access 週イチペースで新旧問わずにお薦めCDを紹介する…というコンセプトでスタートした「今週の1枚」。「週イチどころか月イチでも紹介してないじゃね〜か!!」と自己ツッコミしつつ(すみません)、実に4ヶ月ぶりにこのカテゴリーを更新してみたいと思います。第46回目を迎えた今回ご紹介するアルバムはaccessの通算3枚目のオリジナルアルバム「DELICATE PLANET」。1994年5月25日発売。

 accessとは、浅倉大介と貴水博之によるデジタルロックユニット。この二人の出逢いが貴水が浅倉のセカンドソロアルバムにゲストヴォーカルで参加したのがきっかけ、というように、access結成の前からそれぞれソロアーティストとして活動していた(特に浅倉大介はTMNのサポートメンバーで名が知られていた)という経歴のある彼らは、デビューアルバム「FAST ACCESS」ですでに「作り込まれたデジタルビートに超ハイトーンのヴォーカルが乗る」=「シンクビート」というその音楽性を確立。半年後には早くもセカンドアルバム「ACCESS II」にて更に煌びやかに進化したデジタルサウンドでほとんど隙のない作品を発表。普通のアーティストがデビューから2〜3年かけて地道に足場を固める作業をたった1年足らずでこなしてしまった彼らのスピードの速さに私は驚くと共に、「こんなにハイペースな作品づくりで、今後の活動大丈夫なのかな…」と、余計な不安を覚えてしまったりしていました(苦笑)。

 しかし、そんないちリスナーの不安をよそに、その後の彼らの動きはこれまたアクティブ。バラードシングル「TRY AGAIN」のリリースを皮切りに、「夢を見たいから」では珍しくメジャーポップで前向きなメッセージソングを突き詰め、シングルタイトルでは初めて「失恋」をテーマにしたアッパーながらも切ない「MISTY HEARTBREAK」を意欲的に発表。
 そしてそれらのシングルをすべて収録したのがこのサードアルバム「DELICATE PLANET」。このアルバムから感じられるのは「新しいことへの意欲と挑戦」だと思います。

 浅倉大介は師匠格の小室哲哉と比較すると、正直言って楽曲のバリエーションが少ない(小室の引き出しが多すぎるというのもありますが^^;)点は否めないのですが、今作では硬質なピアノとストリングスをメインに据えたありそうでなかったバラード「STAY MY LOVE」、「夢を見たいから」をさらに進化させたかのような底抜けに明るい「FIND NEW WAY」、どこかサウンドに狂気すら感じさせる「STONED MERGE」、グニャっとしたサウンドに聞き取れないセリフを仕込ませた「PINK JUNKTION」など、完成度が高いながらもどこか画一的だったファースト、セカンドの作品と比べると、王道サウンドの中に自分の新しい引き出しを模索するかのような実験的スパイスを散りばめた曲が多い印象。

 そして作詞を手がける貴水博之も、機械が突然感情に目覚めてしまったオープニングナンバー「SILVER HEART」をはじめ、おそらく不倫を描いたであろう背徳感が切ない「SWEET SILENCE」、今回の作品中で最も聴こえにくい淡々としたヴォーカルに耳を傾けた思い出がある(笑)メッセージソング「BEAT PLANET」など、前述のシングル曲と併せて様々なテーマをモチーフにした作品世界を構築しています。

 個人的に思い入れがあるのは「DECADE&XXX」。この作品がリリースされた1994年はTMNが「終了」した年。TMとは切っても切れない関係である彼ら(特に浅倉)が、その先輩に向けて贈ったと思われる曲なのですが、TMファンならその歌詞の内容と、小室サウンドを再構成したかのようなアレンジに思わず胸を熱くしてしまう曲に仕上がっています。デビュー15周年のベストアルバムにも収録されたぐらい、彼らにとって思い入れのある楽曲なのでしょう。…まあ数年後TMはまさかの復活を果たすわけですが…^^;

 総括すると、今までのデジタル路線を継承しつつも、楽曲によって様々な顔を見せ始めた彼らのとどまることのない進化が見えたアルバム、「DELICATE PLANET」はそんな作品です。ヒットチャートでも初めての首位を獲得し、ある意味「第2の到達点」を迎えた作品と呼べるのではないでしょうか。個人的に感じる彼らの勢いの絶頂もこの辺り、と思っております。

 …この作品をリリース後、コンセプトシングル三部作を発表(この年でシングル6枚も出してるのか!)、アリーナツアーを成功させた後でaccessは長い長い沈黙期に突入。その後は各自のソロワークを経て2001年に活動再開し、現在ではそれぞれのソロ活動と平行しながら地道に活動中。
 1993〜1994年あたりの「全速力で駆け抜けた」頃と比べるとだいぶ落ち着いた感がありますが、各作品の完成度は相変わらず高く、ファンを裏切らない楽曲製作を続けていると思います。これからもマイペースで活動していって欲しいですね。