
収録内容は、1993年のデビューシングル「君とピアノと」から、1995年のシングル「80's」までの7タイトルのシングルをカップリングも含めて完全に収録した14曲に加え、1996年に制作され未発表となっていた「君を抱きしめてた」を収録した全15曲。いわゆるテイチク時代に彼が残した音源集なのですが、権利の移動があったのか、発売元はソニーからとなっています。
この時期の東野純直の作品を年代順に1枚通して聴いてみると、代表曲「君は僕の勇気」や「summer-est〜一番眩しい夏〜」のような、「爽やか青年」というポップなイメージそのままの楽曲が多い初期から、本来彼が標榜していたというAOR的なアプローチの「愛し方も分からずに」、壮大なラブバラード「確かに愛したとき」、そしてロック的なサウンドに取り組みはじめた「80's」と、だんだんと音楽性が変遷する様を感じることができます。
また、カップリング曲のほとんどはアルバムに未収録であり、中古8cmシングル市場がないに等しい現在では、それらの曲を一気に揃えられる(しかも2,000円で)意義のあるアルバムだと思います。特に「君の翼は何色ですか」「Lovers' Moon」「二人のクロノグラフ」といった曲を何でアルバムに入れなかったんだと当時不満を抱いていた筆者としてはここで陽の目を見ることができたのは嬉しい限り(笑)。
未発表曲「君を抱きしめてた」は、テイチク在籍時代と東芝EMI移籍時代の間に制作された作品のようですが、アレンジは前者、ハスキーな歌い方は後者に近いという実験的な楽曲。この後デジタルロック→生音ピアノロックに音楽性を変えていく彼の過渡期的な楽曲といっていいでしょう。
当時の東野純直ファンはもちろんのこと、KANや槇原敬之などの90年代前半〜中盤辺りのいわゆる「J-POP草創期」の男性ソロのポップサウンドが好きという方にも一度聴いていただきたいアルバムです。
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