BZ19992012 6月中旬から長きにわたってお送りした「B'z The Best XXV 1988-1998」「B'z The Best XXV 1999-2012」の全曲レビューもついに最終回。なんとか目標7月完結に間に合いました(笑)。今回は「1999-2012」のDisc2、2006年の「衝動」から2012年の最新シングル「GO FOR IT,BABY -キオクの山脈-」までの12曲のシングル曲に、新曲の「Q&A」「ユートピア」を加えた収録曲全14曲を一曲ずつレビューしていきます。「続きを読む」からご閲覧ください。
「B'z The Best XXV 1999-2012」全収録曲レビュー・後編


1.衝動
 2006年1月25日発売、40thシングル。
 前年の「愛のバクダン」を彷彿とさせるようなテンションの高いアップテンポのロックナンバー。サビ終わりの「しょ〜うどう!」がインパクト大。タイアップ先は「名探偵コナン」のオープニングテーマを久々に担当。「ギリギリchop」ほどではないが、作品に合っているかどうかは…微妙だった(苦笑)。15thアルバム「MONSTER」はミックス違い(MONSTER MiX)で収録。
 書道家の武田双雲が出演し、B'zの演奏と共に巨大な毛筆でひたすら地面に文字を書き続けるPVが制作された。「衝動」と「書道」をかけたダジャレなのだが、画面では三人揃って真顔である(笑)。時々、背景のスクリーンに毛筆で書かれた歌詞が映し出されるのだが、いかにも書道!という書体で「凹んでく心」と書かれた文字がバーンと大写しになるのはかなりシュール。

2.ゆるぎないものひとつ
 2006年4月12日発売、41stシングル。
 「衝動」に続いて「名探偵コナン」タイアップ。こちらは劇場版の主題歌であり、確かにエンドロールで流れるにはピッタリな適度なロック感を持ったミディアム。なお、「コナン」劇場版主題歌は他にも何曲か担当したことがあったが、シングルの2nd Beatだったり、アルバム収録曲であり、シングルA面としてリリースされるのは今回が初めて。
 PVは海外ロケのショートバージョン。バンドメンバーと共に山脈のようなところで演奏するB'zと、モノクロで複数の外国人の家族、カップルなどの映像が交互に展開される。松本がアコギを長く弾くシーンがあるのはPVでは結構貴重かも?

3.SPLASH!
 2006年6月7日発売、42ndシングル。
 真夏リリースの久々のエロ全開(笑)ソング。テーマ的には「juice」を思い起こさせるが、こちらのほうが詞の直接的なエロ度といい、アレンジのネットリ具合といい数段上で、暑苦しいことこの上ない一曲(苦笑)。本作はストーリー仕立てのPVとなっており、B'zが黒服の悪そうなオッサン達(笑)から人魚のような女性を救出、ラストでは一緒に囚われていた人達と一緒にライブを繰り広げるという内容…だと思う。2012年の配信限定ミニアルバム「B'z」には全英語詞バージョンが収録。
 余談であるが、本作の初回盤では3種類のライブ映像をそれぞれ収録したDVDが付属。B'zとしてはこれが初の複数商法か?その効果か売上げは跳ね上がったが、当然ながら賛否両論が渦巻いた。

4.永遠の翼
 2007年5月9日発売、43rdシングル。
 太平洋戦争末期を舞台にした映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」の主題歌。ピアノで淡々と始まり、バンド+ストリングスで大々的に盛り上がっていく盤石のB'zバラードなのだが、同様のバラードであった二年前の「OCEAN」に比べるとややメロディーに盛り上がりが欠けるような気がする。
 PVは離れ離れになっていた少年(本郷奏多)と思いの通じ合った少女(本田翼)が再会するが…というストーリーを軸に展開される。本作ではB'zはビルの屋上で演奏するのみの役(何となく天からの使者的なイメージ)で登場。

5.SUPER LOVE SONG
 2007年10月3日発売、44thシングル。
 パワーコードでガンガン攻める、ここ数年のB'zのライブ向けアップテンポナンバー…なのだが、本作で注目すべきは凄いタイトル(笑)と、その歌詞の内容かも。その名の通りラブソングの体を成してはいるのだが、世界情勢を踏まえての二重の意味を探るのも面白い。「つぶしあい...なんて時代遅れ」「冷戦なんかもアホらしい」といった独自の世界を突き進む稲葉節は本作でも絶好調。
 ストレートな演奏を反映してか、PVもCGの赤い球体以外は装飾もなく、B'z+バンドメンバーしか登場しないシンプルな作り。Cメロ明けの間奏から赤い球体が破裂してスローで飛び散る中演奏が続くのだが、飛び散った絵の具のような赤い物体の質感にはCGの進化を実感させられた…と思うのは筆者だけか?(笑)

