
「Mr.Children 2001-2005<mirco>」全曲レビュー
※文中敬称略。全作詞・作曲:桜井和寿。編曲:小林武史&Mr.Children。
1.優しい歌
2001年8月22日発売、20thシングル。アサヒ「WONDA」CMソング。
7月にデビューから10年間の活動を総括したベストアルバムを発売後、仕切り直しの1枚目。全体的に短めのメロディー、あっさりとしたバンドサウンド、サビの頭にタイトルの歌詞が入っている…等々、1998〜2000年あたりのミスチルの混沌とした作風から開放された、実にシンプルな楽曲。シンプル過ぎて正直あまり印象に残らなかったりもするのだが(おい)、新たなスタートを切る曲としては最適な作品だと思う。原点回帰を意識したのか、彼らのPVとしては珍しくエキストラな役者は登場せず、メンバー四人のみが出演している。
2.youthful days
2001年11月7日発売、21stシングル。ドラマ「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」主題歌。
タイトル通り若々しい躍動感を歌詞、メロディー、アレンジから感じさせる爽快なアップテンポナンバー。この手のシングル曲は意外とありそうでなく、「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」以来かも。中毒性のあるポップなメロディーが好みである。ラブソングだが、歌詞に「腐敗のムード」とか出てくるあたりは桜井ならではのセンスか。PVでは桜井が自分の首を抱えて歌っていたり、両腕を長く伸ばしたりするなどの謎の演出があり、かなりシュールな映像が展開される。
3.君が好き
2002年1月1日発売、22ndシングル。ドラマ「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」挿入歌。
ドラマの挿入歌であったがドラマ終了後の年明けにリリースされた。久々のバラードだが「優しい歌」に通じるシンプルな歌詞とメロディーで、シングル曲としては少し弱い気がする。楽曲に反して、超能力者っぽい桜井の手引きで(?)人体研究所みたいなところから少女と共に脱出するスキンヘッドの窪塚洋介が登場するPVはインパクト大。曲と全然関係ないような気がするが…(苦笑)。
4.蘇生
2002年5月10日発売の10thアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」収録曲。アサヒ「WONDA」CMソング。
アルバムのタイトルチューンで、前向きで力強く、地に足の付いたメッセージを発信した一曲。これ以前は「DISCOVERY」や「Q」など、何かを探して彷徨っている苦悩を感じるアルバムが続いていたが、そんな時期を乗り越えて新たに辿り着いた新境地、とも思える本アルバムを象徴する曲となった。
アルバムでは1曲目のインスト「overture」からシームレスで始まっているバージョンでの収録だったが、本ベストに収録されるにあたって、ギターから始まるバージョンにエディットされた。
5.Drawing
21stシングル「youthful days」のカップリング曲。後にドラマ「幸福の王子」の主題歌のタイアップが付いた。
タイトル通り「絵」をモチーフにした暖かいバラード。シンプルだが体温を感じるアコギ+打ち込みサウンドから始まり、最後はバンドが入ってきて盛り上がる。この時期のミスチルの代表曲!というわけではないと思うが、地味ながら良い曲だと思う。あまりカップリングを積極的にアルバムに入れないタイプのミスチルにしては珍しく、アルバム「IT'S A〜」にオリジナルのまま収録されている。
6.いつでも微笑みを
10thアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」収録曲。
「IT'S A〜」には従来のミスチルのバンドサウンドに加えて、明るめのキーボードの音色が目立つ曲がチラホラあるのだが、この曲はその中のひとつ。歌詞は結構シリアスなのだが、明るめのサウンドとポップなメロディーがそれを上手く中和していて、聴きやすい。
アルバムではクライマックスの「優しい歌」の前に配置されたせいか、オーラス前の小品的な曲、といった印象を長い間持っていたので、数年後にCMソングのタイアップが付いて、お茶の間に流れた時には驚いた。ちなみに31stシングル「旅立ちの唄」のカップリングにライブバージョンが収録。
7.Any
2002年7月10日発売、23rdシングル。NTTドコモCMソング。
