
「夢やぶれて」に引き続いてサウンドプロデュースは武部聡志が担当。選曲されたのはユニバーサル時代の「あなたがいれば」(2004年)を除けば、デビューシングル「keep yourself alive」から8thシングル「たのしく たのしく やさしくね」までの1995〜1997年までの全シングルという、TKプロデュース全盛期時代の楽曲がメインの構成。当時の小室哲哉らしいテクノポップ路線のナンバーを今回のリメイクではガラリと趣を変え、生ドラムやパーカッションを取り入れている曲もあるものの、根底にはピアノやバイオリンなどを中心に据えたクラシカルなアレンジでお色直し。これらの楽曲群は、いわゆる「小室哲哉が華原朋美の歌声を最も上手く輝かせる」ための気合の入ったアレンジでプロデュースしていた頃の作品、ということもあり、今回リメイクするにあたり、単なる再録音ではなく、別角度からのアレンジにしたのは正解だと思います。
例を挙げると、「LOVE IS ALL MUSIC」ではコーラスグループを招いて歌を際立たせる構成にしたり、「たのしく たのしく やさしくね」はメロディーラインの不穏な構成(笑)を上手くピアノでアレンジすることにより、聴いていて違和感がないように仕上げたりと、工夫が見られます。生音メインにリアレンジされた「Keep yourself alive」や「Hate tell a lie」もライブ感が増して好印象。
また、華原朋美自身の歌唱力の大幅な上昇も重要なポイントでしょう。ニュースなどで伝え聞くように本格的にボイストレーニングを積み重ねてきた成果か、歌声にはほとんどエフェクトはかかっておらず生声に近い状態で録音されているのですが、かつての時として危なっかしくて壊れてしまいそうな歌声(それはそれで魅力的ではあったのですが・笑)はそこにはなく、歌詞の意味を噛みしめながら歌い上げる「表現者」としてのヴォーカル力が格段にアップしていることが感じ取れました。代表曲の「I'm proud」では壮麗なオーケストラアレンジを食ってしまうほどの歌力を見せており、今こそ彼女が胸を張って歌える曲になったのではないでしょうか。
…というわけで、復活記念で手にしてみた本作ですが、思った以上のクオリティで満足でした。今の状態であの怪曲「tumblin' dice」を歌ったらどう化けるのか…などと思ってしまったりもするのですが(苦笑)、セルフカヴァー集ということでオリジナルの新曲が今回は収録されなかったので、次作の予定があれば、純粋な新曲のリリースを期待したいと思います。
コメント
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当初は亜美のセルフカバーみたいなことにならないかと不安な面もあったのですが、意外性のある「たのしく たのしく やさしくね」やのびのびとした高音が特徴でどこか優雅さも感じる「save your dream」とか予想外の収穫でした。
選曲については不満は無かったのですが、欲を言えばワーナーに移籍した後の曲や小室末期3曲とか聴きたかったりもしたのですが、今最も聴きたいのは同じくオリジナルの新曲です。
本作、予想以上に良かったですね。特に原曲版で歌唱力的にも迷走し始めた「Hate tell a lie」以降の曲もちゃんとしたヴォーカルで録音されていて、歌唱表現の面でも新たな発見がありました。
ワーナー以降の曲のリアレンジも何かの機会にやってくれれば、とは思いますが、今の彼女を詞曲の面でも表現できる新曲が早く聴きたいですね。