kimisira 2010年11月3日発売、「ソングライターズヒストリーvol.2」と銘打たれたASKAのセルフカヴァーアルバム第2弾。全12曲収録。

 チャゲアスやソロ時代のヒット曲を中心に収録した第1弾「12」に続く本作は、「生涯忘れられない人との出会い、別れ、ノスタルジー、ASKAのラブソングで綴るストーリーアルバム」というコンセプト。そのコンセプトに沿って過去の作品から独立した12作品をピックアップした作品になっています。
 「めぐり逢い」で始まり、過去の恋を振り返る「C-46」で終わる、という構成になっているのですが、単に出会って、恋して、そして別れて…といった起承転結になっているのではなく、「パラシュートの部屋で」「B.G.M」といった幸せな時代を描いた曲は序盤に集中、「MIDNIGHT 2 CALL」を境に、終わってしまった恋を追想する「明け方の君」「くぐりぬけて見れば」などの曲が続き、そして「201号」というひとつの部屋の意味が「君の好きだった歌」で明かされ、そして最後の「C-46」に繋がるという楽曲構成はなかなか凝っていて、この1枚のアルバムに出てくる主人公とその恋人は、出会って、どうして別れてしまったんだろう?今は何をしているんだろう?何故今になって夜中に電話をかけてくるんだろう?(笑)などと、想像の余地が膨らむ内容になっていると思います。
 また、「君の好きだった歌」は元々約15年前の「Code Name.1 Brother Sun」の1曲目に収録された短めの曲だったのが、今作に収録されるにあたって歌詞やメロディーが追加され、今作のコンセプトに沿った内容にリメイクされているのがポイント。個人的には「C-46」で歌われている「近く」が、「201号」と繋がる辺りの妙技(?)に感動してしまいました。

 そんなわけでストーリーを中心に楽しめるアルバムではありますが、セルフカヴァーとしての作品としては、こちらは「12」と同様、過去の曲を現在用にブラッシュアップしている印象というのは変わりません。アレンジャーも前作と続投なこともあり、ある意味安心して聴けます。原曲ではフォーク色の強かった「201号」が、葉加瀬太郎、押尾コータロー両氏のアレンジ参加によって陽の空気が導入されたサウンドに生まれ変わったのが一番の聴きどころでしょうか。選曲的には12曲中11曲がチャゲアスの曲という偏りを見せているのが気になりますが、ASKAのソロ曲って結構概念的な曲が多いような気がするので、ストーリーアルバムとして相応しい楽曲はチャゲアスの曲から選んだ、ということなんでしょうかね。

 「めぐり逢い」以外にヒット曲らしいヒット曲がなく、またアルバムの収録曲が中心の選曲なので、ライトリスナーには敷居が高めですが、ベテランらしくなかなかに深い作品です。しかし、次はそろそろオリジナルアルバムをお願いしたいところですね…^^;