tmdress 2013年11月27日発売、1989年5月発売のTM NETWORKのリプロダクション・アルバムに、ボーナストラック2曲が追加され、Blu-spec CD2規格で再リリース。というわけで本作は新作CDとしてレビューいたします(笑)。全13曲収録。

 TMの歴史的には「Gift for Fanks」(1987年)に続く、ベストアルバム第2弾的な立ち位置になっている本作ですが、オリジナル音源で構成された「Gift〜」とは異なり、今作は過去の楽曲を海外で当時実績を残していたプロデューサーの面々に預け、ヴォーカルトラック以外をすべて作り直して欲しい、とのオファーをTM(小室哲哉)側から出したとのこと。この作業は現代ではリミックスと呼ばれますが、80年代末においてのリミックスの定義といえばミックスを調整したり、音の配置を変える程度がほとんどだったので、旧作のアレンジをほぼ全面作り直し(通称リプロダクション)でアルバム1枚を製作、というのは、当時の日本の音楽シーンとしては異例のコンセプトだったようです。

 そんな「リプロダクション・アルバム」の収録曲ですが、既に先行シングルとして3枚同時に発売されていたシングルの1枚「GET WILD'89」に代表されるように、期待通り(?)に大幅にアレンジ変更が成された曲が多数。例えば「COME ON EVERYBODY(with NILE RODGERS)」はユーロビートからハウスへ、「BE TOGETHER」は16ビートから8ビートへ、ロックアレンジだった「RESISTANCE」は重厚なバラードへと、原曲からの変貌ぶりが凄まじいの一言。比較的オリジナルを尊重しつつ新たな解釈を加えた「SPANISH BLUE」や「MARIA CLUB」などもありますが、全体的にオリジナルとはほとんど違ったアレンジ展開、雰囲気、音楽性を楽しめる内容になっています。また、選曲の傾向もあるのか1枚を通してダンス寄りに強化された曲が多く、この「踊れる部分」が数ヶ月後のユーロビートの新曲「DIVE INTO YOUR BODY」に結実されていったような気もします。

 本作のBlu-spec CD2での「完全版」の発売にあたって追加収録されたボーナストラックは、先行シングルとして発売された3枚のシングルのカップリング曲のうち、アルバム未収録だった「TIME(PASSES SO SLOWLY)」「FOOL ON THE PLANET(WHERE ARE YOU NOW)」の2曲。とはいえ、これらは2004年のファン投票ベストや2009年のシングルベストのボーナスディスクとして既にアルバムに収録されているので、特段超レア音源というわけではありません(苦笑)。ですが、同じ時期に同じコンセプトで製作されたこの2曲が長年の時を経てようやく一緒のCD盤面に収められる、というのは昔からのファンとしては感慨深いものがありますし、木根尚登の手によるバラード(いわゆるキネバラ)の中でも一、二を争う名曲だと思う「FOOL ON THE PLANET」で1枚のCDが終わる、という構成になったのもいいんじゃないかな、と思います。

 さて、今作のBlu-spec CD2化で、80年代の彼らのアルバムは全作何らかの形でリマスター盤が一般流通で手に入るようになりました。となると、以前にも書きましたが(笑)残るは90年代、TMNにリニューアルしてからのオリジナルアルバム「RHYTHM RED」「EXPO」の2作のリマスター発売も期待したいところです。来年はTMデビュー30周年ですが、周年記念ベスト盤よりもそちらのほうを強く熱望。そりゃあもう何年も待ち続けてきましたので…(苦笑)。