deengradusp 去る今週水曜日、2011年6月15日にリリースされたDEENのオリジナルアルバム「Graduation」。本作の完全初回限定盤にはバラードベストアルバム「Ballads in Blue II 〜The greatest hits of DEEN〜」が同梱されています。2001年発売の初のバラードベスト「Ballads in Blue」からちょうど10年。その10年の間にリリースされた作品から選曲されたこの特典CDを、オリジナルアルバムより先に(笑)今回はレビューしていきたいと思います。ご興味をお持ちになられた方は「続きを読む」より先にお進みください。
DEEN「Ballads in Blue II 〜The greatest hits of DEEN〜」
発売記念全曲レビュー


※人名等の記載は敬称略。

1.Blue eyes〜Strings Style〜 Introduction
 作曲:山根公路
 2010年発売のサマーアルバム「クロール」に収録された同曲のリメイクバージョンを、今作用に更に短く編集したインストバージョン。
 この曲のインストでCDが始まるのは「Ballads in Blue」(以下「バラベス1」)と同様の演出。「バラベス1」では硬めのエレピの音が爽やかな夏を感じさせるイントロダクションであったが、今回はその名の通りストリングスによる流麗な幕開けとなっている。
 ちなみに本作品で未発表音源なのはこの曲だけである。

2.思いきり 笑って
 作詞:川島だりあ/作曲:織田哲郎
 2005年のセルフカヴァーアルバム「DEEN The Best キセキ」収録曲。
 初出はデビューアルバム「DEEN」(1994年)のアルバムのリードトラックとしての収録。
 オリジナルバージョンは、これぞ90年代ビーイング王道!的なキラキラとしたアレンジだったが、「キセキ」では長岡成貢の手によるアレンジで、より普遍的なサウンドとなってリメイクされた。個人的にこちらのアレンジのほうが好みである。
 余談になるが、ファン投票によって選曲された「バラベス1」でてっきり収録されると思いきや、落選してしまったのが意外だった記憶がある。2011年の武道館では原曲アレンジのキー下げでWアンコールのラストを飾った。

3.永遠の明日 <Ballad Version>
 作詞・作曲:池森秀一
 2008年発売、34枚目のシングルタイトル曲。
 本作に収録されたのは翌年発売の9枚目のオリジナルアルバム「DEEN NEXT STAGE」のラストに収録のバラードバージョン。
 DSゲーム「テイルズ オブ ハーツ」の主題歌としてヒットした近年の彼らの代表作。「心と心の繋がり」を描いた歌詞は近年の作品の中でも秀逸だと思う。完全に一からリメイクされた、というわけではなく、オリジナルバージョンからリズム隊をカットし、弦楽器を前面に押し出したアナザーバージョン的な装いとなっている。何気にこのバージョンのPVも存在している(シングル「Celebrate」初回盤DVDに収録)。

4.ノスタル 〜遠い約束〜 -Acoustic Version-
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路
 2009年発売「DEEN NEXT STAGE」の中のアルバム曲のアコースティックバージョンとして、35枚目のシングル「Celebrate」のカップリングに収録されている。
 ノリの良い曲が多い「DEEN NEXT STAGE」の中で、唯一と言っていい純バラード。「きっと僕は君を守るために生まれて来たのだろう」「君に必要とされることで強く生きてゆけるんだ」という力強くもロマンチックな歌詞が感動的である。原曲は壮大なバンドサウンドが響くアレンジであったが、こちらのバージョンはアコギとストリングス、そしてコーラスワークを目立たせるシンプルな編成になっている。
 ライブでは原曲バージョンが2009年と2011年の武道館公演でのみ披露されている、ある意味レアな曲。アコバージョンでの披露は現時点ではない…と思う。

5.このまま君だけを奪い去りたい
 作詞:上杉昇/作曲:織田哲郎
 言わずと知れた、DEENのデビューシングル。
 「バラベス1」にはオリジナルバージョンが収録されたが、本作には2005年に31枚目のシングルタイトル曲としてリリースされた、セルフカヴァーバージョンで収録(「DEEN The Best キセキ」の先行シングル)。
 サウンドプロデュースは岩田雅之。オリジナルの直立不動型バラード(?)から趣を変えて、ゆったりとしたAOR的アレンジが施され、2005年当時の池森秀一の声に良くマッチした曲調になった好アレンジ…なのだが、このバージョン、ライブでは「キセキ」発売直後のBreak10でしか披露されず、その後のライブツアーではほぼすべてオリジナルのアレンジで演奏されているのが不思議である。

