MORITAKASINGLES 2012年8月8日発売、森高千里がリリースしてきたシングルのA面曲を完全収録したCD3枚組45曲収録のコンプリート・シングルコレクション。初回生産限定仕様版は三方背ケースのパッケージに入ったデジパック仕様に、48ページのフォトブックレットが付属。

 今年でデビュー25周年を迎える森高千里ですが、オリジナル作品をリリースしていたのは1999年まで。ということで本作もデビューの1987年から1999年までの実質12年間のシングル作品が時系列に並んでいます。さすがにデビュー当初の曲までは聴いていませんでしたが、個人的にJ-POPを愛聴していた筆者の90年代と彼女の活動全盛期は見事にマッチしておりまして(笑)、新曲が出る度にチェックしていたことを思い出します。

 さて、本作は3枚組なのですが、上手い具合に活動のスタンスを3期に区切って3枚のディスクに結果的に分割できたなぁ、といった感じ。DISC1はデビュー当時の80年代汎用アイドルポップ路線から、森高本人が歌詞を手がけるようになった「ザ・ミーハー」を皮切りに「ザ・ストレス」「臭いものにはフタをしろ!」「勉強の歌」など、デジタルポップなサウンドに個性的な歌詞世界が乗っかる独自性が確立されるまで。DISC2は「私がオバさんになっても」あたりから、アイドルファン以外の一般リスナー層にも彼女への認識が広がっていき、「私の夏」「気分爽快」といったポップな作品の合間に、「渡良瀬橋」「風に吹かれて」「夏の日」といったアーティスティックな路線の曲も顔を出し始め、アイドルからアーティストへと活動イメージを徐々にシフトできた時期。DISC3になると作風にも円熟味が増して、ポピュラリティーが強くなる一方、強烈なインパクトを持つ曲は少なくなってやや落ち着いた感もあるのですが、「ジン ジン ジングルベル」「ララ サンシャイン」「Let's Go!」「SNOW AGAIN」など、楽曲を聴くと当時タイアップされていたテレビ番組やCMなどが浮かぶ、記憶に残る楽曲がチラホラ。一番安定感があるのはこの時期の楽曲達でしょう。余談ですが、実質的な(現時点での)ラストシングル「一度遊びに来てよ'99」は歌詞を読むとこれがラスト、というのが意味深な内容ではあるかな、と邪推してしまうのですが…^^;。

 活動休止後も何枚かベストアルバムはリリースされている彼女ですが、全キャリアを総括した本作はまさしく待望の作品で、こういうアイテムが出ることを10年ぐらい待っていた身としましては(笑)大変嬉しいです。2000年代にはオリジナルのリリース活動がないこともあり、現役感が薄いことは否めず、筆者のようなリアルタイム世代が一番の購入ターゲットなのかもしれませんが、あまりに唯一無二すぎてフォロワーが存在しないという彼女の作品、若いリスナーの方々にも是非聴いてみてもらいたいものです。
 ちなみに初回のフォトブックレットは当時未発表のCDシングルジャケット写真がメイン。せっかくの公式ベストなんだから、森高本人のライナーノーツもあればなぁ…と思ってしまったのが本作への唯一の不満点です(笑)。