deenchristmastime 「今週の1枚」を更新するのも2012年はこの回がラスト。今年は今回を含めて全6回の更新ということで、まあまあ例年並みのペースだったと思います(苦笑)。さて、本年最後のお勧めの1枚は、ちょうどクリスマス直前ということもあり、今の時期を舞台にした「コンセプトマキシシングル」という特殊な形でリリースされた、DEENの「Classics One WHITE Christmas time」をご紹介いたします。

 1993年にデビュー、ヒット曲の数々を世に送り出し、ビーイングブームの一翼を担ったDEEN。プロデューサー主導で結成され、いわゆる「ビーイングらしい」楽曲制作活動を行っていた彼らにとって、1999年という年は大きな節目の年だったのではないでしょうか。前年レコード会社をビーイング御用達のB-Gramから、BMGファンハウス(現アリオラジャパン)に移籍し、この年の夏からは本格的なセルフプロデュースを開始。彼らの原点ともいえるバラードシングル「JUST ONE」、「MY LOVE」をリリースした後、初の試みである「DEENのアナザーサイドを見せる」というテーマの「classicsシリーズ」と銘打って、1999年11月25日に発売されたのが本作です。

 収録されているのは全7トラック。うちストリングスによるインストゥルメンタルが1、4、7曲目に前奏、間奏、後奏的に配置され、シングルでありながら、極めてミニアルバムに近い内容の構成。歌入りの楽曲はタイトル曲を含む新曲2曲と、当時のDEENとしては初となるセルフカヴァー楽曲が2曲。これらの曲にはストーリー的な繋がりはなく、作品全体として「冬(クリスマス)」に材を採った短編小説的な趣となっています。
 1曲目から順にご紹介していくと、柔らかな冬の朝の日差しのような前奏「Christmas time〜morning light〜」に続き、2曲目は雪の降る主人公の故郷へ恋人を初めて連れて行く、「忘れられない旅の始まり」を描いた物語を、オーケストラをバックにヴォーカル池森秀一が雄々しく歌いあげる表題曲「Christmas time」。うって変わって3曲目は打ち込みR&B調のトラックに、別れた彼女との思い出を回想しながらクリスマスの夜に一人で過ごす悲しみを綴った「The Room」。この曲で、リスナーの気持ちをド〜ンと重たくさせること間違いなしです(苦笑)。
 12月特有の乾いた空気を連想させる間奏「Christmas time〜twilight breeze〜」を挟んで5、6曲目は代表曲のセルフカヴァー。まずは「このまま君だけを奪い去りたい〜Acoustic version〜」。デビュー曲をアコースティックギターをメインに弾き語り風にリアレンジ。ギター担当の田川伸治はアコギの演奏に関してはアタックの強い奏法をするギタリストだと思うのですが、この曲はその強さが歌詞の溢れそうな感情を表現しているかのよう。途中で入ってくるバイオリンも上手く楽曲世界に溶け込んでいます。もう1曲は「永遠をあずけてくれ〜Millennium a capella version〜」。既に前年、アルバム「The DAY」にてアカペラに挑戦している彼らですが、今回はクリスマスナンバーをアカペラにてお色直し。原曲のビーイング王道バラードアレンジから一転、メンバー自身による多重コーラスワークが美しく、個人的にはこのバージョンでこの曲の評価が高まりました。ラストには静かな夜に深々と降り積もる雪をストリングスで表現したかのような「Christmas time〜evening snow〜」が奏でられ、本作は静かに幕を閉じます。

 これらの歌モノ4曲、アナザーサイドという観点から眺めると、スケールの大きいオーケストラバラード、R&B風ミディアム、アコースティックセッション、そしてアカペラと、常にDEENはバンドであるということが前提であった従来のアレンジの縛りを取り払い、曲のイメージに合わせた的確なサウンドメイクが光っていることを感じさせる楽曲が揃っています。全編を通して聴いても20分足らずではありますが、コンパクトな冬の小品集として、リリースから10年以上経過した現在、改めて聴いても色褪せない普遍的な(=classic?)魅力を放ち続けているとも思いました。

 このclassicsシリーズ、翌年2000年にはSEPIA(秋)、そして7年後の2007年にPASTEL(春)、そしてBLUE(夏)とリリースを重ね、この年の暮れにシリーズを総括したベストアルバム「DEEN The Best クラシックス」のリリースによって完結。発表された歌入り楽曲はこのベストに全曲収録(Mix違いもありますが)されており、現在、今回ご紹介した「WHITE」の中でしか聴けないのはインストの3曲のみなのですが、春夏秋冬をまとめたベストとは別に、本作は冬、特にクリスマス間近に通して聴くことによって、年の瀬をしみじみと感じることができる1枚です。
 あと数日でクリスマス。そしてあと一週間あまりで今年も終わり。慌ただしい師走ですが、ふとした時間の合間にこのCDを聴きながら、暮れゆく一年を回想してみるのはいかがでしょうか。