furusato 2009年10月7日発売。ゆず通算9枚目のオリジナルアルバム。

 前作「WONDERFUL WORLD」では様々なプロデューサーを立てて「新しいゆずの可能性を広げた」アルバムだったと思うのですが、今作では蔦屋好位置氏を全面的に起用。終盤になると従来の寺岡呼人氏のプロデュース作品も顔を出しますが、基本的にはアルバムの色は蔦屋色(?)。複数プロデュース体制になってからの彼らのアルバムの中では、頭ひとつ抜けた統一感があるように感じました。

 収録曲は全14曲と、ゆずのオリジナルアルバムとしてはいつも通りの曲数ですが、そのうちの3曲は曲と曲との間を繋げるインスト(interlude)で、正味11曲。うち既にシングルタイトルとして発表されている曲が6曲ということで、実質的な新曲は5曲。なおかつ、シングル曲で「シシカバブー」「いちご」のような、従来アルバムに入っていそうな実験曲を既に出していたからか、この新曲5曲はどれも「ゆずの王道」といった趣きなのはバランスを考えてのことでしょうか。このバランス具合が絶妙かつ、トータル時間の短縮もあって、「アルバム1枚を聴かせる」ということに成功していると思います。「FURUSATO」から始まって、中盤の「Yesterday and Tomorrow」、そしてラストの「みらい」へと繋がる流れは感動的。

 アルバムの新曲に関しては、物語風の作品よりも、その場の状況を切り取った抽象的な内容の曲が多いように感じたのですが、その中で「レストラン」という曲は「30歳を過ぎたゆずの等身大の姿」がリアルに感じられる作風で特に印象に残りました。こういう身近な話題をテーマにした曲から「虹」(名曲!)のような壮大な曲まで歌いこなせるのが、今現在のゆずの魅力といったところでしょうか。

 2008〜2009年のゆずの精力的な活動の総括、それが結実していた1枚と言っていいと思います。シングル曲が多いこともあり、「昔はよく聴いていたけど今は…」というリスナーにもオススメです。