hatasigned 2013年1月30日発売、秦基博通算4作目のオリジナルフルアルバム。シングル「水無月」「Dear Mr.Tomorrow」「初恋」「グッバイ・アイザック」、そして昨年の1st EP「エンドロールEP」から表題曲を収録した全13曲収録。

 「Documentary」から2年3ヶ月ぶりという、久々のアルバムとなった本作。その前作では一部を除いた既発シングル以外は秦基博と久保田光太郎の共同プロデュース的な構成でサウンドに統一感があったのですが、今回は前々作「ALRIGHT」のような、複数のアレンジャーにサウンドプロデュースを依頼しているということもあり、作風は各アレンジャーの個性が出たのか非常にカラフル。亀田誠治や島田昌典などお馴染みの顔ぶれも目立つ中で、鈴木正人を招いてAOR風味のアプローチを試みた「現実は小説より奇なり」はかなりの出色。そして秦自身も冒頭の「Hello to you」、ラストの「綴る」でサウンドプロデュースを務め、前者は彼らしい弾き語り、後者はバンドサウンドが力強い楽曲と、シングル「Dear〜」での地味なセルフプロデュースっぷりは何だったのかと思うぐらいの(苦笑)成長を見せているのも聴きどころだと思います。

 また、本作に収録されたアルバム曲の新曲は、どの曲もメロディーが親しみやすく、またインパクトがあり、それが先述の各アレンジャーの腕による幅広い味付けとも相まってバラエティ豊か。ピュアなラブソングの「Girl」から、遊び心の感じられる「FaFaFa」、厭世的な「自画像」まで個性的で魅力的なナンバーが並んでおり、正直収録シングルが地味に感じてしまうほど(笑)。作品全体のトータルバランスにも優れた、個人的は2013年に早くも登場した名盤だと思います。非常にお勧めです。

 なお、初回盤Aには撮り下ろしドキュメンタリームービー「Film of “Signed POP”」を収録したDVDが付属。本作のテーマや制作方法などを秦自身が語るドキュメントと、「Dear Mr.Tomorrow」「初恋」「綴る」の弾き語りシーンで構成されている約30分。これで通常盤+900円はちょっと高いような気もしますが(苦笑)、このアルバムに込めた彼の思いが分かる特典映像といったところでしょうか。ちなみに初回盤Bには冨田ラボや菅野よう子などとコラボした楽曲4曲が収録されたCDが付属。前作に続いての複数特典商法は残念ですが、CD本編は同一のものなのでご安心を(?)。