2012年5月23日発売、またまた出ました(笑)TM NETWORKの新たなベストアルバム。今回はBlu-spec CD仕様の3枚組で、デビューからTMN「終了」までのEPIC/SONYでの10年間、そして再結成した1999年にTRUE KiSS DiSCからリリースされたシングル曲とカップリング曲を収録(一部除く)した、いわゆるソニー系列レコード会社在籍時代のコンピレーション。以前に本ブログで全ベストアルバムレビューを行った時に、「30周年の時にまたベストが出るかも…」といったようなことを書いたのですが、実際はそれより2年早い28周年でリリースされてしまいました^^;。…というわけでもう何作目になるベストを普通にレビューするのも何だかな、ということで、今回は「CD Review Extra」として、収録曲44曲の全曲レビューを行いたいと思います。といってもかなり膨大な量になりますので、収録ディスク毎に分けての更新予定です。まず今回はDISC1、1984年から1987年途中までの楽曲を時系列順に収めた全16曲のレビュー。「続きを読む」からご閲覧ください。
TM NETWORK「ORIGINAL SINGLES 1984-1999」全曲レビュー・DISC1編
※文中敬称略。作曲は表記のない場合は小室哲哉。編曲は全曲小室哲哉。
1.1974(16光年の訪問者)
1984年7月21日発売、2ndシングル。
いきなり1曲目が2ndシングルなのは、作品の完成順に収録したから、という理由らしい。フレッシュサウンドコンテストで優勝を果たし、デビューへの足掛かりとなったTMを語るに欠かせない曲のひとつ。
作詞は西門加里(後の小室みつ子の別名義)。宇宙人との邂逅をモチーフにした、初期TMならではのファンタジックな歌詞が特徴。なお、初出はデビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」であり、この曲はそのアルバムからのシングルカット。それに際して曲の冒頭の長いSE部分をカットしたり、曲中にピアノの音を追加したり、音の位置を変更するミックスを行ったり、宇都宮隆のヴォーカルを録り直したりと、かなりの手直しを行っている。その甲斐あってか、アルバム収録バージョンよりも曲の完成度はかなり高い。
なぜか北海道地区のヒットチャートで上位にランキングされたらしい。小室哲哉がコンテを書いたPVも制作されたが、今見るとかなり恥ずかしいものがある(苦笑)。
2.パノラマジック(アストロノーツの悲劇)
「1974」カップリング曲。木根尚登作曲。
こちらもデビューアルバムからのリカットだが、表題曲とは異なりミックス変更などは行っていない模様。濫発されるTMのベストアルバムの中でも珍しく、本作でベストアルバム初収録。
作詞は後にジャーナリストに転向した麻生香太郎。サブタイトル通り悲劇的な内容の詞で、宇宙船が壊れて地球に帰還できなくなった宇宙飛行士二人(カップル?)が登場する。言葉選びが難解なせいか、筆者がこの曲を初めて聴いた小学校当時はまったく意味が理解できなかった(笑)。
デビュー当初のTMの代名詞であった、シンセサイザーミュージック+SFモチーフの歌詞設定の王道的作品。
3.金曜日のライオン(Take it to the lucky)
1984年4月21日発売、デビューシングル。
記念すべきTMのデビュー作は小室が作詞を担当。アフリカを舞台に、現地の娘と他国からやってきた主人公との出会いと別れを描いたラブソング。象やオアシスやモスクなどが早口で出てきてアフリカの雰囲気を散りばめつつ、勢いのあるメロディーが鮮やか。当時はまったく売れなかったそうだが、リスナーに与えるインパクトはなかなかのものだと思う。インパクトといえば、PVもワニのマスクを被った少女が出てきて小室と逃避行(?)したりと、強烈な印象を残す問題作なのだが、終了時の映像作品集「DECADE」や、20周年時にリリースされたPV集「All the Clips」にもバッチリ収録されているので、黒歴史扱いではないらしい(笑)。
ちなみ同発のデビューアルバムにも収録されているが、アルバムのほうがイントロが長いなど、細部が異なる別バージョンである。