発売前からドラマチックに盛り上がるサビのメロディーがCMで大量にオンエアされており、このサビだけ知っているという一般リスナーも多いのでは。ただ、盛り上がるのはサビの部分だけで、AメロBメロはやけにシンプル…というか、別の曲のメロディーをサビに繋がるようにくっつけたような無理やり感が漂うのが気になった。楽曲展開的には疑問が残るのだが、歌詞の世界観は好きな曲。
なお、このシングル発売直後、桜井が小脳梗塞で倒れ、全国ツアーが全公演キャンセルとなった。この曲を聴くと未だにそのニュースを思い出す。
8.HERO
2002年12月11日発売、24thシングル。NTTドコモCMソング。
タイトルは大上段だが、父親の目線から子供に向けられたミニマムで暖かいメッセージソングである。PVは全編クレイアニメーションで、シングルのジャケットの男性が主人公。
病に倒れた桜井の回復後初のシングルだったが、病気明けということもあってか本人達によるプロモーション活動はほとんど行われなかった記憶がある。
9.タガタメ
2004年4月7日発売の11thアルバム「シフクノオト」収録曲。
ミスチルの作品はほぼ全曲桜井が手がけているのだが、彼の精神状態によって生み出される作風がかなり異なるのが特徴だと思う。本作も当時の桜井の周辺の状況が反映されているような気がする。社会性の濃いテーマのシリアスで重い曲。「シフク〜」ではこの後に「HERO」が控えており、桜井の「公」の主張であると思われるこの曲が終わった直後に「私」の主張であると思われる「HERO」が始まるあたりが鮮やかな対比だった。本ベストでは楽曲完成順に並べ直したのか、曲順が逆になっている。
ちなみに原曲は「タダダキアッテ」という意外にも軽快なテンポの曲で、33rdシングル「HANABI」のカップリングとして収録。
10.掌
2003年11月19日発売、25thシングル「掌/くるみ」の1曲目。
初の両A面シングル。近くにいても分かり合えないもどかしさ、人とは個体と個体同士であることを再確認した上で「ひとつにならなくていいよ/認め合うことができればさ」と語りかける、久々の葛藤系(?)な歌詞。それに合わせてか演奏も激しめなロックサウンドなのだが、同じく悶々としているテーマでも「深海」や「BOLERO」の頃に比べるとどこか救いがある気がするのは、紆余曲折を経たバンド活動の結果かも。
PVは桜井が身体から泥を流すという不気味でインパクトの強い作品で、正直あまり繰り返して観たくない(苦笑)。
11.くるみ
25thシングル「掌/くるみ」の2曲目。
前述の「掌」と両A面でリリースされたシングル。後に29thシングル「しるし」のカップリングに別バージョンが収録された。
「掌」とは対照的に穏やかなバンドサウンドが特徴のミディアム。昔なじみの四人組の中年男性が「Mr.ADULTS」というバンドを結成して色々な場所で細々と演奏を続けるPVは、数あるミスチル映像作品の中でも異色だが特筆の出来。ちなみにラストシーンでは1989年、Mr.Children結成前日(という設定)の桜井も登場する。
余談であるが、筆者は本作リリースの翌年のツアー「TOUR 2004 シフクノオト」の日産スタジアムに参加。ミスチルのライブに足を運べたのはこの時だけで、この曲も演奏されたが、その時のお客さんの手拍子がドラムのキックに合わせて「パン・パパン♪」だったのに軽い衝撃を覚えた。どうでもいい話である(笑)。
12.Sign
2004年5月26日発売、26thシングル。ドラマ「オレンジデイズ」主題歌。
一年半後の12thアルバム「I ♥ U」に収録されたが、「シフクノオト」発売前から既にこの曲の存在はアナウンスされていた。「ありふれた日常を大切に」的な歌詞やサウンドからも「シフク〜」の延長線上にある曲。ピアノで始まり、バンド+ストリングスサウンドで盛り上げ、またピアノで終わる、という、後年の類型的なミスチルバラードの雛型といってもいいような構成の曲だが、曲に流れる空気が心地よく、今でもよく聴く曲である。
先述の日産スタジアムのライブではアンコールの最後の曲として演奏されていた。ちなみにこの曲で「innocent world」以来10年ぶりのレコード大賞を受賞。
13.and I love you
2005年6月29日発売、27thシングル「四次元 Four Dimentions」2曲目。日清カップヌードルCMソング。
アコギのストロークが印象的な導入、徐々に盛り上がっていくバンド展開、サビでタイトルを連呼するなど、聴いていて不思議な昂揚感を感じる曲である。ちなみに最初から最後までここまで高いキーが続くのはミスチル史上初なのではないだろうか。
収録曲4曲がすべてタイアップ付きの4面シングル(?)という驚きの形態でリリースされた本作では、この曲が一番お気に入りである。
