start 2013年3月6日発売、10年振りに再メジャーデビューを果たした男性シンガー・松本哲也のファーストアルバム。メジャー復帰シングル「ユキヤナギ」を含む12曲+「ユキヤナギ〜Piano Ver.〜」をボーナストラックとして収録した全13曲。

 松本哲也のパーソナリティーについてはこちらを参照。2002年にワーナーミュージック・ジャパンからデビューしてシングル2枚、ミニアルバムを1枚発表した後はインディーズで活動していたという彼が、この度古巣に復帰。本作はそれに伴ってリリースされた初のフルアルバム。2002年リリースのシングル表題曲「翼」「I Wish...」、ミニアルバム「空白」から3曲の計5曲はオリジナルバージョンをリマスターして収録。他の楽曲はインディーズ時代以降の作品を山本健太のアレンジによって再録音、ということで、CDの帯にも書かれていますが「メジャー1st ALBUMにしてBEST ALBUM」と呼べる構成になっています。

 さて、彼の作風は、本作を聴く限りでは独白を主軸にした回想的な作品が多め。物語性はあまり濃くはありませんが、ひとつの情景、心象風景を丁寧に綴りながら、地に足を付けたメッセージを感じ取ることができると思います。ドラマチックなメロディーラインもそれに一役買っている模様。そんな彼のテイストを力強いバンドアレンジで彩っているメンバーにはウルフルズのサンコンJr.や、風味堂の中富雄也、鳥口JOHNマサヤなどの手練れの名前も見受けられ、かなり豪華な面子のアンサンブルが聴けて何だか得した気分(笑)。なお、歌詞カードのクレジットには2002年録音の5曲に関わったバンドメンバーの名前が記載されていないのですが、アレンジ名義の「may club band」で検索するとちゃんと名前が出てきました。10年前の作品ですが他の楽曲とも上手く溶け込んでいて、違和感は感じさせません。

 欲を言えば、バンドサウンドの曲が大半だったので、ギター一本で弾き語る「コンクリートリバー」や、ラストの「ユキヤナギ」のピアノ独唱バージョンみたいなシンプルなアレンジの曲ももう数曲あればアレンジのバリエーションが広がったかな、と思いますが、逆に言えば注文をつけたいのはそれぐらい。オリジナル以外に1曲収録された音楽仲間のカヴァー「歩きましょう」も彼が歌うからこそ説得力がある楽曲。前述の帯のキャッチコピーも伊達ではない、彼の10年の音楽活動の集大成的な「ベストアルバム」だと思います。