tkvocaloid 2012年3月28日発売、小室哲哉が世に送り出した往年のヒット曲を、ボーカロイドプロデューサーの手によってカヴァーしたコンピレーションアルバム。キャッチコピーは『小室哲哉「初」公認のボカロアルバム』。小室自身も1曲制作に参加しています。全11曲収録。

 本サイトではレビュー等で一切扱われることのなかった「ボーカロイド」というジャンル。それもそのはず、筆者がボカロに手を出すのは本作が初めてでして、ボカロについての基礎知識もあやふやなまま、TM NETWORKの復活熱に煽られて(?)レンタルして聴いてみました。
 収録されている原曲アーティストは華原朋美、篠原涼子、観月ありさ、渡辺美里、globe、TRF、H Jungle with t、そしてTM NETWORK。80年代中盤〜90年代末までの小室哲哉のプロデュースまたは提供楽曲をエレクトロ系サウンドでアレンジした曲がほとんど。原曲とほぼ同じようなアレンジの曲もあり、「TOO SHY SHY BOY!」のように大胆にラップを挟み込んだ曲もあり、「WOW WAR TONIGHT」のように大胆なアレンジ変更を試みた曲もありと様々。そしてその演奏に合わせてボーカロイドの方々(?)の歌声が乗っているわけですが、筆者が慣れ親しんできた原曲の生のヴォーカルと比べるとやはり違和感があったことは否めません。
 特にTKプロデュース期の小室哲哉は、それぞれの歌い手の限界キーのギリギリのメロディーを歌わせることで、歌い手に必死な感情を求め、それを上手くまとめて楽曲として作り上げていたような気がするのですが、その辺りをそつなくこなす(?)ボーカロイドの良くも悪くも安定したというか、抑揚にイマイチ欠ける歌声では聞き流せてしまうという感じで。ただ、原曲ではKEIKOが鬼気迫る歌唱を見せていた「FACE PLACES」や「wanna Be A Dreammaker」などは、ボカロの声で聴くことで、「ああ、この曲こういう歌い方もありだな」、と思わされたりして、意外な発見があったりしました。

 そして、ある意味本作の目玉である、小室哲哉自身が手がけた「LOVE IS ALL MUSIC」のボカロバージョン。初っ端からいきなり手癖っぽい長いピアノソロで幕開けという彼らしい始まり以外は原曲に近いアレンジで、予想よりもシンプルにオケ作ってきたな、という印象。ボーカロイドの歌声に関しては、他の作品と比べると、歌い方がソプラノの一本調子な点が気になりましたが、生ヴォーカルにオートピッチ処理を使いまくっていた2000年初頭前後の彼のヴォーカルに対する弄り方はなんだか懐かしかったです(笑)。

 以上のように、ボーカロイド初体験の筆者にとりましては、小室本人の作品を含めて玉石混淆といった作品でした。ボカロに詳しいリスナーの方の感想も機会があれば聞いてみたいところです。