2012年09月15日 21:24

CD Review Extra:槇原敬之「EARLY 7 ALBUMS」発売記念・第1期ワーナー時代、全オリジナルアルバムレビュー

early7albums0905_2 来る2012年9月19日より、槇原敬之の公式サイトで、第1期ワーナー(1990〜1996年)時代にリリースされたオリジナルアルバムをリマスターした紙ジャケボックス「EARLY 7 ALBUMS」のネット販売がスタートされます。今回の「CD Review Extra」では、このボックスに収録されたオリジナルアルバム全7作をレビュー。当時の思い出などと共に語らせていただきます。「続きを読む」からご閲覧ください。

槇原敬之「EARLY 7 ALBUMS」発売記念
第1期ワーナー時代、全オリジナルアルバムレビュー



君が笑うとき 君の胸がいたまないように
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 1990年10月25日発売、記念すべきデビューアルバム。デビューシングル「NG」と同時発売。翌年4月に「ANSWER/北風」をシングルカット。全10曲収録。
 デビュー作にして槇原敬之=優しい隣のお兄さん、といったパブリックイメージが全編にわたり確立されており、メロディーラインも既に「彼らしさ」を感じさせることのできる一方で、ヴォーカルに関しては頑張って歌っている感が強く、初々しい。なお、アレンジは彼の全キャリア中唯一の西平彰との連名表記だが、移籍後にリリースされたベストアルバムでは西平彰の単独名義に変更されている。代表曲の「北風」は本作のちょうど2年後に「北風〜君にとどきますように〜」としてリメイク。また「RAIN DANCE MUSIC」「CLOSE TO YOU」も英語バージョンで後年セルフカヴァーされている。ちなみに「北風」のリメイク発売の際にCDの帯が「「北風」オリジナルバージョン収録」と表記されたものに秘かに変更された。
 「日本のカレッジチャートを急上昇」という扱いで、1991年の春頃に深夜の音楽番組で本作が紹介されていた。たまたまその音楽番組を録画していた筆者は、「どんなときも。」のブレイク後に偶然そのビデオを見返して驚いた記憶がある。


君は誰と幸せなあくびをしますか。
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 1991年9月25日発売、「どんなときも。」のブレイク真っ只中にリリースされた2ndアルバム。全11曲収録。CDジャケットは紙製の見開き仕様。
 実質1曲目の「僕の彼女はウェイトレス」がいきなりアッパーな曲なのでこういう路線のアルバムか?と思いきや、その後はミディアム〜バラード系の曲が続く。「どんなときも。」を収録しているのが売りのアルバムではあるのだが、この曲の印象を持ってこの作品を聴くと違和感を感じると思う。楽曲のバラエティ感では前作のほうがバリエーションがあり、地味なアルバムではあるが、友情を歌った「3月の雪」、オーケストラをバックに歌う「僕は大丈夫」など佳曲もチラホラ。また、「満月の夜」「ひまわり」など前作の優しいお兄さん的イメージを少し裏切るような歌詞の曲もあり、少しずつ変わっていく槇原を感じることのできる1枚。


君は僕の宝物
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 1992年6月25日発売、3rdアルバム。初回限定盤は紙製三方背ボックスと、ポストカード入りの封筒付き。全12曲収録。
 「冬がはじまるよ」「もう恋なんてしない」と立て続けにシングルヒットを飛ばし、曲単位ではなくアーティストとしてのブレイクを迎えた時期の作品ということもあり、ロングヒットでミリオンセラーを突破。歴代のオリジナルアルバムでは一番のセールスを誇る。
 表題曲のピアノインストで幕を開け、アコギインストでアルバムを締めくくるサントラ的なイメージのアルバム。収録された曲はシングル曲に負けず劣らずのカラフルなアレンジ、多彩なメロディー、さらに幅を広げた歌詞の世界が満載。歌声も前二作と比べるとずいぶん太くなった。一目惚れを歌った「まばたきの間の永遠」や告白ソング「てっぺんまでもうすぐ」なども登場。レゲエアレンジで郷愁を歌う「遠く遠く」は後にファン以外にも多く知られることとなる名曲。
 また、本作から基本的に彼の作品はドラムも含めてほぼ打ち込みでのレコーディング形態が定着するのだが、打ち込み特有の機械的な感じはほとんど受けず、生音を意識したかのような温もりのあるサウンドで統一されている。エンジニアとして長く彼の作品でマスタリングを務めることになるボブ・ラディッグも本作で初登場。
 「君」三部作完結編にして、初期の傑作アルバム。初期ワーナー時代の槇原敬之のオリジナルアルバム入門作としては本作を強くお薦め。