14.未来
27thシングル「四次元 Four Dimentions」1曲目。ポカリスエットCMソング。
曲間でハープを吹くなど少しブルージーな面を取り入れたアップテンポ。人生や恋愛をロードムービー風に喩えての歌詞は共感できるものがある。サビになると視界が開けたような開放感が広がるあたりは「Any」を彷彿とさせるが、こちらの曲のほうが楽曲展開に無理がない分素直に聴ける。
学生服姿の綾瀬はるかが自宅から学校までの道のりを延々と歩くというPVが作られた。メンバーが誰も出てこないので綾瀬はるかのプロモーションムービーか、と一瞬錯覚してしまうほどの出ずっぱりぶりである(笑)。
15.ランニングハイ
27thシングル「四次元 Four Dimentions」3曲目。映画「フライ、ダディ、フライ」主題歌。
自己の内面と対峙する激しめのナンバーで、桜井の歌い方もヤケクソ気味だが、サビで自分自身を鼓舞するようなフレーズが多々見受けられることもあり、結構爽快な作品。ライブで盛り上がりそうな曲である。
ちなみに以上の3曲は同年発売の12thアルバム「I ♥ U」に収録されたが、4面シングルの残り1曲「ヨーイドン」のみはアルバムに収録されず、15周年記念のカップリング集「B-SIDE」にも収録されず、未だにシングルでしか聴けないという不遇な扱いになっている。
…以上、「2001-2005<micro>」収録の全15曲のレビューでした。
この時期の楽曲を改めて聴いてみると、桜井和寿の急病や、JENこと鈴木英哉がバンド活動を躊躇(?)するなど、予想外のアクシデントが起こりはするものの、デビューから10年を過ぎてミスチルというバンドの方向性が盤石になり、揺らぐことのなかった5年間だったと思います。第5のメンバーとも言われるプロデューサー・小林武史の手によるキーボードやストリングスアレンジといったいわゆる上物が徐々に増えていった時期でもあるのですが、まだこの時点ではバンドサウンドがそれらに食われる、ということはなく、バランス良く溶け込んでいる印象を受けました。
さて、次週の「CD Review Extra」では後編として、「2005-2010<macro>」の全14曲をレビューする予定です。よろしければまたお付き合い下さいませ。
※文中敬称略。全作詞・作曲:桜井和寿。編曲:小林武史&Mr.Children。
1.優しい歌
2001年8月22日発売、20thシングル。アサヒ「WONDA」CMソング。
7月にデビューから10年間の活動を総括したベストアルバムを発売後、仕切り直しの1枚目。全体的に短めのメロディー、あっさりとしたバンドサウンド、サビの頭にタイトルの歌詞が入っている…等々、1998〜2000年あたりのミスチルの混沌とした作風から開放された、実にシンプルな楽曲。シンプル過ぎて正直あまり印象に残らなかったりもするのだが(おい)、新たなスタートを切る曲としては最適な作品だと思う。原点回帰を意識したのか、彼らのPVとしては珍しくエキストラな役者は登場せず、メンバー四人のみが出演している。
2.youthful days
2001年11月7日発売、21stシングル。ドラマ「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」主題歌。
タイトル通り若々しい躍動感を歌詞、メロディー、アレンジから感じさせる爽快なアップテンポナンバー。この手のシングル曲は意外とありそうでなく、「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」以来かも。中毒性のあるポップなメロディーが好みである。ラブソングだが、歌詞に「腐敗のムード」とか出てくるあたりは桜井ならではのセンスか。PVでは桜井が自分の首を抱えて歌っていたり、両腕を長く伸ばしたりするなどの謎の演出があり、かなりシュールな映像が展開される。
3.君が好き
2002年1月1日発売、22ndシングル。ドラマ「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店〜」挿入歌。
ドラマの挿入歌であったがドラマ終了後の年明けにリリースされた。久々のバラードだが「優しい歌」に通じるシンプルな歌詞とメロディーで、シングル曲としては少し弱い気がする。楽曲に反して、超能力者っぽい桜井の手引きで(?)人体研究所みたいなところから少女と共に脱出するスキンヘッドの窪塚洋介が登場するPVはインパクト大。曲と全然関係ないような気がするが…(苦笑)。
4.蘇生
