natsunoowarinisecond 10月を間近に控え、急に涼しくなった今日この頃。今週は、そんな季節にピッタリの1枚をご紹介。タイトルは「夏の終わりに供Lookin' for the eighth color of the rainbow〜」。T-BOLANのコンセプトミニアルバムの第2弾として、夏の終わりよりも一足早い(?)1994年8月6日にリリースされた作品です。

 90年代中盤に音楽シーンを賑わせたビーイング系アーティストによるいわゆる「ビーイングブーム」。T-BOLANはそのブームよりも一足早く、シングル「離したくはない」を1991年末頃からロングヒットさせ、B'zと共に、90年代初頭のビーイング系ロックバンドの代表格とも言える存在だったと思います。今、改めて彼らのディスコグラフィを眺めてみると、半年ペースでオリジナルフルアルバムをリリースしたり、その間にミニアルバムをリリースしたり、アルバム発売と同時に新曲のシングルを発売していたり・・・と、尋常じゃないリリースペースの跡に驚かされます^^;。
 今作は、そんな90年代前半から中盤を駆け抜けた彼らが、従来の「曲が出来たらすぐレコーディングしてリリース」という活動形態や、ロックバンド的な曲作り、アレンジからは少し距離を置いて、「夏の終わりに」というひとつのテーマに基づいて、製作されたコンセプトアルバムの第2弾。ちなみに第1弾「夏の終わりに〜Acoustic Version〜」は1992年にリリースされています。

 収録曲は全6曲。うち、過去に発表された楽曲のリアレンジが4曲、そして新曲が2曲。選曲も前述のテーマをもとに絞り込まれたそうです。いずれもアコースティックアレンジで、彼らの特徴とも言うべきエレキギターの音は一切取り入れられていません。
 リアレンジの曲からご紹介していくと、まずは1曲目の「悲しみが痛いよ」。デビューシングルとしてリリースされ、王道ビーイングサウンドだった原曲よりも侘びさび(?)を感じる、左右に振り分けられたアコースティックギターの音が印象的な1曲。ヴォーカル・森友嵐士の表現力もあり、オリジナルよりもぐっと心に響く歌い方になっている気がします(歌詞は川島だりあですが、この人は良い詞を書くんだよなぁ・・・)。続く「泥だらけのエピローグ」では、「HEART OF STONE」に収録されているアップテンポのオリジナルから一転、BPMをかなり落としてバラード調に。原曲の焦燥感を煽るような感じも好きですが、ブルースハープの演奏や、噛み締めるような雰囲気が出ているこちらのバージョンもなかなかのもの。他、「すれ違いの純情」「シャイなJealousy」も、「泥だらけ〜」ほどの印象の違いはないものの、アコースティックギターを中心に据え、ピアノやハモンドオルガンが効果的に響いており、地味ながら新たな魅力を感じるアレンジになっています。

 そして2曲の新曲のうち、アルバムのサブタイトル曲になった「Lookin' for the eighth color of the rainbow〜8番目の虹の色をさがしに〜」。この曲はドラムスの他に随所にパーカッシブな音も取り入れられ、内省的な歌詞世界とは裏腹に聴き心地の良いアレンジで、聴くときはヘッドフォンを推奨(?)。小さいライブハウスで、じっくりとこの音と歌詞に酔いしれながらアンプラグドで聴きたい楽曲。
 もう1曲の新曲の「マリア」は、このアルバムの翌月にテンポを上げ、ロックアレンジでレコーディングされたバージョンをシングルでリリースしてヒットしたこともあり、ファン以外でも結構有名な曲だと思いますが、本作に収録されている「Acoustic version」のほうは、ハモンドオルガンの荘厳な調べから始まり、徐々に他の楽器が重なっていく、壮大なアコースティックバラード。
 「泥だらけ〜」のところでも書きましたが、本バージョンも、シングルバージョンもそれぞれの魅力があるのは、良い曲はどんなアレンジを施しても良い曲になる・・・というよりも、これらの作品が持つ流麗なメロディーラインが、どちらのアレンジにもぴったりとはまった、ということが最大の要因ではないでしょうか。ちなみに本作のバージョンで、森友氏がセピア調の画面の中、セットの階段に腰掛けて歌っているPVも製作されていて、UHF局でこのPVが流れ、筆者は久々の動くT-BOLANの映像に感動したものでした。当時彼らはなかなかちゃんとしたPVを作ってくれなかったもので(苦笑)。

 今でこそT-BOLANといえば最大ヒットの「Bye For Now」や「離したくはない」、「HEART OF GOLD」「LOVE」といった、ロッカバラードが得意なバンド、という認識がされていると言えなくもないと思うのですが、個人的には「じれったい愛」や「刹那さを消せやしない」といった、ロックバンド的な楽曲のイメージで彼らを捉えていたので、このミニアルバムシリーズでは、彼らの違った一面を見ることができて新鮮だったことを思い出します。まさかこの時は、この作品が結果的に、メンバーが製作に携わったアルバムとしては最後(この後、解散するまでにコンピレーションやリミックスアルバムなどが出ましたが・・・)のリリースになるとは思わなかったのですが・・・^^;。
 ともあれ、タイトル通り、晩夏の夕暮れあたりに部屋でひとりじっくりと聴きたい作品として、今のような季節になるとふと思い出して、CDプレイヤーにセットしたくなる小粋なミニアルバム。余談ですが彼らの他のアルバムとは一線を画した、コラージュ写真によるジャケットもアート性を感じます。ファンならずとも、アコースティックサウンド好きにはお薦めの1枚ですね。