4.クロコダイル・ラップ(Get Away)
「金曜日のライオン」カップリング曲。同発のデビューアルバムにも収録。ベスト盤には今回が初収録。
ハネたビートが特徴のナンバーで、タイトル通りラップも登場するが基本的には歌メロ+間奏やアウトロにラップ、といった体裁。当時としては斬新な構成だったらしい。タイトルにある「クロコダイル」はまったく曲中に出てこないのが謎である。
5.アクシデント
1985年5月22日発売、3rdシングル。
既に安全地帯への歌詞提供などで実績を残していた松井五郎が作詞を担当。前2作のシングルとは違って現実的な内容のラブソングである。翌月発売された2ndアルバム「CHILDHOOD'S END」も、前作のファンタジック路線から一転、リアリティを重視した詞の内容が目立つアルバムであり、本作はその先行シングルに相応しい内容。なお、アルバムに収録されたバージョンとは曲のサイズが若干異なる。特段ヒットしたわけでもないが、レコード会社主導のベストアルバムには割と収録される機会が多い。
暗い森の中でレーザー光線をバックにメンバー三人が演奏をするPVは、初期の作品の中ではそれなりに観られる内容。
6.FANTASTIC VISION
「アクシデント」カップリング曲で、2ndアルバムにも収録された。
作詞は小室哲哉。明確なブライダルソングはTM史上唯一かも。結婚式のパレード(?)を描いた作品ということもあり、冒頭で人のざわめきが聞こえたり、曲中でカメラのシャッター音が鳴り響いたりと、なかなかに賑やかな、そして幸福感を感じさせる曲。個人的には小室の「PARADE!」等のコーラスがツボである(笑)。
なお、この曲のインストバージョンは長い間福岡の天気予報番組で流れていたらしい。そんな話を聞いていたので、この曲を聴くたびに福岡のイメージが浮かぶ。
7.DRAGON THE FESTIVAL(ZOO MIX)
1985年7月21日発売、4thシングル。
TM初の12インチシングル(LPと同じ大きさでEPよりも収録可能時間が長い)。2ndアルバム「CHILDHOOD'S END」からのリカットシングルだが、曲の構成、アレンジを大胆に変更。原曲にあった軽やかなパーカッシブな音をカットし、重厚にリバーブを重ねたバンドアレンジに変更になっている。ドラを鳴らしたりサンプリング音源をふんだんに盛り込んだりと、かなり実験的な試みがなされた作品。トータル演奏時間は7分を超える。
作詞は小室哲哉。アマゾンの秘境を目指す旅人を歌った曲。なんと作品世界の導入を担当している1番Aメロのパートをカットして歌はBメロから始まるため、いきなり起承転結の「承」あたりから物語が始まるように聴こえてしまうのがややマイナスポイントか。
雄大なテーマにも関わらず、PVでは演奏シーンの合間に農村で佇むメンバーや、木根が耕運機を運転するシーンなどが挿入されるなどという、TMのPVの中で歴代ナンバー1の珍作である(苦笑)。
8.YOUR SONG(“D” MIX)
1985年11月1日発売、5thシングル。
OVA「吸血鬼ハンターD」の主題歌。作詞は小室哲哉、作曲はシングルA面では唯一の小室哲哉・木根尚登共同作品。
前作に引き続き12インチシングルでリリースされた。やはり全体的に実験色が濃く、間奏でベートーベンの「第九」をサンプリングしたフレーズが大々的に挿入されたりとやりたい放題。曲自体はSFファンタジー路線が復活。なお、「“D” MIX」とあるが、この後に発売されたミニアルバム「TWINKLE NIGHT」には本作を短くエディットした「TWINKLE MIX」が収録されており、オリジナルバージョン表記の作品は存在していない。
9.Come on Let's Dance(This is the FANKS DYNA-MIX)
1986年4月21日発売、6thシングル。
