tmclip 1984年4月のデビューから年月は流れ、今月21日にデビュー30周年を迎えるTM NETWORK。TMのファンでもある管理人のボルテージもこのアニバーサリーイヤーに向けて高まっております(笑)。今回のエントリーでは「CD Review Extra」の派生版、「DVD Review Extra」として、デビュー20周年時の2004年12月22日にリリースされた、ソニー在籍時代(1984〜1994+1999)に彼らが残した公式MUSIC VIDEOを収めたDVD「All the Clips」の全20曲を1曲ずつレビューいたします。「続きを読む」からご閲覧ください。


(2020年9月12日:「All the Clips 1984-1999 Refinement」リリースに伴い一部文章加筆)
デビュー30周年記念・TM NETWORK「All the Clips」全曲レビュー
 ※各タイトル名のスペル等はDVDのメニューに沿って表記。


1.金曜日のライオン
 1984年4月21日発売、デビューシングル。音源はイントロの長いアルバムバージョンを使用。
 記念すべき初PVだが、ワニの被りものをかぶった少女と小室哲哉(三つ編み仕様)が手に手を取って走る小芝居っぽいシーンが登場したり、宇都宮隆がオレンジ色の衣装を着て白いスタジオらしき場所で小室と妙なステップを踏んだりと、ある意味インパクト大の作品。84年はこういうPVが流行った時代なのだろうか。そうは思いたくないが…(苦笑)。なお木根尚登はギターではなくキーボード演奏での出演。

2.1974
 1984年7月21日発売、2ndシングル。
 小室自身がコンテを書いたという意欲作…なのだが、学生に扮した小室&宇都宮、ドクターに扮した木根、赤いオープンカーでフランケンシュタイン達クリーチャー一同とのドライブ、「SCHOOL CONCERT」として学園祭ノリで演奏しているシーンなど、「金曜日のライオン」に負けず劣らず珍妙な作品。 

3.アクシデント
 1985年5月22日発売、3rdシングル。
 歌詞は現実路線だが、PVは夜中の森の中で演奏するファンタジックな作品。白いボールを持ったパジャマ姿の少年少女達がわらわら増えていくのは何かかしましいが、前二作のようなブッ飛んだ作りからようやくまともな作りになったと思う。小室も髪を短くしてパブリックイメージ的な格好になった。曲中で光るレーザー光線はなぜだか時代を実感させる。なおロケ地は「相模湖ピクニックランド」とのこと。

4.Dragon The Festival
 1985年7月21日発売、4thシングル。使用音源は「Zoo Mix」を短めにエディットしたもの。
 近未来的なスタジオの中で歌う宇都宮をはじめとしたメンバーの姿がアップで撮影されており、SFをモチーフにした詞を尊重している…と思いきや、なぜか間奏では木根が妙なステップを踏み出すのを契機(?)に、メンバー三人が農村に繰り出し、農家の人達と談笑したり、木根は耕運機で登場したり、ファンらしき女性群が次々と映し出されたり…と、SF路線はどこへやらの怪PVへと変化。終盤では宇都宮が歌いながら火を吹く(笑)。なおTMの初映像作品「VISION FESTIVAL」に収録の同曲とは使用カットに若干の違いがある。
 曲中で前作「アクシデント」と同じ森の中で同じ衣装で歌うシーンが何度か挿入される。同日同場所で他の曲とまとめて撮影したらしい。

5.Your Song
 1985年11月1日発売、5thシングル。ミニアルバム「TWINKLE NIGHT」に収録の音源が使用されている。
 サポートメンバーを引き連れてのスタジオでの疑似ライブ的な映像。小室が着用している青いロングジャケットが何だか目を引く。所々で見受けられる宇都宮のマイクスタンドアクションもなかなか様になっており、ようやくツッコミ無しで観られる時代になってきた(苦笑)。なお、画面隅の見切れなどで、当時サポートギタリストとして加入した現B'zの松本孝弘の若かりし姿がチラチラ映るので要注目。

6.Come On Let's Dance
 1986年4月21日発売、6thシングル。3rdアルバム「GORILLA」に収録されたバージョンを基本にイントロは「This is the FANKS DYNA-MIX」部分を使用しているようだ。
 ディスコでのロケを敢行。宇都宮が完全にメインの作品で、フロアで歌ったり、夜の路上で女性と抱き合ったりと、当時の彼のイメージに沿った撮影がなされている。小室と木根は短いカットでサブリミナル的に登場するぐらいだが、こちらも結構インパクトがある。TMのシングル史上初めての「カッコいい」PV。ロケ地は海外のように見えるが、名古屋のディスコや横浜中華街で撮影されたとのこと。

