fujimaki 2012年10月17日発売、レミオロメンのヴォーカリスト・藤巻亮太のソロデビューアルバム。シングル「光をあつめて」「月食」「Beautiful day」を含む全11曲収録。初回限定盤にはレミオロメン名義で2011年にレコーディングされた「シーズンドライブ」を収録したディスクが付属の2枚組と、さらにPV+ライブ映像を収録したDVDが付属の3枚組の二種類。

 レミオロメンの活動を無期限休止として臨んだ2012年の藤巻ソロの活動を総括するかのような本作は、近年のレミオロメンの王道だった外に向かって前向きな歌詞が綴られるポジティブな作風から一転、どちらかと言うと初期の彼らを彷彿とさせる、内省的な歌詞が多め。活動停止のきっかけのひとつに震災からの出来事があった、ということもあるのか、「パーティーサイズ」など明るめの曲もあるものの、シングル曲をはじめとして歌の主人公が「これでいいのかな?」と明確な答えを出せないまま彷徨っているような曲が多い印象を受けました。そういった作風に合わせてか、あるいは藤巻が本当にやりたかった路線はこれだったのか、曲調やアレンジは上モノを必要以上には使用せず、レミオロメン後期で潤沢に使いまくっていたストリングスも導入せず、ロックバンド的なアプローチで全体をまとめています。

 今までの鍵盤やストリングスを前面に導入した路線を通過して、レミオロメンの音楽性が一回りして戻ってきた、という雰囲気で、詞も曲も初期に近いものの、初期特有の「泥臭さ」は洗練されており、経験値を付けつつ原点に戻ったかな…という感想なのですが、これをレミオロメンのアルバムではなく、藤巻ソロのアルバムで感じてしまう、というのが何とも皮肉といいますか。「四季追い歌」は歌詞の端々にレミオロメンを彷彿とされる言葉が出てきたりするあたりも、ちょっと複雑な思いがあるのですが、楽曲自体は派手さはないものの佳曲が並んでおり、新規リスナーの他にも、活動後期の路線で離れてしまった初期のレミオロメンのファンの方に特に一度聴いてもらいたい作品ですね。

 初回限定盤に付属の「シーズンドライブ」は、前述の通りレミオロメンとしてレコーディングされた(のを、藤巻亮太名義で今回発表したらしい)ということで、軽快なビートのブラスポップ。これまでのレミオロメンの活動の流れからすれば従来通りの作風といった感じで、インパクトはないものの良い曲。これを藤巻ソロにボーナス的に収録するということは、レミオロメンとしての活動再開はまったく白紙だから、幻の曲にならないようにとりあえずここに入れておくか、という配慮(?)なのかも。レミオロメンファンとしてはこの曲が彼らの最後のレコーディング音源にならないことをただ祈るのみです…。