この年にTMが提唱したキーワード「FANKS」(FUNK+PUNK+FANS)路線の旗印的な楽曲。要するに生音中心に構成されるダンスビート路線への転換に舵を切った第1弾作品。作詞は神沢礼江が担当で、シリアスなメッセージソングである。本作も12インチシングルでのリリースであったが、この曲は前二作と異なり実験的なテイストは影を潜め、ヒット狙いの直球勝負で作られたのか演奏時間は約5分。無理のないメロディーラインと無駄のない楽曲構成で、初期TMの代表曲のひとつ。個人的には歌が終わった後の約1分間、フェードアウトギリギリまで展開されるサックスソロが好きである。
宇都宮隆がディスコで歌ったり、路上で雨の中女性と抱き合ったりするPVは完成度が高い。ちなみに3rdアルバム「GORILLA」にはイントロやアウトロを短くしたオリジナルバージョンが収録。
10.You Can Dance
「Come on Let's Dance」カップリング曲。3rdアルバムにも原曲のまま収録。
この曲も表題曲同様「FANKS」のコンセプトを実践した踊れる楽曲。テンションは「Come on〜」よりもさらに高く、生のホーンがヴォーカルと同じぐらい主張している勢いのある作品である。作詞は西門加里。
1994年のTMN「終了」の東京ドームライブ2daysの2日目に、楽曲リリース当時のサポートメンバーであるB'zの松本孝弘がゲストで登場し、この曲でエレキギターを引き倒してファンを狂喜させた…のだが、DVDにはこの曲は収録されたものの、ビーイングの許可が下りなかったのか、松本の姿はすべて映らないカメラアングルで構成されているのが残念であった。
11.GIRL
1986年8月27日発売、7thシングル。
通常の7インチシングルに戻ってのリリース。3rdアルバム「GORILLA」よりシングルカットされた。
「FANKS」路線の中では特にインパクトのない普通のミディアムバラードである。作詞は神沢礼江。サビの「Girl I Love you」のフレーズがすべてを物語るラブバラード。宇都宮隆のお気に入り曲だったらしい。
12.雨に誓って〜SAINT RAIN〜
「GIRL」カップリング曲。
表題曲と同じく3rdアルバムからのシングルカット。作詞は西門加里、作曲は小室哲哉と木根尚登の共作。いきなりイントロで掛け声がかかる辺りは強烈な印象を残すが、曲自体は歌謡曲っぽさが残り、「GORILLA」の中では多少世界観が浮いている曲だと思う。
ファンの間では隠れた人気があるようで、デビュー20周年記念のファン投票ベスト「Welcome to the Fanks!」では投票第18位で収録。また、EPIC/SONY25周年の企画ベスト「THE LEGENDS」でも収録されている。
13.All-Right All-Night (No Tears No Blood)
1986年11月21日発売、8thシングル。
作詞は今作より西門加里名義から本名に変更した小室みつ子が担当。TM屈指の早口ソングで、サブタイトルが表す通り反戦的なフレーズが入ったメッセージソング。「GORILLA」の「FANKS」路線を更に推し進めたホーンセクションと生バンドの攻撃的な絡みが特徴。翌年の4thアルバム「Self Control」にも収録されたが、イントロや間奏を少し長くしたアルバムバージョンになっている。
ちなみにこの曲はTMが一夜限りの野外ライブを開催した時に初披露された曲であり、PVはその時のライブ映像を中心とした構成になっている…が、ライブの後で歌詞が変わったらしく、PV本編では宇都宮隆が歌唱しているシーンがほとんど見られない^^;。
14.Self Control(方舟に曳かれて)
1987年2月1日発売、9thシングル。
イントロのリフとサビが同じで覚えやすく、小室みつ子の作詞による自我を促すメッセージも、難解さを排除した分かりやすい楽曲のオケと非常にマッチしているなど、ヒット曲の雛型のような作品。「FANKS」路線を経て作風、ビジュアル、PV等が完全に垢抜け始めた時期であり、続く「Get Wild」でのブレイクに繋がっていく足掛かりを作った曲で、現在でもTMの代表曲とされる。なお、サビで「Self Control」を連呼しているのは木根のサンプリングボイス。
4thアルバム「Self Control」には最後で曲がフェードアウトしないアルバムバージョンで収められた。また、11thシングル「KISS YOU」のカップリングとして、初の武道館公演で演奏されたライブバージョンが収録。
