beloved まだ完全に週一復活という感じにはならないかもしれませんが、とりあえず今月より再開しようと思います「今週の1枚」。再開1発目を飾るのは、GLAYのメジャー3rdアルバム「BELOVED」。

 このアルバムが発売された1996年は、まさにGLAYの飛躍の年。1月にリリースされたシングル「グロリアス」でブレイクの波に乗った彼らは、翌月のオリジナルアルバム「BEAT out!」でオリコン1位に輝き、さらに夏のシングル「BELOVED」がドラマの主題歌に抜擢され人気の地盤を固め、そして11月18日に発売されたこのアルバムは初のミリオンセールスを記録する大ヒットとなり、一気に人気ロックバンドとしての階段を駆け上がっていた1年だった印象が強いです。
 前作から約9ヶ月という、比較的短いスパン(前作はもともと95年末発売の予定が諸事情で延期になったそうですが)でのアルバムリリースだったため、筆者は当時「え?もう次のアルバム出すの?」などと思った記憶がありましたが、そんな制作期間の短さに関わらず、このアルバム「BELOVED」はブレイク途上の勢いと、メロディーの良さを誇る、GLAYのアルバム作品の中でも一、二を争う完成度の高さだと思っております。

 実体験を基に(?)全国ツアーバンド宣言ともいえる「GROOVY TOUR」で幕を開ける本作。この1枚の最大の特徴は、後年ではおなじみになった「GLAYっぽさ」が全開だという点でしょうか。ミディアムバラードの名曲「BELOVED」は勿論のこと、スピード感があってライブで映えそうな「Lovers change fighters,cool」「SHUTTER SPEEDSのテーマ」「HIT THE WORLD CHART!」、彼らの代名詞でもある「優しさロック」を体現しているかのような「カナリヤ」「a Boy〜ずっと忘れない〜」、流れるようなメロディーラインが美しい「春を愛する人」、歌詞を深く噛み締めてしまいそうな「都忘れ」、ノリの良いビートロック「Fairy Story」「RHAPSODY」、そして王道バラード「カーテンコール」などなど・・・どこから聴いても良い意味で「これぞまさにGLAY!」という、魅力ある作品が満載になっています。

 これらの曲調が定番となり、後年になると彼らの楽曲には画一感が出てきてしまった、という点は否めないと思うのですが、それだけ今作に収録されている曲(いわゆる「GLAYブランド」のプロダクションモデル的な楽曲?)の完成度が高いということなのでしょう。また、彼らが奏でるギターメインのバンドサウンドに適度に装飾を施し、ポップロックとしての親和性を持たせた、プロデューサー佐久間正英氏の手腕も忘れてはいけない点だと思います。

 そして、GLAYがこれだけの人気を博した・・・という秘訣は、楽曲の良さもあるのでしょうが、それ以外にいわゆる「ヴィジュアル系」のカテゴリーでありながら、敷居の高く独特の世界観を持っているという印象をリスナーに持たせず、あくまで「現実の続きに我々は存在している」という、日常観、というか、フツーっぽさ?(と書くとなんか俗っぽいですが)を前面に出したことも人気の要因の一つなのではないかと思います。
 前作「BEAT out!」では、まだジャケ写などは良くも悪くも「汎ヴィジュアル的」な雰囲気が残ってはいたのですが、今作ではポートレイトに納まったピンボケ風の彼らの写真や、歌詞カードの写真を見る限りでは、ナチュラルに近いというか、「隣近所でロックやってるお兄さん達(あくまでイメージ)」という親しみやすさが、彼らの作品を手にしようとするリスナー達を後押しした、と考えるのは穿ちすぎでしょうかね。

 GLAYの勢いはこの後も止まらず、翌1997年にはシングル「HOWEVER」がミリオンヒット。そしてベストアルバム「REVIEW」が400万枚を突破する空前の大ヒットとなり、坂を登り切ったというか、大御所的な雰囲気を漂わせるまでに成長したわけですが、右肩上がりの勢いの真っ只中の時期にリリースされたこの「BELOVED」こそ、当時の彼らの勢いを実感できる模範的なアルバムとして、発売から12年(もうそんなに経ったのか・・・)を経過した今でも十分に聴ける作品だと思います。
 最後に、このアルバムが発売された時期、当時高校生だった筆者が某大学のオープンキャンパスに行ったところ、その日彼らが学園祭に出演することになっていて、このアルバムのポスターがでかでかと貼られていたことが妙に印象に残っているという、個人的な思い出をここに記しておきます(笑)。