SELF PORTRAIT
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 1993年10月31日発売、4thアルバム。初回限定盤は通常盤よりもフォトページの多い歌詞ブックレット仕様。シングル「彼女の恋人」「No.1」「ズル休み」、一ヵ月後にシングルカットされた「雪に願いを」を含む全12曲収録。「彼女の恋人」は車のSEや生ストリングスが導入され、ミックスも変更されたアルバムバージョン。
 「君」三部作を経て仕切り直しの本作は、アルバムタイトル通り自己の内面を描く方向へ向かった。「君」も登場するが、間接的だったり過去形での登場だったりと、基本的には自分自身の事を綴った曲が多く、その極みともいえるこの時期の代表曲「MILK」も収録されている。サウンド的には前作の打ち込み生音風路線(?)を軸に、「Witch hazel」のようなフレンチポップ、お楽しみ曲と当時呼ばれていた「困っちゃうんだよなぁ。」ではテクノポップと実験的な試みも導入された。
 前述の「MILK」をはじめ、シングル4曲など移籍後リリースのベストアルバムに収録された曲が多いのだが、シングルのカップリング曲でもあった「髪を切る日」「さみしいきもち」、そして表題曲「SELF PORTRAIT」といったこのアルバムでしか聴けない佳曲もまだまだあり、ベスト乱発後も価値を保っている作品。
 ちなみに本作の発売日は日曜日。オリコン集計1日で35万枚以上を売り上げてアルバムでは初めての首位を獲得。さらに翌週も30万枚近く売り上げ、年明けに前作に続きミリオンを達成。彼の売り上げ面でのピークはこのあたりである。


PHARMACY
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 1994年10月25日発売、5thアルバム。初回限定盤はアルバムジャケットの絆創膏が浮き上がって実物に近い触り心地(笑)仕様。シングル「2つの願い」「SPY」を収録した全12曲。「2つの願い」はヴォーカル以外を大胆にリアレンジした「VERSION II」で収録。前作に続きオリコンチャート首位を獲得している。
 悩める等身大の青年像、という雰囲気の前作から約一年、「究極のウルトラ・ポップアルバム」と銘打たれた本作は文字通りのポップスの明るさ、楽しさを教えてくれるライトな内容。「HOME WORK」「DARLING」「TWO MOONS」など、上手くいっている恋愛模様の曲が多く収録されている中で、別れ間際の情景を描いた「花水木」の切なさは一際引き立つ。王道バラード「今年の冬」、お楽しみソングの「恋はめんどくさい?」そして24歳当時の槇原自身を歌ったと思われる「東京DAYS」と、楽曲が粒揃い。期せずして次作までの時間が空くことになったが、デビューから4年、槇原敬之の王道の集大成とも言えるアルバムである。
 アルバムタイトルには「救急箱の中身のように、必要となった時にこのアルバムを開けて自分の音楽を聴いてくれればそれでいい」という思いが込められているらしい(当時のコメントより)。