15.Get Wild
1987年4月8日発売、10thシングル。
アニメ「シティーハンター」エンディングテーマ。この曲をきっかけにTMの知名度が急上昇し、オリコンチャートで初めてのトップ10入り。その後もロングセラーを記録してブレイクを果たすことになる。売上げ的には後年リリースの作品には及ばないものの、TMの中でも世間的に最も有名な曲。そのせいか、バージョン違いの多いTM楽曲の中でもリミックス、リプロダクション等膨大な数のバリエーションが音源として残っている。
作詞は小室みつ子。「シティーハンター」のハードボイルドな一面を意識して書かれたかのような歌詞が、エンディングテーマとして非常にマッチしていた。なお、曲中では一切スネアドラムを使っておらず、リフはすべてタムでレコーディングされているという実験的なアレンジが試みられている。
PVは香港で撮影されたのだが、終始メンバーが市内を散策している映像で、あまり面白みはない。
16.Fighting(君のファイティング)
「Get Wild」カップリング曲。4thアルバム「Self Control」からのシングルカット。
表題曲のハードなイメージに合わせてか、4thアルバムの中でもテーマ的にもサウンド的にも最もシリアスで重たい曲がリカットされた。作詞は小室みつ子。
「シティーハンター」の挿入歌として流されたらしい。筆者は全話視聴したにもかかわらず、どこで流されたのかがイマイチ思い出せない。このアニメは挿入歌の種類が結構あったのが原因かもしれない。ご存知の方は是非教えて欲しい。
…以上、DISC1全16曲のレビューでした。
1984年のデビューから、音楽性の変遷を経て「FANKS」路線へ向かったのをきっかけに注目度を徐々に上げていき、1987年に「Get Wild」でついにブレイクを果たした約3年間は、試行錯誤を積み重ねながらTMサウンドを確立していった時期だと思います。デビュー初期からの作品を改めて順番に聴くと、その変遷がよく分かりました。ちなみにこのDISC1の「Get Wild」後に初のベストアルバム「Gift for Fanks」がリリースされ、TM人気は次なる盛り上がりを見せるわけです。
次回の「CD Review Extra」ではDISC2に収録された、1987年末〜1990年途中までの全シングルのレビューを行う予定です。さすがに三週続けて全曲レビューだと結構キツいので(笑)、次回のレビューまでには少々時間を空けて、その間に通常の「CD Review」を行うという体裁になると思います。よろしければまたお付き合い下さい。
※文中敬称略。作曲は表記のない場合は小室哲哉。編曲は全曲小室哲哉。
1.1974(16光年の訪問者)
1984年7月21日発売、2ndシングル。
いきなり1曲目が2ndシングルなのは、作品の完成順に収録したから、という理由らしい。フレッシュサウンドコンテストで優勝を果たし、デビューへの足掛かりとなったTMを語るに欠かせない曲のひとつ。
作詞は西門加里(後の小室みつ子の別名義)。宇宙人との邂逅をモチーフにした、初期TMならではのファンタジックな歌詞が特徴。なお、初出はデビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」であり、この曲はそのアルバムからのシングルカット。それに際して曲の冒頭の長いSE部分をカットしたり、曲中にピアノの音を追加したり、音の位置を変更するミックスを行ったり、宇都宮隆のヴォーカルを録り直したりと、かなりの手直しを行っている。その甲斐あってか、アルバム収録バージョンよりも曲の完成度はかなり高い。
なぜか北海道地区のヒットチャートで上位にランキングされたらしい。小室哲哉がコンテを書いたPVも制作されたが、今見るとかなり恥ずかしいものがある(苦笑)。
2.パノラマジック(アストロノーツの悲劇)
「1974」カップリング曲。木根尚登作曲。
こちらもデビューアルバムからのリカットだが、表題曲とは異なりミックス変更などは行っていない模様。濫発されるTMのベストアルバムの中でも珍しく、本作でベストアルバム初収録。
