
本作でついにメジャーデビュー前からタッグを組んでいた寺岡呼人の名前が消え、前々作「WONDERFUL WORLD」から参加していた蔦谷好位置がアルバム1枚を通じてアレンジ、そしてプロデュース(ゆずと共同名義ですが)に深く関わっている様子。蔦谷氏は色々なゆずの可能性を前作「FURUSATO」で引き出した印象があったのですが、今作はその中の選択肢のひとつ、バンドサウンドの中にストリングスを大々的に前面に出したアレンジを施した曲が多い…というか、アルバムのテーマに合わせてメンバー(特に北川悠仁)が壮大な歌詞の曲を書いてくるのに沿ってのアレンジの路線になったのかもしれません。
シングル曲「Hey和」、さらにアルバムの核となる「HAMO」などで、かなり悟っている…というか、世界平和な方向に北川作品が向かっているのに対し、岩沢厚治作品は割といつも通りの曲を書いてきて、「1と8」のような彼独特の毒っ気のある曲が出てきた時はなんだかちょっと安心してしまいました(笑)。TRICERATOPSと組んだThe feversの「第9のベンさん」はかなり飛び道具的なポジションの曲だと思うのですが、こういう遊び心は好きですね。全体的には壮大路線の中に従来路線と遊びが挟まっている感じのアルバムになっています。曲数は一見多く見えますが、30秒〜1分程度のインスト、SE、寸劇(笑)で3曲分取っているので、実質12曲で、1枚通して聴いてみてもそれほど長さは感じません。
それにしても、もともと路上から始まった彼らの活動がここまでスケール大きくなるとは…。デビュー当時から断続的に聴いている身としては「えらく変わったな…」という感想で、コアなファンからは賛否両論ありそうな作品だとは思いますが、個人的には段階を踏んで少しずつ大きくなっていくゆずは、これはこれでアリかと思います。ただ、次作もこの壮大路線を同じように続けるとなると、ちょっと困惑してしまうかも。アルバム中盤にアクセント的に収められた「代官山リフレイン」が一番今の「30代を過ぎた等身大ゆず」という感じがするので、こっちの路線のゆずにも期待したいところです。
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