6.BURN -フメツノフェイス-
 2008年4月16日発売、45thシングル。
 「FIREBALL」以来となる化粧品タイアップ。だからなのかBメロの最後に「フーメーツーノフェイス♪」というフレーズが突然飛び込んでくるのだが、サビ前の良いアクセントになっていると思う。楽曲的には恒例のB'zアップテンポナンバー。サビ最後の「BURN BURN BURN…」の連発もインパクト大…と、「衝動」でも書いたことをここでも繰り返してしまった(苦笑)。PVは稲妻、火花、炎、水飛沫など(すべてCG)が飛び交うド派手な演出が目を引く。
 リリース直後の20周年ベストアルバム「ULTRA Pleasure」には収録されず、続くリクエストベストの「ULTRA Treasure」に収録された。オリジナルアルバム未収録。

7.イチブトゼンブ
 2009年8月5日発売、46thシングル。両A面シングルの1曲目。
 「ミエナイチカラ -INVISIBLE ONE-」以来の両A面シングルで、フジ系ドラマ「ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜」主題歌。意外にもフジ月9ドラマの主題歌を担当するのは今回が初(フジ系のドラマ主題歌の起用自体も結構稀)。ロングセラーを記録し、久々に固定ファン以外の売り上げも取り込んだヒット曲となった。PVでは廃車置き場で演奏しているB'z+バンドメンバーの姿が。
 稲葉の歌詞の根底に流れる「人は完全に相手をお互いに理解はできない。でも」というテーマを示した歌詞は非常に明快。また、大型タイアップの際にはこれぞB'z、という王道メロディーを書いてくる松本の手腕も光る名曲。次作「MY LONELY TOWN」の3rd Beatにバラードバージョンが収録された。

8.DIVE
 2009年8月5日発売、46thシングル。両A面シングルの2曲目。
 こちらはスズキのハッチバック「スイフト」のCMソングに起用。シンガロングタイプの疾走感溢れるロックナンバー。後先なんて考えずにとにかく突っ込め!的な歌詞は「イチブトゼンブ」に負けず劣らず共感できるものがある。総演奏時間は3分20秒弱と短いが、17thアルバム「MAGIC」にはイントロのスロー部分がカットされ更に短くなった約3分のアルバムバージョンで収録された。
 PVはロスで撮影。バイクに乗った謎のシザーハンズ男が女性を追いかけるシーンと、炎で燃えている一本道を塞いで演奏するB'zのそれぞれのシーンで構成。バイクが空を飛ぶシーンなど、何となく、特撮モノを連想させる映像作品。

9.MY LONELY TOWN
 2009年10月14日発売、47thシングル。
 シングル曲では意外とありそうでなかったマイナー調のロックナンバー。長らく封鎖されていた長崎の軍艦島でPVが撮影され、廃墟と化した建物をバックに演奏するシーンにも哀愁が漂い、この曲のイメージを助長している。
 この時期のシングルでの稲葉の歌詞は比較的分かりやすく、本作でも人と人との繋がりをさらりと描いた歌詞が良い。個人的にはこの曲(と17thアルバム「MAGIC」)でアレンジャー寺地秀行の手腕に注目するようになった。デジタルとロックを上手く融合させる彼の起用はB'zサウンドの幅をまた一つ広げたのでは。

10.さよなら傷だらけの日々よ
 2011年4月13日発売、48thシングル。
 2010年はメンバーがソロに注力し、B'z史上初めてオリジナル音源を発表しなかった年ということもあり、本作は実に1年半ぶりとなるシングル。
 ペプシNEXのCMとしてオンエアされ、本人達もCMに出演するという気合の入ったプロモーションが行われたのだが、発売前に東日本大震災が発生しプロモは自粛、リリースも本来の3月末から延期になるなど、アクシデントの相次いだ曲であるが、それだけに「傷ついた先からの新たな旅立ち」を綴った歌詞は胸に来るものがある。なお、PVは先述のCMと同じシチュエーションのものだが、CMでは水色の空だったのに対し、PVは暗いモノクロの空と、画面の明るさから受ける印象がかなり異なる。

11.Don't Wanna Lie
 2011年6月1日発売、49thシングル。
 三連ミディアムというシングルでは比較的珍しい路線。「名探偵コナン」TV版オープニングテーマと同時に劇場版のエンディングテーマにも起用された。歌詞の「僕ときたらごまかしつづけ もう何年たつだろう」というフレーズはダイレクトにコナンの心境、という気もする(笑)。PVの一部はTV版のオープニングにも使用された。
 初回盤と通常盤(CDの収録内容は同一)のシールをペアで送付するとこの曲のバラードバージョンのCDが手に入るという、明らかにチャート対策の複数購入キャンペーンを発売直後に発表するなど、楽曲以外の面でマイナスイメージの付いてしまったシングルであるが、曲自体は勿論悪くない。