作詞は後にジャーナリストに転向した麻生香太郎。サブタイトル通り悲劇的な内容の詞で、宇宙船が壊れて地球に帰還できなくなった宇宙飛行士二人(カップル?)が登場する。言葉選びが難解なせいか、筆者がこの曲を初めて聴いた小学校当時はまったく意味が理解できなかった(笑)。
デビュー当初のTMの代名詞であった、シンセサイザーミュージック+SFモチーフの歌詞設定の王道的作品。
3.金曜日のライオン(Take it to the lucky)
1984年4月21日発売、デビューシングル。
記念すべきTMのデビュー作は小室が作詞を担当。アフリカを舞台に、現地の娘と他国からやってきた主人公との出会いと別れを描いたラブソング。象やオアシスやモスクなどが早口で出てきてアフリカの雰囲気を散りばめつつ、勢いのあるメロディーが鮮やか。当時はまったく売れなかったそうだが、リスナーに与えるインパクトはなかなかのものだと思う。インパクトといえば、PVもワニのマスクを被った少女が出てきて小室と逃避行(?)したりと、強烈な印象を残す問題作なのだが、終了時の映像作品集「DECADE」や、20周年時にリリースされたPV集「All the Clips」にもバッチリ収録されているので、黒歴史扱いではないらしい(笑)。
ちなみ同発のデビューアルバムにも収録されているが、アルバムのほうがイントロが長いなど、細部が異なる別バージョンである。
4.クロコダイル・ラップ(Get Away)
「金曜日のライオン」カップリング曲。同発のデビューアルバムにも収録。ベスト盤には今回が初収録。
ハネたビートが特徴のナンバーで、タイトル通りラップも登場するが基本的には歌メロ+間奏やアウトロにラップ、といった体裁。当時としては斬新な構成だったらしい。タイトルにある「クロコダイル」はまったく曲中に出てこないのが謎である。
5.アクシデント
1985年5月22日発売、3rdシングル。
既に安全地帯への歌詞提供などで実績を残していた松井五郎が作詞を担当。前2作のシングルとは違って現実的な内容のラブソングである。翌月発売された2ndアルバム「CHILDHOOD'S END」も、前作のファンタジック路線から一転、リアリティを重視した詞の内容が目立つアルバムであり、本作はその先行シングルに相応しい内容。なお、アルバムに収録されたバージョンとは曲のサイズが若干異なる。特段ヒットしたわけでもないが、レコード会社主導のベストアルバムには割と収録される機会が多い。
暗い森の中でレーザー光線をバックにメンバー三人が演奏をするPVは、初期の作品の中ではそれなりに観られる内容。
6.FANTASTIC VISION
「アクシデント」カップリング曲で、2ndアルバムにも収録された。
作詞は小室哲哉。明確なブライダルソングはTM史上唯一かも。結婚式のパレード(?)を描いた作品ということもあり、冒頭で人のざわめきが聞こえたり、曲中でカメラのシャッター音が鳴り響いたりと、なかなかに賑やかな、そして幸福感を感じさせる曲。個人的には小室の「PARADE!」等のコーラスがツボである(笑)。
なお、この曲のインストバージョンは長い間福岡の天気予報番組で流れていたらしい。そんな話を聞いていたので、この曲を聴くたびに福岡のイメージが浮かぶ。
7.DRAGON THE FESTIVAL(ZOO MIX)
1985年7月21日発売、4thシングル。
TM初の12インチシングル(LPと同じ大きさでEPよりも収録可能時間が長い)。2ndアルバム「CHILDHOOD'S END」からのリカットシングルだが、曲の構成、アレンジを大胆に変更。原曲にあった軽やかなパーカッシブな音をカットし、重厚にリバーブを重ねたバンドアレンジに変更になっている。ドラを鳴らしたりサンプリング音源をふんだんに盛り込んだりと、かなり実験的な試みがなされた作品。トータル演奏時間は7分を超える。
作詞は小室哲哉。アマゾンの秘境を目指す旅人を歌った曲。なんと作品世界の導入を担当している1番Aメロのパートをカットして歌はBメロから始まるため、いきなり起承転結の「承」あたりから物語が始まるように聴こえてしまうのがややマイナスポイントか。
