hirose19922018 2019年1月23日発売、「コンプリートベストアルバム」と銘打たれた、広瀬香美の通算7度目となるベストアルバム。新曲「歌いたいわ」から始まりこれまでリリースされた全CDシングルを時系列順に収録したディスク2枚+DJ和によるノンストップミックスを収録したディスクのCD3枚組。初回限定盤はLPサイズジャケット、本作リリース直後に開催された全国ツアーでの握手会チケット、プレイパスでMV22曲がDL可能の特典有のスペシャル仕様。本レビューは通常盤のレビューとなります。

 2000年代後半あたりから2〜3年程度の間隔で「新曲入りのベストアルバム」をリリースする傾向のある彼女。本作は2年前のセルフカバーアルバムを挟んで約4年ぶりのベストですが、これまでのベストは重複はある程度避けられないもののアルペンCMベスト、アルペンを含めたタイアップベスト、アッパーな曲を集めたベストなどコンセプトがそれぞれに存在していましたが、今回は2011年にリリースした全シングル集「SINGLE COLLECTION」とコンセプトがほぼ同じ(本作のDISC1の2〜15曲目は「SINGLE〜」のDISC1の1〜14曲目と同一、DISC2に至っては1〜12曲目までが完全に同一)。かろうじてDISC1の新曲や、DISC2のラスト3曲(配信シングルなどからの選曲)で差別化を図ってはいますがまったく真新しさの感じられない構成。ただし、「DEAR...again」は(Ver.2.05)での収録、表記はありませんが「愛はバラード」もバラードべスト収録の際の歌い直しバージョンで収録されており、「SINGLE〜」と選曲は同じですが完成度の高いバージョンを採用している辺りはポイント。さしずめマイナーチェンジを加えた最新シングルコレクション+αといったところでしょうか。

 さて、改めてシングルを時系列順に並べている本ベストのCD2枚の雑感ですが、DISC1は「ロマンスの神様」「ゲレンデがとけるほど恋したい」など、当時の時代にマッチしたヒット曲の数々、DISC2は実験、バラード、スカなど、シングルということを意識せずに本人の興味や意志に(多分)沿ったフリーダムな曲の数々、と結果的に2枚のディスクの性格がはっきり分かれています。特に編曲に本間昭光を迎え、「promise」「ストロボ」等の名アレンジが曲を輝かせるDISC1後半(+DISC2冒頭の「I Wish」)の時期が最高、というのは今も昔も変わらない筆者の主観である一方、DISC2の「恋のベスト10」「BEGIN〜いくつもの冬を越えて〜」というパッと聴きインパクトの薄い曲達も耳に馴染んでくると好きな曲になっていったので、王道に浸れるDISC1、実験曲を楽しむDISC2と、彼女の音楽的変遷を堪能することができると思います。

 DISC3はDJ和による「"雪" Set List Non-Stop Mix」。その名の通り約1時間にわたり、全国ツアー「THE WINTER SHOW "雪"」でのセットリスト全19曲をスタジオ音源をノンストップで編集。てっきりセルフカバーベストの時の新録メドレーのようなものか…と思っていたのですが、今回はほぼ既存の音源を流用し、強引にノンストップで繋げた、というある意味斬新な1枚。DJ和についてはこの記事を読むと本作での仕事ぶりは納得なのですが、コンサートにすると2時間を超える楽曲を短縮バージョンの半分の時間で一気聴きできる、広瀬香美オンリーのドライブ用MixCD、という以外に特にこれといった特徴はなく、ベスト付属のボーナスディスク的な存在かな、といった感じでした。