2012年01月21日 23:32

今週の1枚(58)「君とのDistance/ZARD」

ZARDDISTANCE 2012年も地道に更新する予定の(苦笑)「今週の1枚」。まずは目指せ60回達成…といったところでしょうか。どうぞ宜しくお願いいたします。さて、今回ご紹介する1枚は、昨年の2月10日でデビュー20周年を迎え、「20th Anniversary Year」としてシングルやアルバムのリマスターコレクションパッケージのリリースや、日本武道館でのメモリアルライブが行われた、ZARDの通算11枚目、そして結果的には最後のオリジナルアルバムとなってしまった「君とのDistance」。2005年9月7日発売。

 ZARDについては解説する必要もないほどのメジャーなアーティストなわけですが、一応恒例(?)の解説を。1991年にデビューした、坂井泉水の実質的なソロプロジェクト。「坂井泉水を中心としたユニット名」(ライブDVD「What a beautiful moment」より引用)というのが一番的確な表現でしょうか。今でも夏の終わりに某番組で歌われる「負けないで」をはじめとして、「揺れる想い」「マイ フレンド」等のヒット曲を数多く世に放ち、B'zと並んで90年代のビーイング勢を牽引した看板的な存在でした。実際ZARDの曲は、ドラマの主題歌やCMのタイアップ等で、テレビなどから流れて耳にすることが非常に多く、こちらからアンテナを張らなくても自然と日常の中に耳に入ってくるような機会に恵まれたこともあって、それほど熱心なファンでもなかった筆者でしたが、アルバムが発売されれば友人やレンタルショップからよく借りていたことを思い出します。全くと言っていいほどメディアに露出しないこともあって、坂井泉水自身はかなり謎に包まれた存在だと認識していましたが、そんな彼女が送り出す楽曲に関しては、かなり身近に感じていたことを思い出します。

 一言で表現してしまうならば、ギターの刻みを中心とした適度なバンドロックサウンドに、青空のように澄み渡った坂井泉水のヴォーカルが乗る、というのがZARDの「王道」。その路線が徐々に変わってきたのが1999年〜2001年のあたりではないでしょうか。従来のバンドサウンドが後退し、容易に打ち込みと分かるような機械的なリズムトラック、大胆にラップを導入した曲、さらには当時ブレイクしていた倉木麻衣の制作スタッフをアレンジに招いての(いわゆる「GIZA」的な)ループサウンドを使用したバラードをリリースしていた時期がまさにそれに該当すると思います。セールス全盛期のコンポーザーである織田哲郎や栗林誠一郎、アレンジャーでは葉山たけしや明石昌夫がビーイングから離脱した、という事情もあり、また当時の音楽の流行がR&B系に傾いていた背景もあるのでしょうが、正直ZARDで試したこれらの実験的な路線は、結果的に多くのフォロワーを遠ざけてしまった感は否めないと思います。かくいう私も、この時期のZARDは従来の路線に比べると方向性が定まっておらず、迷走しているんじゃないか…という感想を抱くに至っていました。

 そんな中、坂井泉水の体調不良による活動休止期間を経て、2002年からは「ZARD第2章」がスタート。アルバム「止まっていた時計が今動き出した」(2004年)や初のライブツアーを経て、久々のスマッシュヒットシングル「星のかがやきよ/夏を待つセイル(帆)のように」を収録したアルバムが本作です。
 この作品、一聴してまず耳をひきつけるのは、何といってもサウンド面。前作「止まっていた〜」でも数曲で試みられていた「王道ZARDサウンド」が全編にわたって復活しています。この復活の最大の功労者は本格的に制作に復帰し、このアルバムでは実に13曲中7曲に参加したアレンジャーの葉山たけしでしょう。全盛期の勢いに溢れたZARDサウンドを復活させ…というよりも、90年代王道サウンドを、2005年の時点での流行色を絡めながらも再構築しているように思われます。特にシンセ関係や、打ち込みドラムの音色などは時を経るとどうしても古臭くなってしまうもので、その辺りを如何に「現在の音」としてパッケージすることに気を配り、2005年現在の空気感を含んだ王道サウンドに仕上げているように思えます。また、彼以外の参加アレンジャーはGIZA系の顔ぶれがほとんどなのですが、本作はそういった方針なのか、はたまた葉山氏の参加に引っ張られたのか(?)生バンドを意識したようなアレンジを施した曲が多く(特に小林哲)、曲調はロックからワルツまでとバラエティ豊かなのですが、サウンド的にはばらけ過ぎ、ということはなく、適度にまとまっているような印象を受けました。

 王道サウンドが復活し、大野愛果をメインに据えての作曲陣に支えられて、紡ぎ出した本作での坂井泉水の歌詞は…というと、このアルバムほどに「大人の女性」としての意識を強く打ち出した作品群は今まで無かったのでは?と思わせるほどの楽曲が並んでいます。静かに情熱を燃やしているような「サヨナラまでのディスタンス」、諦観のようなものを感じさせる「君とのふれあい」「セパレート・ウェイズ」、包み込むような余裕を感じる「今日はゆっくり話そう」「月に願いを」、10年以上前の提供曲ながら当時の彼女の年齢にテーマもぴったりとはまった「あなたと共に生きてゆく」…等々、年齢を重ねてきたからこそ出せる「母性」のようなものを、これらの作品の端々から読み取ることができると思います。
 ヴォーカルも、ハイトーンを伸びやかに歌い上げていた全盛期とは少し異なり、どちらかというと呟くように歌う曲が多いですかね。ヘッドフォンで聴くと、囁くように歌う曲では彼女のブレスの息遣いまで聞こえてきて、ちょっとドキドキするほどです(笑)。高音が出てくる曲になると苦しげに歌っているのが少々気にはなるのですが、歌い手としての情念、伝えようというエネルギーを真正面から聴き手にぶつけてくる「かけがえのないもの」「君と今日の事を一生忘れない」などでは、その迫力も相俟って、ヴォーカル力がかなり胸に来るものがありました。
 2005年現在の坂井泉水の感性や表現力に、90年代当時のZARDサウンドが若干形を変えつつも上手く合わさった、どちらが欠けても成立しない作品に仕上がっていたと思います。

 音楽シーンの波に揉まれて、紆余曲折を繰り返しながらも「ZARD第2章」がひとつの形となり始めた矢先の2007年5月。突然の彼女の訃報により、最後に彼女が関わったオリジナルアルバムとなってしまった本作。勿論このアルバムが最終作になるとは誰も思っていなかったわけで、もはや叶わないことではありますが次回作があればどういった作品を出してきたのだろう…と思うと残念というほかありません。
 ZARDといえば、やはり一般的な認識ではアルバムで言えば「揺れる想い」「OH MY LOVE」「Forever you」といった90年代中盤あたりのイメージが今でも色濃く根付いているように思えるのですが、成長や迷走を続けながらひとつの答えに行きついた2000年代中盤のアルバム「止まっていた時計が今動き出した」、そして「君とのDistance」。この2枚のオリジナルアルバムは、特にライトなZARDリスナーの方々の耳に、少しでも多く触れていただければいいな、と僭越ながら願っております。

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