documentary 2010年10月6日発売。秦基博の約2年ぶりとなる、通算3枚目のオリジナルアルバム。全13曲収録。

 前2作のアルバムでは複数のサウンドプロデューサーが参加して、アルバムに彩りを添えていましたが、今作はシングル「透明だった世界」以降のサウンドプロデュースを手掛ける久保田光太郎氏が全面的に参加し、それ以前にリリースされたシングル「朝が来る前に」「Halation」「アイ」以外の10曲はすべて彼のアレンジメントによるもの。「SEA」や「猿みたいにキスをする」「パレードパレード」といった、今までにない曲調(「猿〜」に至ってはゲストラッパーまで登場)の曲も多く、音楽性としては幅があるものの、サウンドプロデューサーを統一したことにより、前作で感じた各作品ごとのバラエティ感は薄れ、変わってサウンドに統一性が生まれていると思います。また、歌詞の世界観的には、「Documentary」「今日もきっと」など、身近な出来事をテーマにした曲が増えたような気がしました。

 アルバムを最初に一聴した時は、要所要所に配置されたシングルの色合いが強くて、相対的にアルバム曲に関しては「地味だな〜」というのが正直な感想だったのですが、何回か聴いて耳が楽曲に馴染んでくると、これらの新曲、派手さこそないものの、ゆっくりと心の中に染みてくるような良さがあると思いました。
 その最たる例が先行シングルとして一ヶ月前に切られたシングル「メトロ・フィルム」。この曲は正直シングルとしての華やかさを持っているとは言い難い曲なのですが、詞も含めて聴いているうちにだんだん好きになっていく曲と言いましょうか。この曲をはじめとして、スルメ的な味わいのある1枚です。

 ちなみに初回盤はアコースティックライブ「GREEN MIND 2010」のライブDVDが付属するパターンAと、 既発・新録を含めたカヴァー集が付いたCDが付属するパターンBの2種類。いわゆる複数商法で、売り方としてはちょっと残念ではありますが、アルバムに関しては今作も期待を裏切らない良盤でした。