KOMURODIJI2 2011年5月4日発売。小室哲哉による久々の個人名義となるソロアルバム。初回限定盤は13曲、通常盤は12曲を収録。ちなみに今回ご紹介するのは通常盤。

 1989年末に発売され、本ブログの「今週の1枚」でもご紹介した「Digitalian is eating breakfast」の第2弾という位置付けで、22年の時を経て発売された本作。しかしながら、小室哲哉のソロ・ヴォーカルアルバムとしての体裁をとっていた前作「Digitalian〜」とうって変わって、本作はフィーチャリングアーティストという形でAAAやKREVA、VERBALなどが客演してリードを取っている曲が大半。曲によってはラップなどで参加していますが、100%小室自身がヴォーカルを披露しているのは1曲(初回盤では2曲)ということで、「続編」と銘打つにはスタイルが違いすぎるかな、というのが正直な感想です。

 また、今作は上記のフィーチャリングアーティストの顔触れでも分かると思うのですが、曲はメロディーというよりもラップを前面に押し出した曲が多数収録されています。例えば、ZEEBRAを迎えた「奇跡」は、彼の個性の強さもあり、ZEEBRAのソロを小室がプロデュースしたかのような、主従関係が逆転しているような感じ。彼以外にも、聴いていて「小室哲哉のプロデュース作品のコンピレーション」を聴いているような錯覚に陥ることもあり。まあ、今は小室哲哉の立場が立場なこともあり、他アーティストの力も借りて…というスタンスで制作されたと思うのですが、ヴォーカルも含めて彼の完全主導のソロを期待していた身としていては肩透かしでした。

 …とは言うものの、では作品ひとつひとつを取り上げていけば、なかなかに良質な作品が並んでいると思います。歌モノとして「Go Crazy」や「L.W.R」「Ayrton」は良く出来ていると思いましたし、小室のインストパートと、m-floのVERBALのラップパートを一つの作品として見事に融合させた「Years Later」もお勧め。唯一の完全インスト「Extreme」はこれぞ小室!といった攻撃的速弾きサウンドが炸裂しています。そして小室ソロヴォーカル曲「Carry On」。彼の歌声、賛否両論あるとは思うのですが、筆者にとっては唯一無二の超個性だと思っております(笑)。

  「1」の続編という意味で本作のタイトルを冠したということには疑問が残る作品ではありましたが、とりあえず各作品の出来は良いものが多いし、とりあえずソロ名義でも作品が出せたということは素直に喜びたいと思います。ですが、次にもしソロアルバムを制作するのでしたら、是非とも今度は彼の個性をバリバリに前面に押し出した作品を作っていただきたいと思います。もちろん、ヴォーカル込みで。