DEENPERFECTALBUMS 2013年1月1日、3月にデビュー20周年を迎えるDEENが、これまでにリリースしてきたオリジナルアルバム(最新オリジナル「マリアージュ」を除く)をデジタルリマスターし、LPサイズジャケットに封入したボックスセット「DEEN PERFECT ALBUMS+1 〜20th Anniversary〜」を発売。DEEN史上最高額の作品ですがコアなDEENファンである筆者はやはり買ってしまい(笑)、DEENの歴史を噛みしめながら一枚一枚聴いております。今回のエントリーでは「Artist Archive」として、本ボックスに収録されたアルバム「DEEN」から「Graduation」までの全12枚の作品をアルバム毎に解説してご紹介していきたいと思います。


「DEEN PERFECT ALBUMS+1 〜20th Anniversary〜」
収録アルバム全12枚レビュー



DEEN
deen1
 1994年9月14日発売、デビューアルバム。全11曲収録。
 当初の予定では同年春にリリースと告知されていたが、「瞳そらさないで」のヒットを挟んで約半年後にようやく発売された。デビューシングル「このまま君だけを奪い去りたい」他、「Memories」「永遠をあずけてくれ」といったデビュー初期のヒットシングルを収録しているが、「翼を広げて」はなぜか未収録。
 待ちに待たされたデビュー作だが、本作でようやく4人のバンドメンバーが揃ったこともあり、まだDEENというバンドをどういったコンセプトで世に出していくのが試行錯誤の時期だったのか、バンド感の薄いシンセポップや、ブラックミュージック寄りの曲も収録されており、全体として手探り感を感じてしまう。ミリオンセラーを達成した作品ではあるが、まだDEENのイメージが固まり切っていない散漫な印象のアルバム。
 特に告知はされていなかったが盤面には初回盤と通常盤が存在し、レーベル面が緑なのが初回盤、白なのが通常盤。


I wish
deen2
 1996年9月9日発売、2ndアルバム。全11曲収録。
 約2年振りのオリジナルアルバム。1995年、1996年にリリースしたシングル6タイトル7曲のうち、「未来のために」以外の全曲を収録しているため、ハーフベスト的なオリジナルではあるが、アルバムの新曲はすべてメンバーの手によるもの。ファンク風の「Sha・la・la・la〜I wish〜」(池森作品)、ポップロックな「果てない世界へ」(山根作品)、アコースティックバラードの「ありったけの笑顔」(宇津本作品)など、メンバーの個性を出しつつも、バンドとしてのDEENのイメージを重視した佳曲が並ぶ。彼らの本当の意味でのデビューアルバムはこの作品かもしれない。
 難点をひとつ挙げるとすれば、1曲目から4曲目までシングルが連続し、新曲を聴く前に満腹気味になってしまうところか。とはいえ、イントロピアノの「LOVE FOREVER」で始まり、「少年」のアウトロピアノでアルバムの幕が下りるのは良い構成だと思う。


The DAY
deen3
 1998年12月16日発売、3rdアルバム。全12曲収録。
 この年の3月にベスト盤「SINGLES+1」をリリース後、レコード会社をB-Gram RecordsからBMGジャパン内ビーイングレーベルBERGへ移籍しての第1弾アルバム。
 シャープなサウンドで全編を構成する、「ロックバンド」としてのDEENを強調した作品。サウンド面では田川のギターが、ソングライティングの面では山根と宇津本が主軸となって全体を引っ張っている。シングル曲以外のすべての作詞を手がける池森も、日常を感じさせる「ONE DAY」「君のいないholiday」から、スケールの大きい「GRAVITY」「VOYAGE」まで幅の広い作詞センスを披露。爽やかポップスとしてのDEEN像からはやや離れた作品だが、一本芯の通ったストイックなサウンドがお勧め。


'need love
deen4
 2000年5月24日発売、4thアルバム。全12曲収録。
 1999年末のカウントダウンライブをもって宇津本が脱退、三人での再スタートを切るという激動の時期にリリースされた本作は、前作のようなサウンドの統一は目指さず、十八番のバラード「MY LOVE」「蒼い戦士たち」、ファンク風の「Soul inspiration」、ブラスポップの「ひとりぼっちのAnniversary」、アコースティックセッション的な「愛があるから」など、ここに来てDEENとしてのサウンドバリエーションを一気に増やしたアルバム。また、昨年リリースされていた久々の池森作曲シングル「JUST ONE」は、同年のツアーで披露された「Break 4 Style」で収録。他、シングル曲の手直しも随所にあるなど、細部まで工夫が凝らされている。
 初回盤はフォトブックが付属の紙パッケージ仕様。長らく通常盤を目にしなかったのだが、数年前に足を運んだライブ会場でジュエルケースに入っている通常盤をようやく発見した時は感動した(笑)。


