130630_349978 2013年2月20日に、TM NETWORKが過去所属していたSONY MUSIC(旧EPIC/SONY RECORDS)より、1980年代にリリースされたオリジナルアルバム全7作が2013年New Remasterと銘打たれ、Blu-spec CD2仕様にて一斉に再発売されました。彼らのオリジナルアルバムがリマスターされたのはデビュー20周年記念時(2004年)の全アルバム音源BOX、そして2007年の紙ジャケ仕様での80年代アルバムの限定生産発売と、過去に2回ありましたが、永続的にリマスター盤が発売されるのは今回が意外にも初めてとなります。デビュー29周年目前という微妙な時期の発売なのですが(笑)、今回の「Artist Archive」ではこの度再発された「RAINBOW RAINBOW」から、「CAROL-A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-」までの作品を一作ずつご紹介いたします。


Blu-spec CD2リマスター盤発売記念
TM NETWORK 80's 全オリジナルアルバムレビュー




RAINBOW RAINBOW
tm1
 1984年4月21日発売、デビューアルバム。全9曲収録。
 シングル「金曜日のライオン」と同時発売の、TMの記念すべき処女作。当時の彼らの代表曲「1974(16光年の訪問者)」をはじめとして、派手でクセのあるシンセサウンドが全編に渡って聴き手の耳にインパクトを残すエレクトリックポップスアルバム。世界観はデビュー当時のファンタジー&SF路線で、現実感のない(というか解釈の難解な)歌詞が多数。特に3曲手がけた麻生香太郎の歌詞は超個性的。また、後のメインライターとなる西門加里(=小室みつ子の変名)もこの時点で既に登場し、タイトル曲などを担当している。
 デビュー作なので宇都宮隆のヴォーカルスタイルに若干の初々しさが感じられたり、後年バラード作品に特化する木根尚登が「パノラマジック」のようなアップテンポの曲を手がけていたりと、ブレイク以降にはない作風が目に付く。本作、次作が後々に濫発されるベストアルバムへほとんどピックアップされないのは、「TMのパブリックイメージ」と異なる曲が多いからかもしれない。ベストから入ったリスナーが本作を手にするのは他のオリジナルを聴いて、TMのイメージを固めてからの方が良いかも。


CHILDHOOD'S END
tm2
 1985年6月21日発売、2ndアルバム。全11曲収録。
 前作のファンタジー路線から一転、先行シングル「アクシデント」に代表されるような、現実的な舞台で展開されるラブソングが大半を占め、歌詞の共感度が一気に高まった。これは松井五郎や三浦徳子がライターとして参加したのが大きいか。その中で中盤(7曲目)の「DRAGON THE FESTIVAL」(作詞:小室哲哉)だけはエルドラドを目指す旅人の歌で妙に浮いている(苦笑)が、後のシングルカットもあり、本作で一番知名度の高い曲となった。
 サウンド的には引き続きシンセがメインではあるのだが、前作の原色ハデハデなシンセサウンドは影を潜め、生楽器の中に上手く溶け込ませているので非常に聴きやすいのが特徴。「永遠のパスポート」「8月の長い夜」あたりが人気曲のようだが、個人的にはマイナーチューンの「さよならの準備」が一押し。
 シンプルで爽やかな音使いのせいか、発売時期のせいか、どことなく「初夏」をイメージさせるアルバムである。


TWINKLE NIGHT
tm3
 1985年11月28日発売、TM史上唯一のミニアルバム。全4曲収録。
 発売時期やアルバムジャケットの写真など、クリスマスを意識したと思われる作品集。先行シングル「YOUR SONG(“D”MIX)のTWINKLE MIX(これがオリジナル扱いらしい)や、小室が音楽を担当したOVA「吸血鬼ハンターD」から長尺のインスト「組曲VAMPIRE HUNTER D」を収録するなど、再びファンタジー路線に戻ってきた印象の残るアルバムである。また、デビュー当時からライブの最後で歌われ続けてきた初期の名曲「ELECTRIC PROPHET(電気じかけの予言者)」のスタジオ録音版もここでようやく日の目を見た。
 ミニアルバムということで、ライトリスナーへの訴求力は薄めだが、ロマンチックな作品が好きな人にはお勧め。


GORILLA
tm4
 1986年6月4日発売、3rdアルバム。全10曲収録。
 この年よりTMが提唱した「FANKS(=FUNK+PUNK+FANS)」というキーワードを掲げて従来の路線から大きく転換を図ったアルバム。ヒットシーンへの足がかりを徐々に築き上げていくいわば「ブレイク前夜」の時期の到来である。
 本格的に生のリズム隊やホーンセクションを導入し、「Come on Let's Dance」「NERVOUS」「You can Dance」などの、体感的な「踊れるロックサウンド」が炸裂している。その一方で「Confession〜告白〜」「SAD EMOTION」ではバラード作家としての木根作品のアプローチも見逃せない。迫力のある生演奏がメインなので、「TM=機械を多用した打ち込みシンセミュージック」というイメージで彼らを忌避している層にも是非聴いてもらいたい1枚である。
 唯一の欠点といえばこのジャケットだろうか。いかにもなCGを背景に、向かって左から宇都宮、小室、木根が並んでいるのだが、三人とも写真写りが非常に残念なことになっている(苦笑)。


