
ベスト盤「エレベスト」から約2年、前回のオリジナル「風味堂4」からは実に4年半ぶりという、待ちに待たされた本作のテーマは「夢」。とはいっても前向きに夢を信じて行こうぜ!というノリではなく、一度は諦めかけた夢へ再び挑むことを誓う歌、遠回りしたけどようやくたどり着けた愛の歌、傷つきながらも目指した明日へ向かうことを再確認するような歌など、様々な「夢」の形を収めたアルバムになっています。なので毎回恒例のエロソング(笑)などは今回はナシで、聴き手の背中をそっと押すようなメッセージ性の強い曲が多め。
バンド演奏のほうは前回のシングル「宝物」で見せたピアノ+ベース+ドラムスのスリーピースの原点回帰色が強く、曲によってはトランペットや珍しくアコギの入っている曲もありますがそれらは味付け程度で、あくまでメンバーの音が主役。この辺りはメジャーデビュー前のインディーズ盤の雰囲気に近いかも。装飾音が減ったこともあってか、ピアノが唸りをあげて鳴りまくる間奏が増え、シンプルなスリーピース編成ながら地味な感じは受けません。パッと聴きは強烈な印象こそ残さないものの、聴き込むと詞のメッセージや伸びやかなメロディーと共に、曲の魅力が増してくるように思えるスルメ系の作品だと思います。
DVDのライブ撮影会場は、フロアにステージ空間を設けて楽器をセッティングしたかのようなこじんまりとした小さめのカフェ。アップライトピアノが壁に向かって置いてあるのですが、普段はこういった「バンド」のライブはしない場所なのかも。今回はアンプラグドということで、アコピ、アコベース、ドラムもスネアとカホンとウィンドチャイムぐらいのかなりシンプルな編成。セットリストは「楽園をめざして」「エクスタシー」「ナキムシのうた」といった代表曲に加え、配信シングルも2曲とも披露しての全11曲。アンプラグドだから…という特別なアレンジはなく、通常の演奏をアンプラグド用に置き換えたような感じでしたが、各楽器の鳴りが良く分かるライブで、この形態でのライブ映像が市販されるのは初めてだと思うので、なかなかに新鮮でした。惜しむらくは初日ということで若干演奏が…という部分もなきにしもあらずだった(苦笑)点と、会場のせいか音声があまり良好ではなく、音がこもって聞こえる点ですかね。
風味堂としてのライブ活動は断続的に行われていますが、メンバーそれぞれ別バンドのサポートなどで忙しいのか、「エレベスト」以降なかなか音源が発売されずファンとしてはヤキモキしていたのですが(笑)満足な内容のアルバムでした。ちょっと前に斎藤誠のレビューでも同じようなことを書きましたが、これからも末永く活動を続けてもらいたいバンドです。
コメント