TMN 来月幕張メッセで行われるPRINCESS PRINCESS、米米クラブとのジョイントライブを皮切りに、4月にニューシングルのリリース、そして武道館公演が決定し、約4年ぶりに活動を再開するTM NETWORK。管理人の音楽遍歴の中でも重要な部分を占める彼らの復活を記念(?)して、今回の「CD Review Extra」では、オリジナルアルバムよりも実は数が上回るという(苦笑)、TM NETWORK/TMNのオリジナル音源を使用したベストアルバム全14作を公式・非公式含めてレビューすることにしました。新たに「TMを聴きたいけどどれから聴けばいいのか…」と悩んでいる方がいらっしゃいましたら、その一助になれれば幸いです。ご興味をお持ちの方は「続きを読む」からお入りください。
TM NETWORK/TMN 全ベストアルバムレビュー


Gift for Fanks
TMGIFT
 1987年7月1日発売、「Get Wild」のヒットでブレイクを果たした直後にリリースされた初のベストセレクション。全14曲収録。
 「Get Wild」はもとより、「1974」「Dragon The Festival(Zoo Mix)」「Come on Let's Dance(This is the FANKS DYNA-MIX)」「Self Control」等、当時の代表シングル曲に加え、「1/2の助走」「愛をそのままに」「Confession〜告白〜」といった木根バラード(通称キネバラ)も収録。3rdオリジナルアルバム「GORILLA」からの選曲が多く、逆に同年2月に発売された4thアルバム「Self Control」に関しては表題曲以外はセールスを考慮してか収録されていない。全体的な曲順の流れも良く、初期TMを俯瞰できる練られたアルバムで、ベストが濫発された現在においても本作の価値は失われていない。レコード会社もその事に気がついたのか、2007年にはリマスターした音源にDVDを付属して再発された。余談であるが本作はLP盤がまた現役であったにも関わらず、CDのみで発売された珍しい作品でもある。


TETSUYA KOMURO PRESENTS TMN BLACK
TMBLACK
 1994年6月22日発売、後述の「RED」「BLUE」と同時にリリースされた、TMN「終了」ラストライブの約一ヶ月後に発売されたベストアルバム。全14曲収録。
 デビューシングル「金曜日のライオン」からラストシングル「Nights of The Knife」までの全シングル28曲の中から半分の曲をセレクション。タイトルがTMN名義でリリースされたシングルは7曲中6曲収録と、1990年以降の作品が割と優先されている。それ以前のTM NETWORK時代の曲も代表曲はだいたい押さえられているが、「BEYOND THE TIME」「SEVEN DAYS WAR」は未収録。本作より2年半後に全シングルを収録した「TIME CAPSULE」が発売されたため、このアルバムの存在意義は微妙になってしまったが、中古で廉価で売っているショップもあり、TMのシングルヒストリーを軽くさらっておく1枚としては良いかもしれない。


TAKASHI UTSUNOMIYA PRESENTS TMN RED
TMRED
 1994年6月22日発売、三作同時発売のベストアルバムの1枚。ダンスセレクションと銘打った全12曲収録。
 1986年〜1991年までの「踊れる楽曲」を一堂に集めた作品。「BLACK」で被っている「GET WILD」「KISS YOU」「RHYTHM RED BEAT BLACK」はバージョン違いで収録という配慮が嬉しい一方、「BLACK」未収録の「Come on Let's Dance」に関してはなぜかほとんど歌詞のない「the SAINT mix」が収録されるというこだわり(?)が。本作でしか聴けない曲は「OPEN YOUR HEART」。1984年の未発表曲ということで、デビューアルバム「RAINBOW RAINBOW」の雰囲気に近いナンバーである。ちなみにこの曲は小室哲哉のソロ「OPERA NIGHT」という曲として先に世に出ている(1989年)。