12.GO FOR IT,BABY -キオクの山脈-
 2012年4月4日発売、50thシングル。
 再びペプシNEXのCMタイアップが付いた通算50枚目を数える記念すべきシングルだが、特にそれを意識したこともなく、ギターリフで終始曲を引っ張るいつも通りのハードなB'zサウンドが展開。特筆すべき点はCメロで松本がリードヴォーカルを取るあたりか。いきなり稲葉ではない声がメインで聴こえてきて「これは…TAKの歌声!」と筆者は思わずニヤけてしまった(笑)。
 バンドメンバーの他に女性ダンサーを従えてのレトロかつサイケデリックな(メンバーが分身したりする)PVはなかなか面白い。なお、この年のB'zのリリース活動はこのシングル1枚のみ。本ベストでアルバム初収録となった。

13.Q&A
 本ベストアルバムに初収録の「Brand New Track」。
 今回発売されたベスト2枚に収録された4曲の新曲の中では最も攻撃的なナンバー。松本がコーラスを務める「Question! Answer!」などの掛け合いはライブを意識したものかも。現時点で最新の「名探偵コナン」のオープニングテーマ。余談だがこのディスクには「コナン」関係の曲が4曲も収録されている。
 PVはなぜか侍が刀を持って現代に登場。B'z+バンドの演奏をバックに忍者の群れと戦いを繰り広げるのだが、マイクを刀のように振り下ろす稲葉、ギターから稲妻を発光させる松本など、B'zにもそれぞれ見せ場が用意されている(笑)。

14.ユートピア
 本ベストアルバムに初収録の「Brand New Track」。
 現在オンエア中のテレ朝系ドラマ「DOCTORS2 最強の名医」のエンディングテーマで、タイトル通りの理想を描いた明るめのポップナンバー。「1988-1998」「1999-2012」のトリを務める位置にこの曲が置かれることによって、B'zの25年間を大団円で締めつつ、これからもユートピアを目指して進んでいきますのでよろしく、的な意思を感じて嬉しくなる、ラストに相応しい前向きな楽曲。


 以上、Disc2収録全14曲のレビューをお送りしました。
 25年の活動の中の近年6年間のこれらの楽曲は、乱暴な言い方をしてしまえば「B'zの十八番満載」といったところ。斬新なアプローチの曲や実験的な曲はほとんどと言っていいほどなく、過去の楽曲の路線をもう一度やっている…という曲も何曲か見受けられるのが偽らざる感想なのですが、それでも「イチブトゼンブ」のような多数が求めるB'z像へのニーズがある時は確実にそれに応えた楽曲をリリースしてくるあたりはさすがベテランといったところ。また、「MY LONELY TOWN」の項でも書きましたが、寺地秀行が全面的にアレンジャーとして参加して以降の曲には、新旧の彼らの音楽性の良い部分を抽出したエッセンスが感じられ、シングル、アルバム共に好印象を受けています。

 …というわけで、全4回、約一ヶ月半を要して書いてきました「B'z The Best XXV 1988-1998」「B'z The Best XXV 1999-2012」の全曲レビューはこれにて完結!いや〜、さすがにシングル50枚に新曲をプラスした全56曲を一曲一曲レビューしていくのはかなり大変でした(苦笑)。彼らがほぼ休むことなく25年間リリース活動を続けていたのと同じように、管理人自身にも彼らの音楽を20年以上聴き続けてきた記憶があるわけで、時が経つにつれて忘れかけていた楽曲に関する当時の思い出などを呼び起こしながら、楽しみつつ書かせてもらいました。
 さて、今回の2作同時発売のベストアルバムを総括すると、確かに既発のベスト群と大半に楽曲が被っている点は否めません。が、今まで発売されることのなかった「オールシングル・ベストアルバム」の発売によって、完全に彼らのシングル曲をこの2作によって一通り揃えることができるようになったのは意義のあることではないかと思います。まあ、コアなファンにとってはむしろ初回限定盤のDVD「MUSIC VIDEO集」のほうが本編、という意識もあるのではないかと思いますが…(苦笑)。

 最後に、デビュー25周年を迎えたB'zの今後の活動にも期待すると共に、また今後ベストアルバムを出すことがあるのでしたら、長らく待ち続けられているという噂(?)の「2nd Beat全集」をリリースしてもらいたい…という希望を出して、今回の「CD Review Extra」を締めさせていただきたいと思います。
 長きに渡るレビューにお付き合いいただき、どうもありがとうございました!!