pray
deen5
 2002年11月20日発売、バラードベスト、カヴァーアルバムを挟んで久々となる5thアルバム。初回盤にはスリーブケースが各店舗で配布されていた。
 先行シングル「Birthday eve〜誰よりも早い愛の歌〜」から始まった「DEEN's AOR」の第1弾アルバム。ドラムスの沼澤尚をはじめとして、有名ミュージシャンをゲストとして多数迎え、1曲目の「magic」からいきなり重厚かつ濃厚なAORサウンドを展開。作曲陣もメンバーの他に外部提供の作品が多数収められており、この時期の彼らを支えた作曲家・鈴木寛之も本作から登場。「Call your name」「Take your hands」を手掛けている。
 池森の歌声も含めて、前作までとあまりに作風が変わってしまったため、当時はファンの間で賛否両論が巻き起こっていた。筆者も確かにいきなりの路線変更には面食らったものの、このAOR期(2002年〜2004年)はDEENの20年の活動を振り返ると、個人的には一番熱心に聴いていた時期だったような気がする。
 通常盤は全12曲だが、初回盤には13曲目にclassicsシリーズの表題曲「Christmas time<a capella> 」がボーナストラックとして収録。ただし、今回のリマスターボックスは通常盤仕様となっており、この曲は含まれていないので注意。


UTOPIA
deen6
 2003年11月5日発売、6thアルバム。全11曲収録。初回盤はスリーブケース&エンハンスドCD仕様。
 DEEN's AOR第2弾アルバム。本作に収録のシングル「太陽と花びら」からビーイングレーベルを示す「BERG」マークが消滅し、特にアナウンスも無しにビーイングから離脱していたことが明らかに。とはいえ、制作陣にはほとんど変更はなく、AOR路線をより深化させた内容となった。
 前作で見せたブラスをはじめとしたゴージャスな演奏は影を潜め、田川の地味ながら聴かせどころの多い細かいギタープレイや、沼澤尚の湿感を感じさせるドラミングを軸に、派手さはないものの作り込まれたトラックで、聴き込めば聴き込むほど味わいの出てくるアルバム。「ユートピアは見えてるのに」他、3作のシングルはロサンゼルスの有名ミキサー、アル・シュミットの手により、現地でリミックスが施されている。
 飛び抜けてインパクトを放つ曲はないが、アルバムを通しての完成度はピカ一の名盤。個人的には彼らの全オリジナルアルバムの中で最高傑作だと思う。


ROAD CRUISIN'
deen7
 2004年8月18日発売、7thアルバム。全12曲収録。初回盤にはPVとメイキングショットを収録したDVDが付属。
 前作からわずか9ヶ月という短いインターバルで届けられた本作。リリース時期に相応しい、爽快な「ドライブミュージック」をテーマにした、結果的にDEEN's AOR最後のオリジナルアルバム。
 夏という季節に合わせたのか、「pray」「UTOPIA」のような重厚感、しっとり感から離れ、ゲスト演奏陣のこなれた演奏はそのままに、従来のDEENのパブリックイメージであるポップスと、この時点でのDEENが推し進めていたAORを上手い具合に融合した作品に仕上がった。ドライブミュージックを意識してか「レールのない空へ」「明日へのOFF ROAD」といった軽快なナンバーが多い。また十八番バラード「OCEAN」に加え、ロック色の強い「STRONG SOUL」も収録されていることもあり、AOR三作品の中では最もバラエティ豊かで、DEEN's AOR入門には最適の1枚。


Diamonds
deen8
 2006年10月11日発売、8thアルバム。全11曲収録。初回盤にはPVやレコーディング風景を収めたDVDが付属。
 セルフカヴァーベスト「DEEN The Best キセキ」を経由し、再び路線を大きくシフト。今回は「最新型DEEN'S ROCK」を掲げ、基本的にはライブのツアーメンバーの演奏を中心とした「ロックバンド」としてのDEENを強く打ち出した1枚。
 ロックサウンドといっても「皆で一緒に盛り上がろう」的なロックの熱さ、楽しさを前面に押し出しているので、かつての「The DAY」のようなストイックな路線とはまた印象の異なる作品である。池森の歌詞も先行して発売された「Starting Over」など前向きな曲が多い一方で、エッジの効いたサウンドに乗せて両親への感謝を綴る「Family」、彼女との久々の時間にパスタを茹でてワインで乾杯する「ロッソ!!」の2曲はインパクトが大きい。インパクトといえば、本作よりスタートした山根ヴォーカルによるライブ用持ちキャラクター(?)「上海ロックスター」シリーズも異色。


DEEN NEXT STAGE
deen9
 2009年2月25日発売、9thアルバム。全13曲収録。初回盤はカウントダウンライブやPVを収録した120分にも及ぶDVDが付属。
 デビュー15周年と前後してclassicsベストやシングルベストなど、今までの活動の総まとめ的作品のリリースを挟んで実に2年4ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム。久々のヒットとなったシングル「永遠の明日」はオリジナルバージョンとバラードバージョンの2トラックが収録されている。
 DEENの一般的なイメージとされるポップス、バラードは勿論のこと、その他AORやロック路線といった、今までのDEENが歩んできた多様な音楽性を凝縮した1枚で、近年のアルバム作品の中では最もライトリスナーが入りやすい間口の広さを持っている。ラッパーとコラボした「Dance with my Music」から壮大なバラード「ノスタル〜遠い約束〜」まで作風は幅広いが、15年の積み重ねがあってこその「DEENの作品」として仕上がっているアルバムだと思う。
 なお、本作収録の「歌になろう」は、前年のカウントダウンライブのWアンコールにて録音されたオーディエンスのコーラスが収録された「NEXT STAGE MIX」。余談ではあるが筆者はこのライブに参加したので、コーラスの中に一応筆者の声も混じっているはずである(笑)。


