TOROPICALFOODS 2012年10月24日発売、通算15枚目を数えるBEGINのオリジナルアルバム。沖縄ファミリーマートのCMソングとしてオンエアされ、沖縄限定でCD発売されたシングル「国道508号線」を含む全12曲収録。

 「3LDK」より実に3年2ヶ月ぶりのオリジナルアルバム(もうそんなに経つのか…)となる本作。前作は近年の彼らにしては珍しくブルーズを核に据えた渋い作品だったのですが、今回のニューアルバムは音楽性のベクトルを陽気な方向に振り切った、2000年代以降のBEGIN「らしい」アルバムに仕上がっています。なんでもアルバムの色を統一しているのは「ヤファイアン・ミュージック」なる、ここ数年の彼らが提唱しているキーワード(?)なのだそうですが、カントリーやサンバ、ハワイアンといった陽の空気をBEGIN流の解釈で表現した、といったところでしょうか。全体的な雰囲気は緩いのですが、本作はバンドサウンドがしっかりと楽曲を支えており(特にドラムの響きが気に入りました)、テンポも良く曲が進むので、ドライブミュージック的なBGMとして聴くのに適しているかも。

 歌詞に目を向けると、「砂糖てんぷら」「我ったータイムは八重山タイム」、そしてシングルにもなった「国道508号線」といった沖縄出身の彼らだから描けるコミカル路線の曲も多く収録。さすがに「国道〜」は歌詞カードがないと一部何を歌っているのか分かりませんでしたが(苦笑)、故郷を愛する彼らの姿勢が伝わります。一方で、「帰郷」といった少しビターな歌詞の曲もあるのですが、それを重苦しい空気ではなく、あくまで明るいメロディー、アレンジといった表現でまとめているところがスッと聴きやすく、好印象です。
 ちなみに、ヴォーカルはギターの島袋優、キーボードの上地等がリードヴォーカルを1曲ずつ担当、メインの比嘉栄昇を含めた三人で対等にメインを取っている曲もありますが、基本的には比嘉を前面に立てています。まあメインヴォーカルなので当然なのですが、「3LDK」や前々作「オキナワンフールオーケストラ」ではそのバランスがやや崩れ気味だったので、本作ぐらいの按配が一番良いな、と思いました。

 「オリジナル島唄」からの音楽性の流れを感じさせる雰囲気もあり、「島人ぬ宝」や「オジー自慢のオリオンビール」のイメージでBEGINを捉えているリスナーに、別ジャンルのBEGINのオリジナルアルバムをまず一枚、ということで薦めるとしたらこのアルバムが良いかも。近年の彼らの他のオリジナルアルバムは良くも悪くも個性的なので、本作はそれらに比べればスムーズに聴けるアルバムだと思いますので…。
 余談ですが、ラストにはNHK「みんなのうた」でオンエアされている「こどもしゅのうかいだん」が収録。タイトルからも察していただけると思いますが、この曲だけ明らかに路線が違うので(笑)ボーナストラック扱いということでしょう。本編ラストの「思い出のグリーングラス」(洋楽カヴァー)でしっとり終わった、と思ったらもう1曲あったという感じだったので、彼らなりのアンコール的なサービス精神、ということでしょうかね(笑)。