6.夢で逢えたら featuring 原田知世
 作詞・作曲:大瀧詠一
 2002年のカヴァーアルバム「和音」収録曲。後に22枚目のシングルとしてカットされた(Single mix)。
 様々なアーティストが取り上げている名曲であるが、筆者の世代ではラッツ&スターのカヴァーが一番耳に馴染んでいる気がする。
 原田知世の清涼感のある歌声をフィーチャーした作品で、文字通りあくまで主役は彼女。池森は一歩下がって低音ボイスでハモったり、オクターブ下でユニゾンしたりと、普段とは違う役割でヴォーカリストとしての一面を見せているのが印象的。

7.Celebrate
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路
 2009年発売の35枚目のシングル。シングルバージョンはアルバム初収録。
 通常シングルでは初の「コンセプト・マキシシングル」。結婚をテーマにした曲で、そのものズバリ結婚式を迎えた主人公のハッピーな心境をストレートに描いた一曲。結婚相手への愛はもちろん、2コーラス目でお互いの両親への感謝の気持ちを綴る構成が良い。改めて読むとシンプルながら良い歌詞だと思う。
 TSUTAYAの「2009年結婚式で流したい曲ランキング」(だったかな?)の第1位を獲得したらしい。PVには石原さとみが出演している。

8.翼を風に乗せて 〜fly away〜
 作詞:池森秀一/作曲:鈴木寛之
 2003年発売、25枚目のシングルタイトル曲。
 桜の花の散る季節に「旅立ち」「出会いと別れ」をテーマにした曲。「Starting Over」「夢の蕾」「Brand New Wing」など、DEENの春のシングルには上記のコンセプトの曲が多い気がするが、この曲はまさにその先駆け(?)。本作に収録されたのは6枚目のオリジナルアルバム「UTOPIA」にて、ロサンゼルスのエンジニア、アル・シュミットが手がけたリミックスバージョン。オリジナルとは音の配置やバランスが異なる。個人的にはこちらのバージョンが好みなので、アルバムミックスでの収録は嬉しい限り。
 ちなみにこのシングルをもってDEENはビーイング(BERGレーベル)を離脱している。

9.Hello,my friend
 作詞・作曲:松任谷由実
 2010年発売、37枚目のシングル「coconuts feat.kokomo」のカップリング曲。アルバム初収録。
 ユーミンが1994年夏にリリースした楽曲のカヴァー。若干音をこもらせたエレキギターと、キラキラ感のないエレピのみの演奏をバックに池森が切々と歌うという、シンプルな編成。
 夏の終わりの寂寥感を思い起こさせる一曲である。個人的にはこの曲が主題歌だった月9ドラマ「君といた夏」を思い出す。あれは高校1年の夏だった…(遠い目)。

10.i...
 作詞:池森秀一/作曲:土田則行
 2002年発売の5枚目のオリジナルアルバム「pray」収録曲。
 「pray」はAOR期の第1作目のアルバムということで、今までの路線と毛色の違う曲が多く収録されていたが、この曲は割と従来のDEENのイメージに近い印象のバラードだと思う。歌詞は純愛そのものである。
 アルバム発表直後のツアーBreak6で披露された後はライブ演奏の機会がなく、印象の薄いポジションにあったこの曲であるが、昨年のライブベストアルバムのファン投票で並み居る楽曲の中から選曲され、Break15でも(一部会場で)本編のトリを務め、本作でも「星の雫」や「OCEAN」といった代表的AOR期バラードを差し置いて収録されるなど、近年になって再評価の動きがあるのかも。