NAOTO KINE PRESENTS TMN BLUE
TMBLUE
 1994年6月22日発売、三作同時発売のベストアルバムの1枚でこちらはバラードセレクション。全14曲収録。
 TMのバラード曲を各オリジナルアルバムからピックアップしたアナザーサイド的な作品。木根尚登作品が14曲中8曲というかなりの割合を占めているのも特徴。なぜかTMNリニューアル後のアルバムからは選ばれていない。「大地の物語」あたりは収録されても良いのではと思ったのだが。作品のコンセプト上「Get Wild」が収録されていない珍しいベストでもある。
 また、ラスト・レコーディング作品として「ANOTHER MEETING」という曲が最後に収録。作詞:木根、作曲:宇都宮隆という唯一の組み合わせの名バラードが本作でのセールスポイントでもあった…が、1999年の「STAR BOX TMN」に収録されてしまい、現在このアルバムでしか聴けない曲はない。が、収録楽曲が似たり寄ったりの他のベストとは一線を画す内容なので今でもお薦めである。


TIME CAPSULE all the singles
TMTIMECAPSULE
 1996年12月12日発売、TKブームの真っ只中にリリースされた、TM NETWORK/TMNの全シングル曲を時系列順に収録した2枚組ベストアルバム。全29曲収録。
 全シングル収録ということで、「アクシデント」「All-Right All-Night」「BEYOND THE TIME」「SEVEN DAYS WAR」「Just One Victory(Remix Version)」はシングル音源でのアルバム初収録。その一方で「Love Train」の両A面であった「We Love the EARTH」は未収録、「RHYTHM RED BEAT BLACK(version 2.0)」は短縮バージョンが収録されていたりと結構ツッコミどころのある内容ではある。本作でしか聴けない曲は2枚目の最後に収録された「Detour」。TMN名義ではなく、メンバー三人の連名扱いの新曲であるが、2年半ぶりに三人が揃ってレコーディングしたというのは嬉しかった記憶が。
 現在はコンセプトが同じ「THE SINGLES 1」「THE SINGLES 2」と「Detour」以外は重複する上、音質も「THE SINGLES」シリーズのほうが上ではあるが、初回限定のデジタル時計埋め込みボックスケースや丁寧に作られた歌詞カード、そして未発表フォトブックなどが付属しており、今でも手元に置いておきたい作品になっている。


STAR BOX TM NETWORK
TMSTARBOX
 1999年1月30日発売、EPIC/SONYレコード主導企画の「STAR BOX」シリーズの1タイトル。同日にXやUNICORN、REBECCAなども発売されている。TMは「TM NETWORK」時代と「TMN」時代で分けてリリース。全14曲収録。
 収録曲はほぼ時系列であるが、4thアルバム「Self Control」と5thアルバム「humansystem」からの選曲が多め。その時期のシングルに加え、「GET WILD'89」や「DIVE INTO YOUR BODY」というTM NETWORK活動末期の作品や、初期の代表曲「ELECTRIC PROPHET」も収録されていたりと、収録年代は結構幅広い。「Gift for Fanks」との被りも少ないので、1987年〜1989年の活動をざっと振り返るに適したアルバムである。限定生産だったので現在は販売されていないが、中古屋に行くとたまに目にする機会も。


STAR BOX TMN
TMNSTARBOX
 1999年1月30日発売、前述の「STAR BOX」の「TMN」期版。全14曲収録。
 この時期のオリジナルアルバムは「RHYTHM RED」と「EXPO」の2枚。その中からのセレクトにアルバム未収録シングルを加えた内容で、正直無理があったような選曲である。現在TMN時代を聴きたいならば本作ではなく、2枚のオリジナルと「THE SINGLES 2」で事は足りるので、無理して手に取る必要はない。ちなみに「THE POINT OF LOVERS' NIGHT」は「RHYTHM RED」の生ドラム演奏バージョンではなく、TM NETWORK時代にリリースしたシングルバージョンが収録されているので要注意。
 そして「BLUE」の目玉であった「ANOTHER MEETING」がラストシングル「Nights of The Knife」を差し置いてまさかの収録。当時TMN復活が噂されていた(実際この年の夏に復活)ので、「終了」を連想させるラストシングルは未収録にしたという配慮であろうか。TM NETWORK期の「STAR BOX」よりは中古屋で見かけることが多い。


