inokasira 2012年9月5日発売、タイトル通り、同年2月にライブハウス・下北沢GARDENにて敢行された井乃頭蓄音団のライブを収録したCD+DVDの二枚組。

 井乃頭蓄音団とは、松尾遥一郎率いる五人組フォークロックバンド。筆者は数年前に彼らのアコースティック編成での少人数ユニットを神奈川県の某所にて偶然観たことがありまして、その時のインパクトに思わずのけぞってしまった思い出があるのですが(笑)、あれから年が経ち、知名度を徐々に上げ、ついに全国流通のCDを発売し、レンタル店にも入荷されるようになった彼らの最近の活躍を確認すべく(?)借りてきた次第であります。

 さて、本作はライブアルバム。聴いてみると初っ端からいきなりロックなアプローチのバンドサウンドでちょっとびっくり。前述の通りアコースティック編成でしか彼らを知らなかったので、これは新鮮な驚きでした。中でも「デスコ」「ライバル」はサウンド的に格好良くて、演奏だけ聴いていると「これって本当に井乃頭か?」と思ってしまうほど。とはいえ、歌われている中身は従来通りの井乃頭蓄音団。まあ一言でいうと「俺ってこんなにダメ人間なんです」みたいな赤裸々な心情の吐露がフォーク調のメロディーに乗って切々と綴られる、自虐全開の私小説風の歌詞。これがとにかく痛い、痛すぎる^^;。「帰れなくなるじゃないか」や「親が泣く」などに自分自身を重ね合わせるリスナーもいるのではないでしょうか(←含む筆者)。間奏でテクニカルな演奏を決めているのに、歌が始まると…という曲も多く、失笑を禁じ得ない部分もあるのですが、それがまたユニークでもあり。収録時間約40分という短さながら、濃厚なエキスの詰まったライブアルバムだと思います。

 惜しむらくは、今回はレンタルで手に取ったので同梱のDVDは借りられず、CDと同内容のライブ映像が収録された「動く井乃頭」を観られなかったことと、「夏子さん」や「ともだち」といった、彼らの代表曲(多分)が未収録だったこと。スタジオ音源ではすでに流通しているそうですが、この2曲は生のライブアレンジでも聴いてみたかったですね。
 …お伝えしてきたように、はっきり言って聴き手を選ぶアーティストであるので、一概にお勧めはできない内容なのですが、その良くも悪くも「リアル過ぎて気持ち悪い」作風を経験してみたい方は、まずは是非、レンタルを(笑)。