2
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 1996年3月23日発売、TVシリーズ終了後にオンエアされたラジオドラマ「GALAXY SONG BATTLE」挿入歌として制作された楽曲を収録したコンピレーション・アルバム。全12曲中、Fire Bomberの楽曲は6曲収録。
 企画盤設定は「〜GALAXY NETWORK CHART」と同じだが、今回はラジオドラマという狭い範囲での使用曲なのでドラマまで聞く熱心な「マクロス7」ファンでないと全く馴染みのない作品が並ぶ。そんな中でただ一曲Fire Bomberの「PILLOW DREAM」はTVシリーズで使われた曲の初商品化。アルバム全体としては現実の音楽シーンの影響なのか生音の比率が上がり、打ち込みシンセをメインにした曲は大幅に減っている。Fire Bomberもその余波を受けているが、中でもフォーキーな唱歌風の「LOVE SONG」は異色作。
 2年後のアルバム「DYNAMITE FIRE!!」には彼らの楽曲6曲中4曲がそのまま再録された。


ACOUSTIC FIRE!!
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 1996年10月23日発売、TVシリーズの劇中歌をアコースティックアレンジでリメイクした企画アルバム。新曲「ON THE WIND」を含む全10曲収録。
 アメリカ・ナッシュビルで録音され、外国人ミュージシャンによる初の全パート完全生演奏作品。原曲とは異なり生ドラムとピアノが曲全体を引っ張る曲が多い印象。「突撃ラブハート」「PLANET DANCE」などのアップテンポな曲も印象的なリフを引き継ぎつつミディアム調にアレンジされている。アコースティック・アルバムという性質上か、ミディアム、バラードの選曲が多いので、Fire Bomberの熱い楽曲を生演奏で!という雰囲気ではないのだが、アコギやピアノなどの普遍性な音ゆえに、時代を感じさせずに聴ける1枚。
 なお、帯には「3rdアルバム」と書かれているのだが、後に「DYNAMITE FIRE!!」の帯でも同じことが書かれていたので、本レビューではこちらは企画盤として扱っている(笑)。


DYNAMITE FIRE!!
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 1998年1月21日発売、前年末よりリリースが開始されたOVAシリーズ「マクロス ダイナマイト7」に連動した、通算3作目のオリジナルアルバム。主題歌「DYNAMITE EXPLOSION」「PARADE」を含む全12曲収録。
 約2年3ヶ月ぶりの新曲満載のオリジナルアルバム…と言いたいところなのだが、前述の通り「MUSIC SELECTION FROM GALAXY NETWORK CHART Vol.2」に収録された「GOOD-BYE」「ROCK'N ROLL FIRE」「恋のマホウ」「HELLO」の再録を含んでいるので完全新作とは言い難く、「〜Vol.2」を買った人は複雑な気分だったのではないだろうか(苦笑)。
 収録曲はOVAの挿入歌になったナンバーを中心に構成されている。「NEW FRONTIER」「NEVER SAY DIE」など、現状に満足せずさらに違う世界へ、といったメッセージ性の強い曲が多いが、全4巻という構成上、あまり目立った場面で何度も流れなかったので、映像自体と直接結びつかない曲が多い。そういう意味ではアニメの作劇ありきではなく、純粋に「アーティストとしての曲」を楽しむアルバムとなっていると思う。


ULTRA FIRE!! -FIRE BOMBER BEST ALBUM-
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 1999年4月7日発売、Fire Bomberのこれまでの活動を総括したベストアルバム。全17曲収録。
 TVシリーズ、OVAシリーズのオープニング、エンディング、「LET'S FIRE!!」「SECOND FIRE!!」より主だった劇中歌をほぼ漏れなく収録した、帯通りの「究極のベストアルバム」。表記はないがリマスタリングもされているようで、昔の楽曲ほどクリアな音質を実感できる。
 コアなファンには新曲「I CALL YOUR NAME」、そして「PLANET DANCE」の未発表ライブバージョンを収録するなどのサービス有。ラストに「〜ダイナマイト7」の最終話で効果的に使われた名バラード「ANGEL VOICE」(バサラソロ名義)をボーナストラックとして収録しているのも嬉しいポイント。
 本作を手に入れれば映像作品で流れた楽曲がほぼ揃うので、楽曲コンプリートに拘らなければ最もお薦めの1枚なのだが、ベストということもあってか中古市場ではなかなか見かけず、手軽な価格で手に取れないのが難点か。なお、オリジナルピック、Fire Bomberヒストリーブックを同梱した初回限定盤も存在している。