雄大なテーマにも関わらず、PVでは演奏シーンの合間に農村で佇むメンバーや、木根が耕運機を運転するシーンなどが挿入されるなどという、TMのPVの中で歴代ナンバー1の珍作である(苦笑)。
8.YOUR SONG(“D” MIX)
1985年11月1日発売、5thシングル。
OVA「吸血鬼ハンターD」の主題歌。作詞は小室哲哉、作曲はシングルA面では唯一の小室哲哉・木根尚登共同作品。
前作に引き続き12インチシングルでリリースされた。やはり全体的に実験色が濃く、間奏でベートーベンの「第九」をサンプリングしたフレーズが大々的に挿入されたりとやりたい放題。曲自体はSFファンタジー路線が復活。なお、「“D” MIX」とあるが、この後に発売されたミニアルバム「TWINKLE NIGHT」には本作を短くエディットした「TWINKLE MIX」が収録されており、オリジナルバージョン表記の作品は存在していない。
9.Come on Let's Dance(This is the FANKS DYNA-MIX)
1986年4月21日発売、6thシングル。
この年にTMが提唱したキーワード「FANKS」(FUNK+PUNK+FANS)路線の旗印的な楽曲。要するに生音中心に構成されるダンスビート路線への転換に舵を切った第1弾作品。作詞は神沢礼江が担当で、シリアスなメッセージソングである。本作も12インチシングルでのリリースであったが、この曲は前二作と異なり実験的なテイストは影を潜め、ヒット狙いの直球勝負で作られたのか演奏時間は約5分。無理のないメロディーラインと無駄のない楽曲構成で、初期TMの代表曲のひとつ。個人的には歌が終わった後の約1分間、フェードアウトギリギリまで展開されるサックスソロが好きである。
宇都宮隆がディスコで歌ったり、路上で雨の中女性と抱き合ったりするPVは完成度が高い。ちなみに3rdアルバム「GORILLA」にはイントロやアウトロを短くしたオリジナルバージョンが収録。
10.You Can Dance
「Come on Let's Dance」カップリング曲。3rdアルバムにも原曲のまま収録。
この曲も表題曲同様「FANKS」のコンセプトを実践した踊れる楽曲。テンションは「Come on〜」よりもさらに高く、生のホーンがヴォーカルと同じぐらい主張している勢いのある作品である。作詞は西門加里。
1994年のTMN「終了」の東京ドームライブ2daysの2日目に、楽曲リリース当時のサポートメンバーであるB'zの松本孝弘がゲストで登場し、この曲でエレキギターを引き倒してファンを狂喜させた…のだが、DVDにはこの曲は収録されたものの、ビーイングの許可が下りなかったのか、松本の姿はすべて映らないカメラアングルで構成されているのが残念であった。
11.GIRL
1986年8月27日発売、7thシングル。
通常の7インチシングルに戻ってのリリース。3rdアルバム「GORILLA」よりシングルカットされた。
「FANKS」路線の中では特にインパクトのない普通のミディアムバラードである。作詞は神沢礼江。サビの「Girl I Love you」のフレーズがすべてを物語るラブバラード。宇都宮隆のお気に入り曲だったらしい。
12.雨に誓って〜SAINT RAIN〜
「GIRL」カップリング曲。
表題曲と同じく3rdアルバムからのシングルカット。作詞は西門加里、作曲は小室哲哉と木根尚登の共作。いきなりイントロで掛け声がかかる辺りは強烈な印象を残すが、曲自体は歌謡曲っぽさが残り、「GORILLA」の中では多少世界観が浮いている曲だと思う。
ファンの間では隠れた人気があるようで、デビュー20周年記念のファン投票ベスト「Welcome to the Fanks!」では投票第18位で収録。また、EPIC/SONY25周年の企画ベスト「THE LEGENDS」でも収録されている。
13.All-Right All-Night (No Tears No Blood)
1986年11月21日発売、8thシングル。