LOVERS CONCERTO
deen10
 2009年12月2日発売、10thアルバム。全11曲収録。初回盤にはペアのストラップ、PV+この年の夏のリゾートライブの模様を収めたDVDが付属。
 アルバム制作に関しては基本的に緩やかなペースのDEENが初めて1年に2枚のオリジナルアルバムを作り上げた、2009年を締めくくる本作は「全曲ラブソングアルバム」というコンセプト作。幸せな恋、過ぎ去った恋、切ない恋など、様々な角度で綴る恋愛短編集的な趣向を凝らした作品である。
 本作のもうひとつの特徴として、コラボアーティストとの競演作が先行シングルの「Negai」を筆頭として5曲収められている点が挙げられる。「harukaze」のparis matchや「五線紙のラヴソング」の宮本笑里など、異色のコラボレーションが実現しており、コラボ側に合わせてかDEENも持ち前の幅広い音楽性を惜しみなく発揮している。同年の「DEEN NEXT STAGE」が春夏向けならば、こちらは秋冬向けのアルバム。


クロール
deen11
 2010年7月28日発売、リリース当時は「サマースペシャルアルバム」と銘打たれていたが、今回のボックスセットで公式に11thアルバムとクレジットされた。全12曲収録。初回盤には過去の彼らのサマーソングを収録したCD「ナツベスト」を同梱した2枚組。
 田川によるインスト曲、山根のヴォーカル曲、人気曲「月光の渚」「Blue eyes」を新たにリメイクするなど、企画盤ならではの試みがなされている。夏がテーマのアルバムだが、ギラギラ暑い夏ではなく、爽快なアコギを全面に押し出し、暑さをクールダウンしてくれるような、リゾートミュージック的な作風。
 軽快なテンポの「coconuts feat.kokomo」で幕を開け、安全地帯のカヴァー「夏の終りのハーモニー」でしっとり締める構成もなかなか。印象としては、かつての夏のclassicsシリーズ「BLUE」をアルバムとしてバージョンアップさせたかのような1枚。


Graduation
deen12
 2011年6月15日発売、12thアルバム。全11曲収録。初回盤にはバラードベスト第2弾「Ballads in Blue II」と、ライブ映像を収録したDVDが付属の3枚組。
 アルバムタイトルはデビューから18年を迎え、人生でいうところの「(高校)卒業」にあたる年齢に達したということで名付けられた。同時に今までのDEENの活動(人生)を振り返るということで、曲のタイトルにはリリースしてきたオリジナルアルバムのタイトルを冠し、リリースタイトル順に曲が並んでいるのも大きな特徴。
 リードトラック「卒業」をはじめとして、18歳という年齢を強く意識したのか、本作にはかなり瑞々しい歌詞が並ぶ。楽曲的には各アルバムのコンセプト色を反映させた、というわけではなく、ロック、ダンス、ラテンなどの曲調が多くこれまた若々しさを感じる。ライブ感を意識したのか、どの曲もライブ映えのする曲が揃っている。なお、「NEXT STAGE」では田川が曲中の一部ではあるが初めてリードヴォーカルを担当。
 タイトルがタイトルなだけに妙な邪推をしてしまいそうだが、この年の武道館ライブでのMCで「18歳は卒業の年齢ですが、DEENを卒業するわけではありません(大意)」という宣言をしたことに胸をなで下ろしたファンは筆者だけではないはずだ(笑)。


 …本作ボックスに収録されているアルバムは以上の12枚。そして2012年の8月には13枚目のオリジナルアルバム「マリアージュ」がリリースされています。
 ボックス特典の「PREMIUM DISC」にも少し触れておきますと、今まで商品化されていなかった「銀色の夢〜All over the world〜」の英語バージョン、そしてテレビドラマやアニメのタイアップの際に制作された「ひとりじゃない」や「哀しみの向こう側」などのTVサイズバージョン、そして「このまま君だけを奪い去りたい」のオリジナル、リメイク版などのスタジオレコーディング作品を4バージョン収録した全11曲。「このまま〜」は特にプレミアでも何でもないのですが(苦笑)、それ以外の収録曲はレア音源となっています。
 さて、20周年間近のDEENですが、3月13日には3枚組ベストアルバムと、ライブヒストリーDVDが同時発売されるそうです。DVDのほうは「ALL TIME LIVE BEST」の前例があるので、今度こそ未発表映像に期待したいと思います(笑)。秋に予定されている20周年を祝う日本武道館公演まで、まだまだアニバーサリーイヤー企画は続きそうですね。今後のリリース物もできれば3月発売のベスト同様、買い求めやすい価格での展開を願っています^^;。