tmgffm 来月6月28日に、CSチャンネルの日テレプラスにて、2012〜2015年にかけて行われたTM NETWORKのライブ全5作品を一挙に放送するとのこと。なかなか楽しみな一日になりそうです。さて、TM35周年記念ベスト「Gift from Fanks」全曲レビューも今回で遂にラスト。最終回は「M」盤のDISC 3の全11曲をご紹介。



TM NETWORK「Gift from Fanks M」全曲レビュー・後編
 ※編曲は特記のない場合は全曲:小室哲哉。

DISC 3

1.RHYTHM RED BEAT BLACK
 作詞:坂元裕二/作曲:小室哲哉
 1990年10月25日発売、7thアルバム「RHYTHM RED」収録曲。投票順位26位。
 TMN名義では初のオリジナルアルバムの表題を冠したタイトルだが、アルバムを貫くハードロックの枠組みの中にダンスビートを注入したアルバム内では異色の楽曲。サビ直前のフレーズ「It's called "RED"」「It's called "BLACK"」の交互の掛け合いがライブでは熱い。アルバム発売後にハウス食品「O'ZACK」のCMソングとなり、同年12月21日に23rdシングルとしてカットされた。
 派生作品として、翌年2月1日には完全リアレンジ・全英語詞の「Version 2.0」が24thシングルとしてリリース。なお同シングルのカップリングにはメジャーデビュー直前の電気GROOVEが原曲をズタズタに(笑)サンプリングした「Version 300000000000」が収められた。また1993年8月の「CLASSIX 1」には新規リミックス(house sample foods mix)が収録。

2.Jean Was Lonely
 作詞:坂元裕二/作曲:小室哲哉
 1991年9月5日発売、8thアルバム「EXPO」収録曲。投票順位60位。
 TM作品では珍しいラテンサウンドをハウスサウンドに融合させた軽快なダンスナンバー。前奏や間奏が長く、ライブで踊ることを前提にして制作された作品のような印象。実際に宇都宮隆がバックダンサーを従えて熱く踊る模様がライブ映像作品「EXPO ARENA FINAL」に収められている。
 2004年の20周年ベスト「Welcome to the FANKS!!」ではファン投票13位となかなかの高順位だった。

3.あの夏を忘れない
 作詞:坂元裕二/作曲:小室哲哉
 8thアルバム「EXPO」収録曲。投票順位50位。
 詞・曲共にTM NETWORK時代にはあまり作られなかったタイプの歌謡テイストなポップソング。特に「EXPO」では「Crazy For You」「月の河/I Hate Folk」という実験ソング二連発の後に配置されているのでこの曲でひと安心できる効果がある(笑)。宇都宮が気に入っている曲らしく、1994年6月の「TMN RED」でもダンスセレクションの1曲として選曲された。
 1993年の「CLASSIX 1」ではバックトラックをバラード調にガラリと変えた「motion picture mix」で収録。なお、発売当時に月9の時間帯を使ったフジテレビのレースクィーンもののスペシャルドラマ「ピットに賭ける恋!」(西田ひかる主演)の主題歌に起用されていた。劇中で「EXPO」の収録曲がBGMで流れるドラマだったが、内容は全く覚えていない(苦笑)。

4.WILD HEAVEN
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 1991年11月15日発売、26thシングル。投票順位28位。
 当初は「EXPO」収録予定曲だったが見送りとなり、しばらくは「TOUR TMN EXPO」で披露される未発表の新曲扱いだったが、商品化が決定しアルバムから約2ヶ月後にシングルリリースされた。シングル化に際してアレンジが改められて再レコーディングされたらしいが、音楽性は「EXPO」の延長線上にあるハウス+ポップテイストのキャッチーな楽曲。ドラマ「ララバイ刑事'91」のオープニングテーマ。
 1993年の「CLASSIX 2」では、原曲が終了後にテクノ系のアウトロが延々と続く「extended hard core mix」としてリミックスされた。

5.ANOTHER MEETING
 作詞:木根尚登/作曲:宇都宮隆
 1994年6月22日発売、ベストアルバム「TMN BLUE」収録曲。投票順位69位。
 同年4月のラストシングル「Nights of The Knife」のカップリング曲として制作されていたが間に合わず、2ヶ月後の3枚同時発売ベストアルバムのバラードセレクションアルバムに未発表曲として収録。既にひと月前の東京ドーム2daysライブでTMNの活動は「終了」しており、アルバムの帯の煽り文句の通りの「TMNラスト・オリジナル・レコーディング」作品。
 作詞が木根、作曲が宇都宮という組み合わせはTM史上では唯一。バラードベストに収録されるだけあって曲調はフォーク寄りのアコギ主体+エレピ少々といったシンプルなアレンジ。「再会」「巡り合い」をテーマにした木根の作詞もTMがファンに遺してくれた最後の置き土産、といった感じで心に沁みる。しばらくは「BLUE」のみの収録だったが、活動再開前の1999年1月のSONY企画ベスト「STAR BOX TMN」に選曲経験がある。

6.I am
 作詞・作曲:小室哲哉
 2012年4月25日発売、38thシングル。投票順位6位。シングルバージョンはアルバム初収録。
 1999年にTM NETWORKとして活動再開後は、レコード会社を転々としながら数年に一度まとまったリリース、ライブ活動を行っていたのだが、25周年直前の2008年11月に小室が詐欺容疑で逮捕されTMとしての活動は白紙に。2012年3月の東日本大震災復興支援チャリティーライブで活動が再開され、本作はレコード会社を現所属のavex traxに移籍しての第1弾シングルである。
 20周年辺りから逮捕前までの(小室の)作風と比べるとかなりポジティブに人生を捉えた内容で、本人の心境の変化が良く分かる明るく力強いナンバー。サビが簡易な英詞の復唱で構成され、ライブでは会場が一体となって盛り上がれるようになっており、ライブで聴くとかなり印象度が上がる。2015年3月まで続いたTM30周年プロジェクトの旗手たる楽曲。

