
To Be Continuedは1991年にデビューの三人組ユニット。現在はミュージカルやドラマで俳優として活動している岡田浩暉がヴォーカルを務めていました。2000年に活動休止を宣言するまでに7枚のオリジナルアルバムをリリース。今回ご紹介する作品は1994年10月1日に発売された4作目となります。筆者はデビュー当時から熱心に彼らの音楽を聴いていた…わけではなく、「If you wish...」あたりで彼らを知ったのですが、その翌年に岡田浩暉が出演したドラマの挿入歌に「君だけを見ていた」が起用され大ヒット、続く「逃げたりしない」「うまく言えないけど」といったシングルもスマッシュヒットを飛ばし、満を持して上記3枚のシングルを収録した本作が発売され、友人からアルバムを借りてハマった、という記憶があります。
さて、彼らの音楽性を一言で説明すると…ズバリ「シンセポップ」という言葉がピッタリではないでしょうか。ユニットの中に二人キーボーディストがいて、彼らが作曲・編曲・サウンドプロデュースを行っている形態なのでまあ当然といえば当然なのですが、基本的にはリズム隊は打ち込みで、上モノをかなり重ねて音に厚みを出しているというこのシンセサウンド、今聴いてみて感じたのは、当時流行していたビーイング系やTKサウンドのような「ヒット性」というものからはやや乖離しているかな、と。メロディーラインは確かに王道をなぞったナンバーが多いのですが、そこまでサウンドに「コテコテの売れ線」のような感覚はなく、かと言って、当時ビーイング系とは対極にあった渋谷系のようなコアな音楽ファンに支持されるようなサウンドでもない…どちらかというと、大衆受けとマニア受けの中間的なポジションに立って、楽曲を世の中に送り出していたような気がします。
歌詞の面では、本作はラブソングが大半なのですが、自身の心境を街の風景などに重ね合わせてライトな恋愛感情を綴る「明日へのAccent」や、別れの情景を淡々と歌った「Love is just a...」、君への想いを語りながらも、どこかクールな「moon」など、恋愛模様をベースにしながらも、あまりベタベタしない平熱的な歌詞の世界が多いような気がします。リスナーの心にバシバシ突き刺さるヴォーカルではなく、熱くなりすぎず、どこか感情の抑制の取れた声で歌い上げる岡田浩暉の歌声も上記のような「何気ない」印象をより濃くしているのかもしれません。それが結構聴き心地が良いんですね。「涙 やめなよ」なんて下手すると説教っぽい歌なのですが(苦笑)、彼のヴォーカルで歌われるとサラリと聴けてしまうから不思議です。合コン(?)で出会った彼女を落としたい!という「Funny!?Serious?!」は例外的にコミカルに振り切っていますが、アルバムの中での良いアクセントになっているかな、と。
このように、サウンドもヴォーカルも歌詞も、狙いすぎずマニアックになりすぎず、抑制が取れているという点でどこか優等生的ではあるのですが、突出したアクがない代わりに、平均点の高い作品が多く、当たり外れが少ない堅実性を持っている、というのが彼らの最大の個性だったのかもしれません。
このアルバムがセールス的には彼らの中で最も成功した作品。その後、90年代後半になると個性の強いアーティスト達が次々と台頭し、世間的には彼らの優等生的なシンセポップは「90年代中盤の音」という印象のまま存在感が霞んでしまった、という感は否めないのですが、2000年代に入り音楽ジャンルが多様化し尽くした今、改めてTo Be Continuedのサウンドを聴いてみると、地味ながら良質なポップス作品を作り続けたアーティストだったんだな、と再認識した次第です。
ブックオフなどで250円コーナーなどに並んでいる^^;本作ではありますが、筆者にとっては今でも思い入れのある1枚です。
コメント