Self Control
tm5
 1987年2月26日発売、4thアルバム。全10曲収録。
 発売当時のCDの帯の「TMが今、Self Controlを打ち破る!」という仰々しい(?)キャッチコピーが目を引く本作。前作の「FANKS」の名残りは「All-Right All-Night」「Don't Let Me Cry」で見受けられるが、路線的には情熱的なロックサウンドから、ポップス寄りの聴きやすい音への軌道修正が見られる。
 TMの代表曲として世間的に認知されている表題曲を始めとして、ドラマチックな「Spanish Blue」、重くシリアスな「Fighting」といった小室作品、TMバラードでも屈指の「Time Passed Me By」「Fool On The Planet」などの木根作品など、アルバム1枚を通じてバラエティに富んだ構成になっていて飽きさせない。なお、本作より小室みつ子が本名で参加し、6曲分の歌詞を担当するメインライター状態になり、TMの詞といえば小室みつ子という図式が定着し出すのはこの頃である。
 アートワークも良く、ブレイク直前の勢いも感じられる名盤。個人的にTMN期も含めて、彼らのオリジナルアルバムのベスト1は本作。


humansystem
tm6
 1987年11月11日発売、5thアルバム。全11曲収録。
 「Get Wild」のヒット、ベストアルバム「Gift For Fanks」の発売を経て、ブレイク後初のオリジナルアルバム。レコーディングは日本とロサンゼルスで行われた。先行シングル「Kiss You」のmore rockバージョン他、ギターとシンセを表に出したロック色の強い作品が並ぶ。歌詞的には「Children of the New Century」「Telephone Line」「This Night」など、「人と人との繋がり」をテーマに描かれた曲が多い。その最たる曲は、少年少女の出逢いをモチーフにした表題曲の「Human System」。アルバム曲ながら詞・曲・アレンジトータルの完成度は本作でも群を抜いて高いと思う。また、1999年にTM NETWORKが復活した際に、小室プロデュースで鈴木あみが本作収録の「BE TOGETHER」をカヴァー、これが大ヒットしたこともあり、以降はこの曲もTMの代表曲扱いとなり大幅に知名度を上げた。
 前半に前作の延長上にある楽曲、後半はインストや、やや実験寄りのサウンドの楽曲、という構成になっており、代表曲は前半に集中している感があり、トータルバランスでは前作の方に分があるだろうか。
 なお、オリジナル盤では「CDのダイナミックレンジを最大に生かす」という小室の意向で、本作は同年代の彼らのアルバムと比べても音量レベルがかなり低く設定されている。リマスター盤では他作品と同程度の音量に改善されていてひと安心(?)。


CAROL -A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991-
tm7
 1988年12月9日発売、6thアルバム。全13曲収録。
 ロンドン在住のキャロル・ミュー・ダグラスという少女が、盗まれた「音」を巡って異世界を冒険する、木根尚登原作のファンタジー小説のサウンドトラック的なアルバム。発売直後のライブツアーでも、本作のストーリーに沿ってステージが進んでいく、ミュージカルの要素を取り入れた構成になっていた。
 従来のTM作品と比べてかなりアナログ色、アコースティックバンド色の強い1枚。リズムマシンを使用したのも先行でシングルで発売されていた「Come On Everybody」ぐらいで、派手さがない分、丁寧な音のダビングやミックスが施され、聴き心地は随一。レコーディングはロンドンで行われ、ストーリー性を連ねた「キャロル組曲」だけではなく、「Winter Comes Around」「Still Love Her」などのその他の楽曲も、どことなくロンドンの風景を思い起こさせる作品が多い。
 なお、CDとLPでは収録曲順が大きく異なり、CDは前半と後半がいわゆる「キャロル組曲」関連、中盤に「Beyond The Time」「Seven Days War」など、「それ以外の楽曲」を配置しているのに対し、LPは「キャロル組曲」盤と「それ以外の楽曲」盤の2枚組形態と、工夫を凝らしたリリースだった。また、一連の「キャロル組曲」はその性質上、ベストアルバムには一度も収録されたことがなく、本作の価値を保ち続けている。
 CDや小説の他にも、ビデオアニメやオーディオドラマなど、様々な媒体でのメディアミックスが成された作品でもある。結果的にはTM NETWORK時代(第1期)最後のオリジナルアルバム。



 以上、今回再発された7枚のオリジナルアルバムのレビューでした。
 さて、SONYの新規格Blu-spec CD2でリリースされたこれらの作品、管理人も早速何枚か購入して聴いてみました。比較対象が80年代のオリジナル盤ということもあり、音質の違いは明らかでした。全体的な音圧が上がったのは勿論のこと、中音域で鳴っている楽器がクリアになり、「こんな音も入ってたんだ」という新鮮な驚きを四半世紀ぐらいの時を経て(笑)感じてしまいました。ただ、あくまでオリジナル盤との比較ですので、リマスターBOXや紙ジャケシリーズを所持している方にとっては若干の音質の変更を感じるぐらいかもしれません。
 これらの実感がBlu-spec CD2効果なのか、2013年リマスター効果なのかは判断しかねるのですが、こうなったらもうベストアルバムは出さなくていいから、一度もバラ売りでリマスター盤が発売されていないTMN時代の2枚のオリジナルアルバム「RHYTHM RED」「EXPO」は何としてでもリマスター再発をお願いしたいところ。1枚あたり1,890円(「TWINKLE NIGHT」のみ1,575円)という良心的な価格設定もポイントが高いです。
 SONYが久々に良い仕事をしてくれたことを最後に讃えながら(笑)、今回のレビューを終えたいと思います。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。