2002年5月10日発売の10thアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」収録曲。アサヒ「WONDA」CMソング。
アルバムのタイトルチューンで、前向きで力強く、地に足の付いたメッセージを発信した一曲。これ以前は「DISCOVERY」や「Q」など、何かを探して彷徨っている苦悩を感じるアルバムが続いていたが、そんな時期を乗り越えて新たに辿り着いた新境地、とも思える本アルバムを象徴する曲となった。
アルバムでは1曲目のインスト「overture」からシームレスで始まっているバージョンでの収録だったが、本ベストに収録されるにあたって、ギターから始まるバージョンにエディットされた。
5.Drawing
21stシングル「youthful days」のカップリング曲。後にドラマ「幸福の王子」の主題歌のタイアップが付いた。
タイトル通り「絵」をモチーフにした暖かいバラード。シンプルだが体温を感じるアコギ+打ち込みサウンドから始まり、最後はバンドが入ってきて盛り上がる。この時期のミスチルの代表曲!というわけではないと思うが、地味ながら良い曲だと思う。あまりカップリングを積極的にアルバムに入れないタイプのミスチルにしては珍しく、アルバム「IT'S A〜」にオリジナルのまま収録されている。
6.いつでも微笑みを
10thアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」収録曲。
「IT'S A〜」には従来のミスチルのバンドサウンドに加えて、明るめのキーボードの音色が目立つ曲がチラホラあるのだが、この曲はその中のひとつ。歌詞は結構シリアスなのだが、明るめのサウンドとポップなメロディーがそれを上手く中和していて、聴きやすい。
アルバムではクライマックスの「優しい歌」の前に配置されたせいか、オーラス前の小品的な曲、といった印象を長い間持っていたので、数年後にCMソングのタイアップが付いて、お茶の間に流れた時には驚いた。ちなみに31stシングル「旅立ちの唄」のカップリングにライブバージョンが収録。
7.Any
2002年7月10日発売、23rdシングル。NTTドコモCMソング。
発売前からドラマチックに盛り上がるサビのメロディーがCMで大量にオンエアされており、このサビだけ知っているという一般リスナーも多いのでは。ただ、盛り上がるのはサビの部分だけで、AメロBメロはやけにシンプル…というか、別の曲のメロディーをサビに繋がるようにくっつけたような無理やり感が漂うのが気になった。楽曲展開的には疑問が残るのだが、歌詞の世界観は好きな曲。
なお、このシングル発売直後、桜井が小脳梗塞で倒れ、全国ツアーが全公演キャンセルとなった。この曲を聴くと未だにそのニュースを思い出す。
8.HERO
2002年12月11日発売、24thシングル。NTTドコモCMソング。
タイトルは大上段だが、父親の目線から子供に向けられたミニマムで暖かいメッセージソングである。PVは全編クレイアニメーションで、シングルのジャケットの男性が主人公。
病に倒れた桜井の回復後初のシングルだったが、病気明けということもあってか本人達によるプロモーション活動はほとんど行われなかった記憶がある。
9.タガタメ
2004年4月7日発売の11thアルバム「シフクノオト」収録曲。
ミスチルの作品はほぼ全曲桜井が手がけているのだが、彼の精神状態によって生み出される作風がかなり異なるのが特徴だと思う。本作も当時の桜井の周辺の状況が反映されているような気がする。社会性の濃いテーマのシリアスで重い曲。「シフク〜」ではこの後に「HERO」が控えており、桜井の「公」の主張であると思われるこの曲が終わった直後に「私」の主張であると思われる「HERO」が始まるあたりが鮮やかな対比だった。本ベストでは楽曲完成順に並べ直したのか、曲順が逆になっている。
ちなみに原曲は「タダダキアッテ」という意外にも軽快なテンポの曲で、33rdシングル「HANABI」のカップリングとして収録。
10.掌
2003年11月19日発売、25thシングル「掌/くるみ」の1曲目。
初の両A面シングル。近くにいても分かり合えないもどかしさ、人とは個体と個体同士であることを再確認した上で「ひとつにならなくていいよ/認め合うことができればさ」と語りかける、久々の葛藤系(?)な歌詞。それに合わせてか演奏も激しめなロックサウンドなのだが、同じく悶々としているテーマでも「深海」や「BOLERO」の頃に比べるとどこか救いがある気がするのは、紆余曲折を経たバンド活動の結果かも。
PVは桜井が身体から泥を流すという不気味でインパクトの強い作品で、正直あまり繰り返して観たくない(苦笑)。
11.くるみ