Re.FIRE!!
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 2009年10月14日発売、TVシリーズ放送開始15周年を記念してリリースされた久々の4thオリジナルアルバム。同年発売のPSPゲーム「マクロス アルティメット フロンティア」の主題歌「Burning Fire」を含む全12曲収録。
 「DYNAMITE FIRE!!」以来11年振りのオリジナルアルバムだが、設定ではソロ活動やプロデュース業、放浪(笑)など、別の道を歩いてきたメンバーが久々に集結して作られた2060年に発売の13年振りのアルバムとのこと。既存曲「LOVE IT」「突撃ラブハート」の2曲は新録リメイクバージョンで収録されている。
 10年以上の年月の流れを踏まえてか、従来のようなストレートなロックサウンドだけではなく、曲によっては生ブラスやサックスなども積極的に取り入れた新たな路線が試みられている作品。ツインヴォーカルの声質にもそれぞれ変化が見られるが、年月を経た「今でも現役」の彼らの声として捉えれば楽しめると思う。
 余談であるが初回出荷分のブックレットと帯は誤植が満載だったらしく、レコード会社により無償交換が行われた、という経緯がある。


娘娘FIRE!! 〜突撃プラネットエクスプロージョン
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 2012年10月24日発売、シェリル・ノーム/ランカ・リー/Fire Bomber共同名義でリリースされた、劇場版「マクロスFB7 銀河流魂 オレノウタヲキケ!」主題歌シングル。マクロスシリーズ30周年を記念してのコラボレーション作品。
 表題曲はTVシリーズ「マクロスF」の女性シンガー二人をメインに、バサラ&ミレーヌが掛け合いで参加する「突撃ラブハート」「PLANET DANCE」「DYNAMITE EXPLOSION」のメドレーアレンジを歌う6分近い楽曲で、「マクロスF」最終回の「娘々サービスメドレー」を彷彿とさせる構成。カップリングの「ヴァージンストーリー」はFire Bomber単独名義の新曲。「Re.FIRE!!」の延長線上ではなく、久々に原点回帰的な熱さを感じさせるナンバーである。ツインヴォーカルでメインを交互に取る曲はあまりないので新鮮かも。
 マクロス30周年で彼らの新曲が聴けるとは思わなかったのでファンとしては嬉しかったのだが、これらの曲が使用された映画の内容は…微妙な出来であった(苦笑)。


 以上、シングルを含めた10作のレビューでした。まだ他にもシングルCD、ドラマCD、英語カヴァーアルバム、トリビュートアルバム各種など枚挙に暇がないのですが、今回は「Fire Bomber」名義のアルバムと音楽作品としてリリースされたコンピ盤に限らせていただきました。
 さて、このレビューを書くために久々に彼らの音楽を聴きまくりましたが、こんなに商品点数が多かったっけ?と思ったのが正直なところ(笑)。劇中で流れたバージョン違いなどを含めれば更に曲は増えるわけで、楽曲コンプリーター泣かせのバンドだと思います。いっそ全曲全バージョン収録のリマスターCD-BOXでも出してくれれば…と思うのですが、望みは薄そうですね^^;。
 さて、2012年に30周年を迎えたマクロスシリーズですが、30周年企画はまだ続くようで、来月はデュエットアルバムがリリース予定で、Fire Bomberの楽曲も2曲収録されるそうです。いずれ「CD Review」で紹介することになるかもしれませんので、その時はまたマニアックな記事になると思いますがご容赦ください(笑)。長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。