7.Green days 2013
 作詞・作曲:小室哲哉
 2013年7月20日発売、ライブ会場限定(39th)シングル。投票順位52位。アルバム初収録。
 元々は20周年ツアー「DOUBLE-DECADE TOUR」ファイナルの武道館公演の際に新曲としてステージで初披露。ライブDVDにはその模様が収録されたがスタジオ音源は一向に発売されず、9年後のさいたまスーパーアリーナ公演「FINAL MISSION -START investigation-」開催時に会場限定販売で初スタジオ音源として商品化。同公演でも久々にこの曲が演奏されていた。
 2004年当時の小室の心境(=公私共にお疲れモード)と思われる歌詞が赤裸々に綴られているバラードなのだが、同時代の作品の「PRESENCE」等に比べるとまだ前向きな内容ではある。なお本作は会場販売のみで配信も行われておらず、ここ数年ネットオークションなどで高価で取引されていたのだが、このベストに収録されたことによりようやく一般層にも聴けるようになったのが喜ばしい。

8.LOUD
 作詞・作曲:小室哲哉
 2014年4月22日発売、40thシングル。投票順位63位。シングルバージョンはアルバム初収録。
 デビュー30周年の翌日にセルフリプロダクションアルバム「DRESS2」と同時発売。歌詞は二年前の「I am」よりも更にポジティブさを増し、特にサビは「BE TOGETHER」を彷彿とさせる軽快なリズムパターンで進行するなど、メモリアルイヤーの入り口を迎えてアグレッシブかつ気合の入った決意表明的な作品。

9.Alive
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 2014年10月29日発売、12thアルバム「QUIT30」収録曲。投票順位37位。
 前作「SPEEDWAY」から7年振りとなるオリジナルアルバムのリード曲。当時すっかり市民権を得ていたクールなEDMサウンドに、地球や世界、人の心を俯瞰して描いた、ブレイク期(1987年前後)の雰囲気を醸し出している小室みつ子の歌詞がマッチ。個人的にもこういった路線の曲をTMに長らく求めていたのでこの曲は久々の大当たりだった。なお本アルバムの2枚組CD盤のDisc.2のラストにサビ以外のメロディーをシンセで代替した長尺リミックス(TK Mix)が早くも収められた。

10.Get Wild 2015 -HUGE DATA-
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 2015年3月21日発売、ライブ会場限定(41st)シングル。投票順位55位。
 TM30周年を締めくくる横浜アリーナ2day公演「30th FINAL」にて会場限定販売。翌月には配信でもリリースされ、2017年4月にリリースされた「Get Wild」のスタジオ音源・ライブ音源・第三者のカバー音源をCD4枚組でほぼ網羅した企画アルバム「GET WILD SONG MAFIA」にも収録された。
 前年の「DRESS2」の「〜2014」を元に、メロディーパート以外のイントロや間奏部分を大幅に変更した11分超のエクステンデッド仕様で、インスト組曲の中に「Get Wild」が組み込まれたかのような構成。現在のところTM名義での最新のCD音源でもある。

11.Get Wild '89(7inch Version)
 作詞:小室みつ子/作曲:小室哲哉
 本アルバムのボーナストラック。初商品化となる19thシングルのエディットバージョン。
 Pete Hammondによってリプロダクトされた同曲を、オリジナルバージョンのサイズに忠実に再構成。長いイントロやアウトロがばっさりオミットされ、原曲の尺で聴く「〜'89」といった趣。恐らくラジオオンエア等のプロモーション用に作られたものと思われ、「T」盤の未発表曲「グリニッジの光を離れて」と比較すると希少価値では「グリニッジ〜」の圧勝であるが、ラストで出てくる原曲では聞こえなかったエレキギターのフレーズなど、細かいところの違いを楽しむマニア向けの一品。


 以上、足掛け2ヶ月、全6回にわたっての「Gift from Fanks」全72曲レビュー、これにて終了です。2年前のDEENのCD5枚組ベストの曲数を上回る新記録を更新いたしました(笑)。
 さて、今回のベストアルバム、レコード会社のキャッチコピーは「新世代・次世代に向け、ファンが厳選した究極のベストアルバム」となっていますが、CD3枚組×2セットの超重量級のボリュームを、TMを知らない次の世代が気軽に手に取るとは正直思えません(入門編としては非公認ながら1994年までのオールタイム選曲の1枚モノ「BEST TRACKS -A message to the next generation-」がなかなか良いと思います)。本作はここまで熱心に彼らの音楽を聴き続けたコアなファンによるコアなファンのための35周年記念ベストと呼ぶのが相応しいかと思います。また、SONY移籍後の各レーベル(Rojam、R&C、avex)からの楽曲も収録されているというオールタイムベストは「GET WILD SONG MAFIA」を除けば本作が初ということで、濫発されまくるTMのベストアルバムの数々の中でもアドバンテージを持った作品になったのではないでしょうか。

 SONYでは既発表済の映像作品を期間限定で無料配信する企画が立ち上がり、「TM NETWORK THE MOVIE 1984〜」の本編のうち約30分が8月17日まで視聴できます。一方、35周年フィナーレを飾る12時間ライブ映像配信は現在も延期のまま。こちらが配信されてこそ35周年は完結、と思っていますので(?)気長に待つことにします。
 かなりの長文レビューになりましたが、本ベストアルバムを聴きながらの副読書的に閲覧していただければ幸いです。