BEST TRACKS -A message to the next generation-
TMTRACKS
 2000年3月23日発売、1984年〜1994年までの10年間にリリースされた楽曲をテーマ縛りなく選曲したという点では初のベストアルバム。全15曲収録。
 前年の夏に復活を果たしたTM NETWORKだったが、シングルを3枚リリース後にレコード会社を移籍。その際に発売された作品であるが、復活後のシングルは未収録で、あくまでデビューから「終了」までのセレクションとなっている。選曲はシングル中心の無難なラインだが、「Human System」「Fool On The Planet」というアルバムの名曲を収録しているあたりがポイント高め。ブックレットにはデビューから2000年現在に至るまでの彼らの軌跡が記載されていることもあり、TM入門者向けのベストアルバムとしては良い線をいっていると思う。


THE LEGEND GOLDEN 80's COLLECTION
TMLEGEND
 2003年1月1日発売、設立25周年を迎えたEPIC/SONYの記念事業として発売されたベストアルバムで、渡辺美里、佐野元春などのタイトルと同時発売。全14曲収録。
 「80's COLLECTION」ということで、収録楽曲は1984年〜1987年までの初期TM期の楽曲に絞られた。「FANTASTIC VISION」や「雨に誓って〜SAINT RAIN〜」などマニアックな曲も入っているが基本的にはこの時期の曲は「Gifr for Fanks」を持っていれば十分だと思うので、よほどのコアなファンでなければ特に聴く必要はない。ちなみに80年代をコンセプトとしているのにも関わらず、ブックレットの写真に「EXPO」(1991年)の頃の写真が掲載されているのはちょっと疑問に思った(笑)。音質は良いが、ファンアイテム。


Welcome to the FANKS!
TMFANKS
 2004年12月22日発売、この年でデビュー20周年を迎えたTMの、EPICレコード主導によるベストアルバム。3枚組全32曲収録。
 他のベストアルバムとは異なり、インターネット上におけるファン投票によって選出された上位20曲をランキング順に収録。なので1曲目(投票第1位)で8分を超えるバラードの「ELECTRIC PROPHET」がいきなり出てくるなど曲順は一切配慮されていない(苦笑)。ファン投票ということもありシングル曲はそこそこな代わりに、「Still Love Her」「Children of the New Century」「Jean Was Lonely」などのアルバムの人気曲がベスト初収録。また復活後の楽曲も1曲ではあるがTOP20に入り収録された(「10 Years After」)。
 コアなファンにとって目玉なのは何といってもDisc3。今までアルバム未収録だったシングルカップリング曲を収録し、さらにレア音源の「DIVE INTO YOUR BODY(12''CLUB MIX)」「Love Train(CLUB MIX)」が初商品化されたのは素直に嬉しいところ。どうせならDisc3だけ単品販売してくれればもっと嬉しかった(笑)。ファン投票選出の20曲もまんべんなく良い曲が揃っているので、「THE SINGLES」などを聴いてもっとTMの音楽に触れたい人にはお薦めの作品。


THE SINGLES 1
TMSINGLE1
 2008年5月28日発売、1984年〜1988年途中までのシングルタイトル曲を時系列順に全15曲収録。
 1996年の「TIME CAPUSLE」と同コンセプトの作品であり、リマスタリングして音質が向上している以外は収録曲はほぼ丸被りという内容。なぜかアルバム曲の「BE TOGETHER」が収録されている(1999年に「Get Wild」の再発シングルのカップリングに選ばれたからか?)。また、「BEYOND THE TIME」はリリース当時のシングルレコード盤バージョン(最後がフェードアウトで終わる)での収録で、このバージョンは初CD化。
 初回限定盤には特典ディスクが付属。活動最初期にあたる1984年、1985年のライブ音源が初商品化で、「永遠のパスポート」は歌詞がアルバム版とは大幅に異なる。他にはシングルカップリング曲が4曲入っているが3曲が「Welcome to the FANKS!」と重複、残り1曲も「TMN RED」に収録されており、目新しさはない。