11.少年 featurng Lynx
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路・田川伸治
 2002年発売のカヴァーアルバム「和音」収録曲。
 8枚目のシングル「LOVE FOREVER」の両A面曲として1995年に初出。翌年の2枚目のオリジナルアルバム「I wish」にも収録され、ラストを飾っている。
 「和音」収録にあたり、フルートアンサンブルカルテット「Lynx」の演奏をフィーチャーしたシンプルでゆったりとしたアレンジにリメイク。原曲よりキーもかなり下がり、より叙情性を増しつつ、マイナスイオンが発生しそうな癒し系的アレンジとなっている。
 「バラベス1」にはオリジナルバージョンが収録され、本作と同じような位置にラインナップされている(「1」では12曲目)。聴き比べてみるのも一興。

12.夢であるように
 作詞:池森秀一/作曲:DEEN
 2005年発売のセルフカヴァーアルバム「DEEN The Best キセキ」収録曲。
 11枚目のシングルタイトル曲として1998年にリリースされ、現在も根強い支持を持つ人気曲。ちなみに前曲「少年」同様、「バラベス1」にもオリジナルバージョンで収録されている。
 リメイクにあたってのサウンドプロデュースは島健。オリジナルで印象的なピアノのフレーズはそのままに、弦楽器隊を中心に上品な中に切なさを感じさせるアレンジに仕上げている。原曲の力強いアレンジとは対照的により深い悲しみを強調した作品。

13.瞳そらさないで
 作詞:坂井泉水/作曲:織田哲郎
 2005年発売のセルフカヴァーアルバム「DEEN The Best キセキ」収録曲。
 原曲は1994年発売の5枚目のシングルタイトル曲。長岡成貢によるサウンドプロデュースでトロピカルなアレンジにリメイクされている。
 …今作は「バラードベストアルバム」のはずなのだが、どう考えてもこの曲のアレンジはバラードではないような気がする(笑)。「バラベス1」では若干テンポを落としたR&B風のアレンジで収録されたが、今作でのこのバージョンは…一番コメントに困る曲である(苦笑)。代表曲を入れる、ということであれば「翼を広げて」のリメイクバージョンあたりを収録しても良かったと思うのだが…。

14.歌に願いを 〜SONG FOR YOU〜
 作詞:池森秀一/作曲:シオダマサユキ
 2004年発売の7枚目のオリジナルアルバム「ROAD CRUISIN'」のラストを飾ったアルバム曲。
 DEENの曲の中でもこの曲ほど「歌」を真正面に捉えたテーマの作品は見つからないと思う。池森秀一の決意表明のようなメッセージソングであり、名曲である。
 ライブでもBreak8のアンコールのラストで毎回演奏され、真っ赤な夕陽(をイメージした背景)に照らされてメンバー三人で演奏する姿が印象的であった。近年のリゾートライブではストリングス隊を従えて演奏されたらしい。

15.Blue eyes 〜Strings Style〜
 作詞:池森秀一/作曲:山根公路
 2010年発売のサマーアルバム「クロール」収録曲。
 原曲の初出は「バラベス1」のラスト。打ち込みソウル的なアレンジの曲で、「今後のDEENの音楽性を示している曲」と「1」発売当時に音楽雑誌のライナーノーツに書いてあったような記憶があるが、実際はR&B路線ではなくAOR路線に進んでいった。ということでDEENの数少ないR&B風味のバラードである。
 「クロール」にて生演奏アレンジでリメイク。ライブで演奏される形態は本作収録のものに近いせいか、本作のアレンジのほうが耳馴染みがある。
 「1」、「2」共に同曲のインストバージョンで始まり、終わりはフルバージョンで締め、という演出がなかなか心憎い。


 …以上、全15曲のレビュー、いかがだったでしょうか。
 ファン投票によるランキングを反映した「1」に対し、今作の選曲に関してはそういった要素が一切なく、あくまで送り手が選んだバラードベストアルバムといった感じで、正直「他に選曲されるべきバラードがあったんじゃないか?」と思わないこともないのですが、アルバム初収録のバージョンの曲もいくつかありますし、オリジナルアルバムの特典CDということを考えればまあいいかな、と思います(←偉そうだな)。
 しかし「瞳そらさないで」の収録は本当に不思議…(苦笑)。
 ちなみに、本作を同梱したオリジナルアルバム「Graduation」に関しましては、後日改めてレビューいたしますので、どうぞ宜しく。