tokyoblue 2010年6月23日発売。風味堂のヴォーカル・渡和久のソロデビューアルバム。全9曲収録。初回限定盤には本作収録曲+αのライブ音源を収めたCDとの2枚組。

 風味堂のリリース活動、ライブ活動を一時休止してのソロアルバムでまず目を引いたのがその歌詞。このアルバム、特に前半に並んだ楽曲では、反骨精神を感じさせる「戦い続けるのさ」や、自分を奮い立たせるかのような「Hurry up!」、自嘲気味の心情吐露を見せる「絶望の彼方へ」など、風味堂とはまひと味違った内容が綴られています。後半になると王道のラブソングも聴けるのですが、全体的に自己内省的な歌詞が多い印象。ですが聴いているこちらが憂鬱にならない、というか、肩の力を抜いて聴けるようなあたりはポップス作品としての配慮、という感じでしょうか。

 一方、メロディーやアレンジに関しては、曲によってBlack Bottom Brass BandやBuffalo Daughterがプロデュースや演奏に参加してそれぞれのカラーが出てはいますが、基本的には風味堂の延長かな、といったところ。若干ピアノがライトタッチな曲が多いかな?とも思いますが、もともと風味堂はピアノ+ベース+ドラムスのスリーピースが絶対的な核という演奏形態というより、その上で味付けされる楽器で個性を表現していた気がするので、そういう意味では、ソロ活動でギターが入っても、派手なブラスセクションがあってもあまり変わらないような…。風味堂の作詞作曲はすべて渡氏自身が手掛けていることもあり、今回のアルバムでは歌詞と違ってメロディーはそれほど作り方に違いはないように感じました。

 今作、渡和久のソロワークとしても良盤だと思いますが、今後はソロと本体はまったく別の線を引いて活動する、ということではなく、今回のソロアルバムの要素を風味堂に持ち込んで、もともとの持ち味とうまく融合させれば、新しい風味堂の可能性が見えてくるかな、と思います。現在三者それぞれ武者修行中(?)だそうですが、いずれ活動再開した後の風味堂の動向にも注目していきたいですね。