BEST OF BEST
TMBESTOFBEST
 2008年7月2日発売、ソニーオンラインショップ限定販売(?)のベストで、一般のCDショップなどには流通していないと思われる作品。全12曲収録。
 「廉価で過去のアーティストの代表曲を…」というシリーズの一環で発売されたと思われ、本作品は1,680円。収録曲は代表曲を選べばまあこうなるかな、といった無難な選曲で特筆すべき点はない。TMN期の作品からは「Love Train」のみが選出されている。そしてここでも「BE TOGETHER」収録。数あるベストアルバム群の中で筆者が唯一未聴の作品。


SUPER BEST
TMSUPERBEST
 2008年7月20日発売、前述の「BEST OF BEST」に4曲を追加して2,000円で販売されている、こちらもオンラインショップで購入可能な作品。
 追加4曲は全曲シングル曲。本作収録曲は「THE SINGLES 1」「2」と全曲が重複している。また音質は妙に良く、おそらく「THE SINGLES」シリーズのリマスタリング音源を使用しているのだと思われるが、この作品の発売時点では「THE SINGLES 2」のリリースは当初四ヶ月後のはずだったが(詳しくは後述)「WILD HEAVEN」など「2」該当時期の楽曲の音質が既に良くなっているのが謎である。2,000円で「THE SINGLES」シリーズからのベストセレクトが手に入る、という意味では存在価値はあるだろうか。なおジャケットは1994年当時の彼らの姿でなかなかカッコ良い。


THE SINGLES 2
TMSINGLE2
 元々は2008年11月26日に発売が予定されていたが、小室哲哉の逮捕により発売が延期され、2009年の9月30日に無事リリースされた「THE SINGLES」の後編。全14曲収録。
 1988年末〜1994年までの全シングル曲を時系列順に収録。「TIME CAPSULE」との違いは「RHYTHM RED BEAT BLACK(version 2.0)」がフルバージョンで収録されたことと、「Detour」が未収録なことぐらい。これを出すなら「TIME CAPSULE」をリマスターして再発してくれれば…と思ったのは筆者だけではあるまい。
 「1」に続き初回限定盤には特典CDが付属。例によって「Welcome to the FANKS!」既収録のシングルカップリング曲に加え「We Love The EARTH」が収録。初商品化音源は3曲だがうち2曲はインストゥルメンタル曲、1曲は「Just One Victory」のデモ音源的な作品であり、ますますコアファン向けが加速した収録内容(でも本編ディスクはコアファンには不要というジレンマが)。


 …以上、全14作品のベストアルバムレビューでした。ちなみにこの他にもリミックスベスト、ライブベスト、蔵出し音源ベストなどTMのベストはあの手この手で出ていて枚挙に暇がないのですが、今回のレビューではオリジナル音源のみを対象とさせていただきました。
 個人的なベスト盤5傑は「Gift for Fanks」「TMN BLUE」「STAR BOX TM NETWORK」「BEST TRACKS」「Welcome to the FANKS!」でしょうかね。年代が下れば下るほど、内容が似通ったベストが濫発されるのは悲しい限りです。
 まあ本音は、いずれかのベストを手に取ってTMに興味を持って、もっと聴きたい、ということになれば、是非オリジナルアルバムを順番に聴いてください、と言いたいところなのですが(笑)、オリジナルの数も10作以上ありますので、TMの歴史をざっとさらうにはやはりベスト盤ということで。本レビューが、「沢山出ているので次にどれを聴けばいい?」といった疑問へのガイドとなれば幸いです。
 ちなみに二年後、2014年はTM NETWORKデビュー30周年。まだ少し先の話ですが、この時にまた何かベストが出そうで戦々恐々としている今日この頃です(苦笑)。