
今年で20周年を迎えるオーガスタですが、この事務所が台頭してきたのはスガシカオや山崎まさよしを輩出した1990年代末ぐらいからという経緯もあり、1枚目の2曲目に入っている杏子の「DISTANCIA〜この胸の約束〜」はとても懐かしかったですが(1992年作品)、本作に収録されたのは1997年辺りから今日に至るまでの約15年間にリリースされた楽曲が中心。現在所属している9組(ユニット内のソロは未収録)+昨年秋に独立したスガシカオを加えた、全10組のアーティストの作品を各2曲ずつと、ベテランや若手に関係なく平等に選曲されています。だいたいは各アーティストの代表曲を収録していると思うのですが、山崎まさよしは数々の名刺代わりの曲を差し置いて「晴男」(アルバム「ADDRESS」収録曲)が選曲されるというマニアックさには唖然(笑)。そして、福耳は各ディスクの最初と最後に全シングル曲を時系列順に配置し、更に「星のかけらを探しに行こう Again」のアコースティックバージョンをラストに収録と、本作品の看板的な役割を果たしています。
ブックレットの森川氏の文章を読む限りでは、いわゆるJ-POP的なものから距離を置いたアプローチをするアーティストが好み、という主張が感じられることもあり、こうして一気に数々の所属組の作品を聴いてみると、各アーティスト毎の音楽的アプローチにはかなり幅があることに改めて気づかされました。山崎まさよしやスガシカオは唯一無二の個性と歌声を持った作品、スキマスイッチや秦基博は割と王道を少し捻ったような、ヒットシーンを賑わせるようなポップスを軸にした作品、COIL、あらきゆうこあたりは良い意味でアクが強いというか個性的で、ちょっとマニア受けしそうな要素の作品などなど、トータルでは事務所特有のカラーを色濃く感じはしないものの、良い感じで作風がバラけていて、聴いていて楽しい作品です。そんな彼らが集ったユニット・福耳には20周年を記念する新曲などは特にないのが残念なのですが、前回のベスト以降のシングル「DANCE BABY DANCE」と「夏はこれからだ!」の両A面シングルが福耳名義のアルバム初収録なので、福耳に関してはベストを聴くよりこちらを手に取ったほうが他のアーティストの作品も聴けてお得かも(笑)。
前述の選曲の件もあり、この2枚組でオーガスタの歴史のすべてが分かる!といった内容のベストではないような気もするのですが(苦笑)、個性的な面子を取り揃えたこの事務所ならではのコンピレーションになっていると思います。福耳の全オリジナルシングルもこのベストで揃いますし、福耳+αでちょっとオーガスタのアーティストの曲を聴いてみようかな、という方は入門的作品としてどうぞ。
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