d-pro 2016年5月18日発売、Being/GIZAの新規プロジェクト「d-project」始動第1弾作品としてリリースされた、ZARDとのコラボレーションアルバム。全14曲収録。本作のオフィシャルページはこちら。

 「d-project」とは、長戸大幸プロデューサーのもと、GIZAの作家陣や若手クリエイター達が集結して楽曲重視の質の高い作品を送り出そうと始まったプロジェクト、とのこと。本作に関してはZARDの代表曲をオリジナル曲の制作やライブに関わった徳永暁人、大賀好修、岡本仁志らに加え、若手アレンジャー、ミュージシャンの手によってリアレンジ。これに坂井泉水のオリジナル音源のボーカルを加え、「ZARD」の作品として成り立たせた新規録音アルバム、と呼んでもいいでしょう。
 アレンジャーだけでも13名が各曲に参加、コーラスとして起用されたボーカリストも男女問わずに複数クレジットされていますが、中でも目を引くのが「Guest Vocal」とクレジットされた大黒摩季。彼女といえばビーイング離脱時に色々と揉め事があったらしく、その後の非公式アルバムや某ライナーノーツでは散々暴露記事を晒され続けてきましたが、昨年あたりからまたビーイングとは交流が復活し、直近のニュースではビーイング復帰が決定。そんな流れでなのか本作にも14曲中11曲にボーカルとして参加。坂井の主線に寄り添うようにハモったり、時に単独でメインフレーズを歌い上げたりと、積極的に本作に携わっています。そのボーカルはセールス全盛期のシャキシャキ感(?)から少しウェット気味な声に変わっていますが、「ああ、大黒摩季の声」といった感じで、長年の確執を経てビーイング作品に十数年ぶりに登場した彼女のボーカルを聴いて感慨に浸ることしばし。

 作品全体のニューアレンジの方向性としては、坂井泉水逝去後の一連の「ZARDの王道」をベーシックにしたリアレンジとは異なり、四つ打ちビートをメインとした公式ページの文章通り「ダンスロック」寄りのEDMに接近したサウンドで統一。選曲もZARDのヒット曲からノリの良い曲をピックアップしており、特に中盤の「雨に濡れて」「愛が見えない」「こんなにそばに居るのに」辺りは原曲のスピード感を別方向で現代風にパワーアップさせた感がある良アレンジ。他には曲中でラップが登場する「愛は暗闇の中で」、冒頭のピアノ独唱が新鮮な「Don't you see!」など適度なバリエーションもありつつ、かつての「時間の翼」の時の10周年記念リミックスのような長尺アレンジをしてしまった曲もなく、あくまで「ボーカルを重視しメインに据えた歌モノ」の体裁になっていたのにはひと安心(?)。ラストの「かけがえのないもの」は1コーラスが完全にインストでボーカルが2コーラス目から入る、という変則構成になっていますが、エンドロール的なアプローチということで、これはこれでアリかな、とも。

 プロデューサーであり中心人物であった坂井泉水が全くノータッチにも関わらず「ZARD」名義で発表された新作ということでは賛否を呼びそうな本作。筆者としては今年デビュー25周年を迎えての記念プロジェクトのひとつ、としての制作陣からの「トリビュートアルバム」として捉えて素直に楽しむことができました。