ver1.0E LOVE LETTER FROM THE DIGITAL COWBOY
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 1996年7月25日発売、全曲完全英語詞による6thアルバム。全13曲収録。先行シングル「SECRET HEAVEN」「COWBOY」はアルバムバージョンで収録。初回生産盤にはステッカーが封入されていた。
 1995年はポリープの手術による休養も含めて活動を休止。年が明けてワーナー内にプライベートレーベル「River Way」を立ち上げての第1弾アルバム。この一連の英語プロジェクトではMAKIHARAと名乗り、DIGITAL COWBOY、DIGITAL COWGIRL、DATA BABY、THE DOGなどの専用CGキャラクターも生み出された。また、槇原本人もドレッドヘアにしたりヒゲを伸ばしたりと、従来像を打ち破るような格好でメディアに露出して賛否両論を巻き起こしていた。
 本作は「洋楽ヒットチャートを聴いているような音楽」を目指したとのことで、レコーディングメンバーやプロデューサーはいつもの面子ながら、ポップスを基本にしつつも、「The Lover In You」や「Limit's Of Love」など、どことなく洋楽を想起させるようなメロディーライン、アレンジの曲が多い。英詞も対訳ブックレットを見ると、彼の世界観では決して出てこないようなフレーズが出てきたりと新鮮なのだが、「情景が浮かぶ日本語の歌詞」のないこの作品を聴くことで、かえって彼の歌詞の独自性を再認識させられた1枚でもある。セールス面でも従来作と比べると成績を残せなかったのだが、「PHARMACY」で到達してしまった集大成的な空気を一度リセットするという意味で、本作は良いクッションになったのではないかと思っている。
 なお、本作は元々5月発売予定だったのだが延期されて7月になった。また翌8月、収録曲を外部の手によってリミックスした「LOVE CALLS FROM THE DIGITAL COWGIRL」というアルバムもリリースされている。


UNDERWEAR
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 1996年10月25日発売、日本語作品としてはちょうど二年ぶりのリリースとなる7thアルバム。初回限定盤は紙製三方背ボックスに、細い横長の赤いタスキが付属していた。シングル「どうしようもない僕に天使が降りてきた」を含む全12曲収録。
 キャッチコピーは「はみ出せ、青春」。そして「27歳金字塔アルバム」というコピーもあった。翌年のレコード会社移籍直後に彼自身が発言していたのだが、この作品を最後に引退する、ということも真剣に考えていたらしい。
 彼には珍しくエレキギターの音を前面に出した「男はつらいっすねぇ」から始まり、駆け落ち未遂の「PENGUIN」、復讐を歌ったその名も「revenge」、不倫を描いた「THE END OF THE WORLD」などのシリアスな作品の間に、本来の彼の王道「君の自転車」「うん」「まだ見ぬ君へ」などが挟まれている。
 サウンドメイク的な派手さは「PHARMACY」には一歩譲るが、久々の日本語詞作品ということもあってか、詞の面で更に幅と深みを増したアルバムである。サビごとに時間軸が移り変わり、ピアノ弾き語りから徐々に盛り上がっていく「LOVE LETTER」はファン人気も高い究極の片想いソング。
 青年から大人の男へと少しずつ成長していく過程を感じさせる作品。個人的には初期ワーナー全7作のオリジナルアルバムで一番気に入っているのは本作である。


 …以上、第1期ワーナー時代のオリジナルアルバム全7作のレビューでした。なお、「UNDERWEAR」から約一ヶ月後、「史上最低の宴会ソング」と銘打たれた(笑)シングル「まだ生きてるよ」をリリースして、槇原はレコード会社をソニー・ミュージックエンタテインメントに移籍しています。
 ちなみにこの「EARLY 7 ALBUMS」、ボックス自体は通販限定ですが、11月7日にバラ売りで発売されるそうです。その際に第2期ワーナー時代(2000〜2002年)のアルバム「太陽」「Home Sweet Home」「本日ハ晴天ナリ」の3枚も併せてリマスターされて再発されるとのこと。ボックスを買うかバラ売りを1枚ずつ集めるか…と、頭を悩ませている今日この頃です(笑)。
 さて、まったく個人的な話なのですが、「どんなときも。」で彼を知った1991年当時の筆者は中学1年生。そして「UNDERWEAR」をリリースした1996年当時の筆者は高校3年生。今振り返るに、中学〜高校という最も多感な時期にリアルタイムで最も聴きたおし、いつも生活の傍らにあったのは彼の音楽でした。このレビューを書いているうちにどんどん当時の思い出が甦ってきて、甘酸っぱい気持ちにさせられたことをここに告白し(苦笑)、今回の「CD Review Extra」を締めさせていただきます。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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