作詞は今作より西門加里名義から本名に変更した小室みつ子が担当。TM屈指の早口ソングで、サブタイトルが表す通り反戦的なフレーズが入ったメッセージソング。「GORILLA」の「FANKS」路線を更に推し進めたホーンセクションと生バンドの攻撃的な絡みが特徴。翌年の4thアルバム「Self Control」にも収録されたが、イントロや間奏を少し長くしたアルバムバージョンになっている。
ちなみにこの曲はTMが一夜限りの野外ライブを開催した時に初披露された曲であり、PVはその時のライブ映像を中心とした構成になっている…が、ライブの後で歌詞が変わったらしく、PV本編では宇都宮隆が歌唱しているシーンがほとんど見られない^^;。
14.Self Control(方舟に曳かれて)
1987年2月1日発売、9thシングル。
イントロのリフとサビが同じで覚えやすく、小室みつ子の作詞による自我を促すメッセージも、難解さを排除した分かりやすい楽曲のオケと非常にマッチしているなど、ヒット曲の雛型のような作品。「FANKS」路線を経て作風、ビジュアル、PV等が完全に垢抜け始めた時期であり、続く「Get Wild」でのブレイクに繋がっていく足掛かりを作った曲で、現在でもTMの代表曲とされる。なお、サビで「Self Control」を連呼しているのは木根のサンプリングボイス。
4thアルバム「Self Control」には最後で曲がフェードアウトしないアルバムバージョンで収められた。また、11thシングル「KISS YOU」のカップリングとして、初の武道館公演で演奏されたライブバージョンが収録。
15.Get Wild
1987年4月8日発売、10thシングル。
アニメ「シティーハンター」エンディングテーマ。この曲をきっかけにTMの知名度が急上昇し、オリコンチャートで初めてのトップ10入り。その後もロングセラーを記録してブレイクを果たすことになる。売上げ的には後年リリースの作品には及ばないものの、TMの中でも世間的に最も有名な曲。そのせいか、バージョン違いの多いTM楽曲の中でもリミックス、リプロダクション等膨大な数のバリエーションが音源として残っている。
作詞は小室みつ子。「シティーハンター」のハードボイルドな一面を意識して書かれたかのような歌詞が、エンディングテーマとして非常にマッチしていた。なお、曲中では一切スネアドラムを使っておらず、リフはすべてタムでレコーディングされているという実験的なアレンジが試みられている。
PVは香港で撮影されたのだが、終始メンバーが市内を散策している映像で、あまり面白みはない。
16.Fighting(君のファイティング)
「Get Wild」カップリング曲。4thアルバム「Self Control」からのシングルカット。
表題曲のハードなイメージに合わせてか、4thアルバムの中でもテーマ的にもサウンド的にも最もシリアスで重たい曲がリカットされた。作詞は小室みつ子。
「シティーハンター」の挿入歌として流されたらしい。筆者は全話視聴したにもかかわらず、どこで流されたのかがイマイチ思い出せない。このアニメは挿入歌の種類が結構あったのが原因かもしれない。ご存知の方は是非教えて欲しい。
…以上、DISC1全16曲のレビューでした。
1984年のデビューから、音楽性の変遷を経て「FANKS」路線へ向かったのをきっかけに注目度を徐々に上げていき、1987年に「Get Wild」でついにブレイクを果たした約3年間は、試行錯誤を積み重ねながらTMサウンドを確立していった時期だと思います。デビュー初期からの作品を改めて順番に聴くと、その変遷がよく分かりました。ちなみにこのDISC1の「Get Wild」後に初のベストアルバム「Gift for Fanks」がリリースされ、TM人気は次なる盛り上がりを見せるわけです。
次回の「CD Review Extra」ではDISC2に収録された、1987年末〜1990年途中までの全シングルのレビューを行う予定です。さすがに三週続けて全曲レビューだと結構キツいので(笑)、次回のレビューまでには少々時間を空けて、その間に通常の「CD Review」を行うという体裁になると思います。よろしければまたお付き合い下さい。
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