7.All-Right All-Night
 1986年11月21日発売、8thシングル。
 この年の8月によみうりランドEASTで行われた単発野外ライブ「FANKS “FANTASY”DYNA-MIX」のライブ映像のダイジェストを上手くCD音源と合わせて継ぎ合わせた構成。FANKS路線真っ只中ということで、ダイジェストだけでもダイナミックなライブステージを実感できる内容になっていて、見どころ満載。

8.Self Control
 1987年2月1日発売、9thシングル。
 夜中、廃工場らしい場所や地下室などで管理された子供達に自我を促す為に宇都宮が歌うというストーリー性を持ったPV。今まで無表情だった子供達が最後のサビで一転、笑顔になり、それに合わせて画面も明るくなるのが鮮やかでカタルシスがある。ラストで宇都宮と木根が解放された子供と戯れているところで、小室はひとり画面の端で、傍らに立つ少女に話しかけられているという、美味しい結末を迎える(笑)。
 本素材を用いたショートフィルムが映像作品「Self Control and the Scenes from "the Shooting"」として同年に発表されている。

9.Get Wild
 1987年4月8日発売、10thシングル。
 ご存知TMの代名詞的な楽曲。香港でロケーションが行われ、メンバー三人が街中を練り歩いたり、談笑したり、カッコつけたり(?)している映像が延々と続く。イントロと間奏で当時のライブの映像がちらっと挿入されるが、その他の香港シーンでは演奏はもとより歌っているシーンもないのであまり面白いPVとは言い難い。ラストで屋形船の上で佇んでいる三人が妙に滑稽に映るのは何故だろう(苦笑)。その他、全国ライブツアー中に野球をしていて怪我をした宇都宮が手に包帯を巻いているのが時々映るのが結構気になる。

10.Kiss You
 1987年10月1日発売、11thシングル。
 地球を大写しにしてその中に映像枠を作り、そこに世界情勢を映し出したり、月(?)からメンバーが地球を俯瞰していたり、地球では宇都宮が月をバックに(当時の)マイケル・ジャクソンっぽいメイクでダンスを踊ったり…と、「地球」を大々的にフィーチャーした作品。この年の初夏に行われた初の日本武道館公演のひとコマも冒頭に登場する。近未来を意識したテレビ(モニター?)の形が今となってはちょっと古さを感じさせるが、今観ても結構楽しめる完成度の高いPVである。

11.Come On Everybody
 1988年11月17日発売、15thシングル。
 PVの初出は当時ソニーがスポンサーだった深夜のPV番組「eZ」からとのこと。廃墟のような空間で小室(画面手前)、宇都宮(画面中央)、木根(画面奥)がそれぞれ演奏するPV。なんと完全に1カメラ固定で最後まで通すというある意味斬新な(?)作品。とにかく木根が不憫な位置にいるのだが、間奏では積極的に前に出てきてギターを弾いている(フリの)シーンがあるのがまだ救いか(笑)。

12.Just One Victory
 1989年3月21日発売、16thシングル。正式には「Remix Version」と表記が付く。
 TM史上最長のロングランツアー「CAROL」真っ最中にシングルカットされた曲ということで、メタリックな衣装を身に着けてライブセットをバックに演奏している。小さくてあまり見えないがサポートメンバー(松本孝弘、阿部薫)も映っている。曲中、ツアーでのミュージカルパートが所々に挿入され、ライブ未見のファンは喜んだことだと思う。実際に「CAROL」のミュージカル部分が映像化されたのはそれから15年後の2004年、「CAROL the LIVE」まで待たされた。

13.Dive Into Your Body
 1989年7月21日発売、20thシングル。
 プールの水面を反射する光や水泡、泳ぐ女性のアップが画面を横切ったりする背景で、宇都宮が終始踊り続ける作品。他のメンバーは一切登場しない。ダンスシーンよりも中盤でプールの中で水着の女性達に囲まれてニヤニヤしているスーツ姿の彼が印象的(笑)。夏らしいPVであり、今観ても時代を感じさせないところはある。

14.Time To Count Down
 1990年9月28日発売、22ndシングル。音源は「RHYTHM RED」のアルバムバージョンを使用。
 名義を「TMN」にリニューアルしての第一弾。ハードロック調の楽曲に合わせてか、小室や木根も髪を伸ばし、銀色の衣装に身を包んでのライブシューティング的な映像。サポートメンバーも出演しているが、直後の「RHYTHM RED TMN TOUR」から新たに加わったギタリスト・葛城哲哉の存在感がメンバーに次いで大きく、「ロックバンド」らしさをアピールする映像になっている。
 なお、本作以外にも、メンバーが黒い服でスタジオで演奏する(木根はなぜか直立不同)PVが存在するが、フルコーラスではないらしい。