25thシングル「掌/くるみ」の2曲目。
前述の「掌」と両A面でリリースされたシングル。後に29thシングル「しるし」のカップリングに別バージョンが収録された。
「掌」とは対照的に穏やかなバンドサウンドが特徴のミディアム。昔なじみの四人組の中年男性が「Mr.ADULTS」というバンドを結成して色々な場所で細々と演奏を続けるPVは、数あるミスチル映像作品の中でも異色だが特筆の出来。ちなみにラストシーンでは1989年、Mr.Children結成前日(という設定)の桜井も登場する。
余談であるが、筆者は本作リリースの翌年のツアー「TOUR 2004 シフクノオト」の日産スタジアムに参加。ミスチルのライブに足を運べたのはこの時だけで、この曲も演奏されたが、その時のお客さんの手拍子がドラムのキックに合わせて「パン・パパン♪」だったのに軽い衝撃を覚えた。どうでもいい話である(笑)。
12.Sign
2004年5月26日発売、26thシングル。ドラマ「オレンジデイズ」主題歌。
一年半後の12thアルバム「I ♥ U」に収録されたが、「シフクノオト」発売前から既にこの曲の存在はアナウンスされていた。「ありふれた日常を大切に」的な歌詞やサウンドからも「シフク〜」の延長線上にある曲。ピアノで始まり、バンド+ストリングスサウンドで盛り上げ、またピアノで終わる、という、後年の類型的なミスチルバラードの雛型といってもいいような構成の曲だが、曲に流れる空気が心地よく、今でもよく聴く曲である。
先述の日産スタジアムのライブではアンコールの最後の曲として演奏されていた。ちなみにこの曲で「innocent world」以来10年ぶりのレコード大賞を受賞。
13.and I love you
2005年6月29日発売、27thシングル「四次元 Four Dimentions」2曲目。日清カップヌードルCMソング。
アコギのストロークが印象的な導入、徐々に盛り上がっていくバンド展開、サビでタイトルを連呼するなど、聴いていて不思議な昂揚感を感じる曲である。ちなみに最初から最後までここまで高いキーが続くのはミスチル史上初なのではないだろうか。
収録曲4曲がすべてタイアップ付きの4面シングル(?)という驚きの形態でリリースされた本作では、この曲が一番お気に入りである。
14.未来
27thシングル「四次元 Four Dimentions」1曲目。ポカリスエットCMソング。
曲間でハープを吹くなど少しブルージーな面を取り入れたアップテンポ。人生や恋愛をロードムービー風に喩えての歌詞は共感できるものがある。サビになると視界が開けたような開放感が広がるあたりは「Any」を彷彿とさせるが、こちらの曲のほうが楽曲展開に無理がない分素直に聴ける。
学生服姿の綾瀬はるかが自宅から学校までの道のりを延々と歩くというPVが作られた。メンバーが誰も出てこないので綾瀬はるかのプロモーションムービーか、と一瞬錯覚してしまうほどの出ずっぱりぶりである(笑)。
15.ランニングハイ
27thシングル「四次元 Four Dimentions」3曲目。映画「フライ、ダディ、フライ」主題歌。
自己の内面と対峙する激しめのナンバーで、桜井の歌い方もヤケクソ気味だが、サビで自分自身を鼓舞するようなフレーズが多々見受けられることもあり、結構爽快な作品。ライブで盛り上がりそうな曲である。
ちなみに以上の3曲は同年発売の12thアルバム「I ♥ U」に収録されたが、4面シングルの残り1曲「ヨーイドン」のみはアルバムに収録されず、15周年記念のカップリング集「B-SIDE」にも収録されず、未だにシングルでしか聴けないという不遇な扱いになっている。
…以上、「2001-2005<micro>」収録の全15曲のレビューでした。
この時期の楽曲を改めて聴いてみると、桜井和寿の急病や、JENこと鈴木英哉がバンド活動を躊躇(?)するなど、予想外のアクシデントが起こりはするものの、デビューから10年を過ぎてミスチルというバンドの方向性が盤石になり、揺らぐことのなかった5年間だったと思います。第5のメンバーとも言われるプロデューサー・小林武史の手によるキーボードやストリングスアレンジといったいわゆる上物が徐々に増えていった時期でもあるのですが、まだこの時点ではバンドサウンドがそれらに食われる、ということはなく、バランス良く溶け込んでいる印象を受けました。
さて、次週の「CD Review Extra」では後編として、「2005-2010<macro>」の全14曲をレビューする予定です。よろしければまたお付き合い下さいませ。
コメント
コメント一覧
次回も楽しみにしてます。
次回も週末を目指して徐々に書き始めています。どうぞお楽しみに。