baddest 2011年11月23日発売。デビュー25周年記念としてリリースされた久保田利伸のベストアルバム。2枚組34曲収録。初回限定盤はDVD付きの3枚組。

 過去に「the BADDEST」(1988年)、「the BADDEST II」(1993年)、「the BADDEST III」(2002年)と、活動時期を区切ってのベスト盤は3作出してきた久保田利伸。ソニー系列のアーティストにしては、ベスト盤濫発ブームの波に乗ることもなく、マイペースに活動を重ねてきた感のある彼が(コンセプトベストを除き)、ベストアルバムとしては9年ぶりにリリースした本作は、初のオールタイム・ベストになっています。
 曲目にはアルバムの流れを考慮したのか、若干の前後はあるものの、基本的には時系列順。DISC1が「the BADDEST」「同II」まで、DISC2が「同III」からの選りすぐり楽曲+2003年以降にリリースされたシングルからのピックアップといった感じで、過去3作の「BADDEST」シリーズとはかなりの楽曲が重複しているものの、収録バージョンなどが細かい部分で異なっています。また、各ディスクの序盤と中盤には「TAWAWAヒットパレード」をインタールード風に新録で配置したり、最新シングル「声にできない」を未発表の別バージョンで収録したりと、コアなファンにも配慮した内容だと思います。そして何より2011年最新のマスタリングにより、80年代の曲が現在の技術によるキレのある音圧で聴けるのが嬉しいところ。

 25年間の活動を2年間に凝縮したということもあり、どの時期に彼の音楽に興味を持った、ということで世代ごとにお気に入りの年代は異なるのではないかと思います。個人的には「流星のサドル」や「Missing」などはリアルタイムではなく、「雨音」「夢 with You」「夜に抱かれて〜A Night in Afro Blue〜」あたりでグッときちゃう90年代J-POPファンなので(笑)やはりDISC1の後半から、最大ヒット曲の「LA.LA.LA.LOVE SONG」や名バラード「Cymbals」が配置されたDISC2の序盤あたりまでが最も思い入れの深いブロックですね。音的に時代を感じさせる80年代のファンクナンバーや、2000年以降のグッと洗練されたR&B寄りのナンバーもほぼオリジナル音源での収録ということで、最新リマスターで久保田利伸の25年の歴史の美味しいところを網羅できる、良い構成のベストアルバムだと思います。ひとつ不満を言うなら、「ふたりのオルケスタ」も収録してほしかったことぐらいでしょうかね(笑)。

 さて、そんな久保田利伸ですが、本作を通して聴いて感じたのは、ファンクやR&Bへのこだわりと深い愛情でしょうか。激動の音楽シーンの中で活動を続けていくにあたり、時流に乗って安易に作風を露骨に変えるということはせず、常にソウルミュージックを突き詰めようという職人的姿勢を2枚のディスクから聴き取れたような気がします。もうすっかりベテランの域に達したゆえの安定感というのもあると思うのですが、理想的な活動を続けているな、と思います。今後もその姿勢を貫いてくれることでしょう。

 ちなみに初回盤のDVDは、本作収録の12曲のPVを25分ほどのメドレーにした「Hit Parede Non Stop Remix」。こちらは時系列はほぼランダムなので、いきなり歌っている彼が15年前の姿になったりします(笑)。メドレーなのでPV集とは思わないほうがいいかも^^;。そして「声にできない」のフルPVも収録。今年で49歳とは思えない若さをお楽しみください(?)。