15.Rhythm Red Beat Black
 1990年12月21日発売、23rdシングル。
 タイトルに沿ってか、赤と黒の衣装を着たダンサーを率いる宇都宮(黒が基調の衣装)が開催中のツアーでも披露された前衛的なダンスを全編に渡って繰り広げるのだが、TMのPVの中で彼がここまで完璧な振付けで踊るのは今回が唯一かも。小室には冒頭でスタジオらしき場所、曲中で赤いライトに照らされて演奏するシーンがある一方、木根は間奏で5秒ほど登場するのみ。彼の扱いはPVではやたらと酷いのはなぜだ(苦笑)。

16.Love Train
 1991年5月22日発売、25thシングル。
 最大セールスシングル。小室を中心に当時のライブのサポートメンバーである浅倉大介なども映っているモノクロのレコーディングシーン、宇都宮が赤や黄色などの照明をバックに歌うシーン、そしてなぜか木根はサングラスではなく眼鏡着用で東京駅付近を歩くシーンで構成。宇都宮が歌うシーンは何パターンかあるが、当時終了したばかりの「RHYTHM RED」ツアーで着用したライブ衣装で歌っている箇所もある。また、篠原涼子をはじめとして東京パフォーマンスドール(当時篠原も在籍)がTMNのフラッグを持って歩くカットも挿入されている。

17.Nights Of The Knife
 1994年4月21日発売、28thシングル。
 TMN「終了」シングルということで、ライブ映像を中心に最新の「EXPO」ツアーから時代を遡って彼らの軌跡を辿る、まさにラストシングルならではのPV。最新の映像はラストに映る三人のアーティスト写真のみで、他は過去の素材をパッチワークした構成だが、映像のチョイスが非常に楽曲とマッチしている。長らく商品化されず、作品発表から10年目にして本作に収録。筆者は当時のローカル音楽PV番組をVHSで録画し、擦り切れるほど観ていたので、この曲のDVD化はTM20周年プロジェクトで最も嬉しい出来事だった。

18.Get Wild Decade Run
 1999年7月22日発売、29thシングル。
 5年振りのTM活動再開曲であり、代表曲「Get Wild」のリメイクなのだが、曲同様PVもかなりマニアックな領域。研究施設らしき場所で科学者に扮したメンバー三人(+α)が、人間らしき生物(裸の男女)を生み出して実験しているシーンは正直不気味である。音源自体もシングル盤ではなく、長い間奏とサビの連呼を繰り返すショートバージョン。情報量詰め込み過剰な映像表現が、90年代末を象徴していると言えなくもない。

19.10 Years After
 1999年7月28日発売、30thシングル。
 「〜Decade Run」とは対照的に、屋外のロケーションでカラフルなイメージの作品。開放的な雰囲気で宇都宮が歌い、木根がギターを弾き、小室はなぜかうなだれている(?)。1サビ+転調後のラストサビというショートPV。ハワイで撮影されたらしい。

20.Happiness×3 Loneliness×3
 1999年12月22日発売、31stシングル。
 PVはオリジナル音源ではなく、発売同時期にリリースされた同曲の海外アーティストとのコンピレーション企画の音源をさらに繋ぎ合わせてリミックスしたもの。黒地をバックに、TM三人に加え、シーラ・E(Vo&Per)、フリオ・イグレシアスJr(Vo)、ウォン・リー・フォン(Vo&ヴァイオリン)とのコラボレーションが展開されるのが熱い。ソニー時代最後にして良いPVを遺してくれたと思う


 以上、全20作の「オフィシャルPV」のレビューでした。
 約15年分の映像作品、さすがに初期の作品は今観るとかなりキツいものがあります(苦笑)。「Your Song」あたりから普通に観られるようになっていき、「Come On Let's Dance」「Self Control」「Kiss You」などの傑出した作品も中盤で登場。90年代に入ると普遍的な内容が増えていきますが、個人的には思い出補正として「Nights Of The Knife」、秀逸なコラボPV「Happiness×3 Loneliness×3」がお薦めですね。
 さて、TM30周年企画は公式でも情報が公開されており、4月22日にニューシングルとセルフリプロダクトアルバムをリリースし、ライブツアーもスタートするようです。他にも出版物の発売や、TMN時代のオリジナルアルバムのリマスター盤発売など、今回は25周年の時とは違って(…)ファンを楽しませてくれそうで嬉しいです。来年の4月までのアニバーサリーイヤー、他にどんな活動があるのか期待しながら、初の「DVD Review Extra」を締めさせていただきます。